- ホーム
- 研究の概要
本研究プロジェクトは、営利ならびに非営利組織における情報倫理問題、すなわちICT(情報通信技術)の利用がもたらす社会・倫理問題への事前的・事後的対応のための組織ならびに政府・自治体に対する政策(ポリシー:具体的対応策・方法)提言を研究目的とする。これは情報倫理という情報科学・工学と哲学・倫理学の学際研究に、さらに組織の観点を導入したものであり、その研究分野は商学、経営学、情報科学・工学、社会学、政治学、心理学、法学、哲学、倫理学等に関わる学際的なものである。多岐にわたる情報倫理問題のうち、本プロジェクトでは5つの先端的かつ社会的重要性が高い問題に焦点を当て、これらを研究するためのサブプロジェクト(SP)を設置する。
各SPの研究課題はそれぞれ独特の問題特性を持つ一方で、プライバシーやICTプロフェッショナリズムなどとの関わりにおいて相互に関連しあっており、SP間での研究成果の共有を通じてより深い研究の進展・促進を図る。また、ICTのグローバル性を考慮して、いずれのSPにおいても国内外での調査ならびに海外研究協力者との共同研究を軸に国際比較研究を行う。
本研究プロジェクトは、営利ならびに非営利組織における情報倫理問題を研究対象とし、議論を単なる空理空論に終わらせることなく、それに対する具体的な政策提言にまで射程を広げた実践的な内容を有する。本プロジェクトに設置されている5つのサブプロジェクト(SP)はいずれも先端的かつ社会的重要性が高い情報倫理問題に取り組むものであり、これらに関連する十分な研究業績を積み重ねてきた、また研究組織に示すように政策提言経験も豊富なメンバーによって遂行される。
- SP 1:
- ICTを用いた組織による直接的・間接的監視と専門職倫理
組織が個人情報をリアルタイムに収集々蓄積々利用々共有していることと、FacebookやTwitterのようなソシアルメディアが個人ネットユーザの自己ならびに他者の個人情報の開示行動を促進し、ソシアルメディアに公開された個人情報を組織が収集・利用している現状を踏まえ、こうした新しい情報環境におけるプライバシー保護と組織で働くICT専門家の専門職倫理のあり方に対する具体的提言を行う。
- SP 2:
- センシティブ情報の組織間での通信・共有と文化
医療情報や戸籍情報のようなセンシティブ情報の共有システムが構築々利用されている現状を分析し、グローバルに有効かつローカル文化において受容可能な個人情報保護、とりわけセンシティブ情報を扱う情報システム構築・運用のあり方を解明する
- SP 3:
- FLOSS(Free/Libre and Open Source Software)を利用した
組織情報システムの構築・運用
現在、多くの組織で行われているFLOSSを利用した情報システム構築が、システム品質に対する組織責任を曖昧にしうる状況を明らかにし、情報システムの構築と運用に関する組織の社会責任とガバナンスのあり方について提言を行う。
- SP 4:
- セキュリティシステムの実効性確保のための組織的対応
技術的なセキュリティシステムの導入のみでは安全・安心な組織情報管理が実現できないことを明らかにし、セキュリティ確保に向けた人的・組織的対応について検討する。
- SP 5:
- セキュリティシステムの実効性確保のための組織的対応
「男性的技術」と言われるICTの導入が組織において引き起こしうるジェンダー問題に注目し、その解決に向けた具体的政策提案を行う。
ICT依存社会ともいえる現代社会において、また社会的影響力を持つICTの開発と利用が主として組織によって行われる中で、本研究プロジェクトが推進する組織情報倫理学研究は、ICTの開発と利用がもたらしうる負の社会的影響を適切に制御し、今日の社会における物質的・精神的豊かさの実現、人間的価値々人権の尊重、安全・安心の確保に資する研究成果をあげることが期待される。しかも、営利・非営利組織に焦点を当てた情報倫理研究は世界的に見てもユニークであり、本プロジェクトが当該分野での世界の研究をリードすることとなる。
研究成果の公表は、世界に向けた情報発信を実現すべく、英文論文の査読付学術誌への投稿ならびに国際会議での報告を中心に行われ、また研究成果の国内の研究者・実務家・学生・大学院生への還元のために国内学会誌への和文論文投稿、国内学会での研究報告を行い、海外研究協力者を交えたシンポジウム・公開講座を開催する。さらに、本プロジェクトの最終年度には組織情報倫理学に関する研究書を和文・英文双方で出版する。