刊行物

現代中国のリベラリズム思潮 1920年代から2015年まで

石井知章編著 藤原書店 A5上製 576ページ ISBN-13: 9784865780451
刊行日: 2015/10 定価:5,500円 +税

本書は、中国国内外で活躍している主な現代中国のリベラリストを対象として、その主要な論文を紹介し、かつ日本国内の現代中国社会・思想研究者による関連テーマについての論考を交えつつ、中国における現代思想としてのリベラリズムの全体像を描くことを主な目的とする。なぜなら、ここで扱われている現代中国リベラリズムをめぐる言説空間が、中国国内ではほぼ完全に一元化された独裁的権力のコントロール下にあることはいうまでもないにせよ、これまで中国のそれとの相似形にあったリベラル・デモクラシーの日本ですら、既述のようなリベラリスト群像の多面性はまったくといっていいほど紹介されてこなかったからである。それゆえに、われわれはこのことを、同じような言説空間を共有している日中間の共同作業として行いたい。そして、この知的作業が、ますます混迷を深めつつある日中の言説空間での相互のねじれ現象を、少しでも緩和、是正する方向に働くことを願わずにはいられない。(石井知章「序論」より)

日本ではこれまで一部しか紹介されてこなかった現代中国のリベラリズムの多面的な全体像を、第一線で活躍する日中の気鋭の研究者15人により初めて捉えた画期的な論集!
徐友漁/栄剣/張博樹/劉擎/許紀霖/秦暉/張千帆/周保松/及川淳子/梶谷懐/王前/水羽信男/緒形康/福本勝清 本田親史/中村達雄/李妍淑/藤井嘉章/劉春暉/徐行

目次

序論 現代中国におけるリベラリズムと「普遍的近代」 石井知章
第Ⅰ部 [中国におけるポスト文革時代のリベラリズム]
 〈インタビュー〉
・文革から天安門事件の時代を生きて 徐友漁
・九〇年代の社会思潮 徐友漁
第Ⅱ部 [現代中国におけるリベラリズムの言説空間]
・中国リベラリズムの「第三の波」 栄 剣(本田親史訳)
・中国新左派批判――汪暉を例にして 張博樹(中村達雄訳)
・中国的文脈におけるリベラリズム――潜在力と苦境 劉 擎(李妍淑訳)
・最近十年間の中国における歴史主義的思潮 許紀霖(藤井嘉章・王前監訳)
・「前近代」についての研究の現代的意味 秦 暉(劉春暉訳)
・中国における憲政への経路とその限界 張千帆(徐行訳)
・リベラル左派の理念 周保松(本田親史・中村達雄・石井知章訳)
第Ⅲ部 [現代日本における中国リベラリズムの言説空間]
・劉暁波と中国のリベラリズム 及川淳子
・「帝国論」の系譜と中国の台頭――「旧帝国」と「国民帝国」のあいだ 梶谷懐
・西洋思想と現代中国のリベラリズム――過酷な時代を生きた思想家顧準を中心に 王前
・一九三〇~四〇年代中国のリベラリズム――愛国と民主のはざまで 水羽信男
・「秘教的な儒教」への道――現代中国における儒教言説の展開 緒形 康
・現代中国における封建論とアジア的生産様式 福本勝清
・K・A・ウィットフォーゲルと近代――「封建的」なものと「アジア的」なものとの間 石井知章
〈跋〉「公的自由」と人間的幸福――『現代中国のリベラリズム思潮』に寄せて 子安宣邦
[附]中国現代史年表/人名・事項索引
編著者
石井知章(いしい・ともあき)
1960年生。明治大学商学部教授。政治学博士。『文化大革命の遺制と闘う――徐友漁と中国のリベラリズム』(共著)社会評論社2013年、『中国革命のパラダイム転換――K・A・ウィットフォーゲルの「アジア的復古」をめぐり』社会評論社2012年、『現代中国政治と労働社会――労働者集団と民主化のゆくえ』御茶の水書房2010年など。