応用化学科の学び
いま化学を学ぶことの意味
化学は、あらゆる生命現象の理解から、宇宙を構成する物質の謎の解明に至るまで、とても広範囲な領域に関わる学問です。また、物質変換を効率的に実現する触媒、身近に使われているプラスチックや医薬品、発光装置、太陽電池や液晶などの電子デバイスを支える半導体材料は化学の知識と技術なくしては製造できません。そして、これからの化学技術は、SDGsのいくつかの目的達成を支える基幹として、我々の住む地球環境と調和する存在へとますます発展させる必要があります。いま、化学を学ぶ意義はますます大きくなっています。
カリキュラムのねらい
応用化学科では、化学に関する知識と技術の修得を通じて多角的かつ論理的な思考力・ 実行力・問題解決力を兼ね備えた「フラスコからコンピューターまで操れる研究者・技術者」 を育成することを教育の目標としています。応用化学科のカリキュラムでは、化学の基礎となる「無機化学」、「有機化学」および「物理化学」 を三つの主要な専門科目としています。加えて、「分析化学」、「生物化学」および「高分子化学」、「化学工学」を応用分野の専門科目として設置しています。これらの基礎と応用にわたる講義科目ならびに基礎化学実験、化学情報実験および応用化学実験が密接に連携した三位一体のカリキュラムにより、広範な化学の知識と技術に関する体系的な学習することができます。さらに、卒業研究とゼミナールでは,習得した知識と技術を生かして研究に携わることにより実践力を養い、専門分野に関する最先端の技術 や知識はもとより、プレゼンテーションスキルも修得することができます。本学科のカリキュラムを通して化学の知識、技術、研究力を修得し、将来の化学産業の一翼を担いうる研究者・ 技術者として成長することを期待しています。
カリキュラムの特色
1
実験科目に重点をおいた構成で、「基礎化学実験」「応用化学実験」の履修により、基本から応用まで幅広い化学実験を習得できるよう工夫。
2
「化学情報実験」では、コンピュータを使ったシミュレーション実験による、目に見えない物質の構造解析や危険を伴う実験の評価方法を学ぶ。
3
「応用化学概論 1・2」「最先端化学」では、卒業生の組織である「明治応用化学会」との連携をはかり、最新の化学から将来の就職活動および大学院進学の糧となるような内容までオムニバス形式で講義を展開。
カリキュラム体系図
学科主要科目
カリキュラムは変更になる場合があります。
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応用化学実験・化学情報実験の概要
PICK UP | 授業レポート
多彩な化学実験で先端化学を学ぶ
応用化学実験1~4
化学情報実験1~4・A~D応用化学科専任教員
応用化学科では、座学中心の講義科目に加えて、「化学情報実験(コンピュータ内での実験)」と「応用化学実験(実験室での実験)」のふたつの実験科目に重点を置いた、Trinity Curriculum(三位一体の教育体系)を実践しています。多彩な講義で化学の基礎から最先端までを学び、「化学情報実験」では分子の構造安定性や化学反応性、超高圧・超高温環境での実験などの計算シミュレーション解析を体験し、「応用化学実験」では化学分野のさまざまな実験を通して基本的な実験操作を学ぶとともに、より専門的な実験技術を養います。講義・化学情報実験・応用化学実験を有機的に結びつけて学ぶことで、実験を安全に行う技術と問題解決に必要な思考力を身につけることができます。
応用化学実験の様子
化学情報実験の様子
講義動画
年次別授業概要・学生コメント
興味を深掘りする研究で社会に求められる人材へ
2020年理工学部応用化学科卒業
理工学研究科応用化学専攻
博士前期課程1年照井 深月山梨県立 都留高等学校卒業
応用化学科の学科専門科目
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- 応用化学実験1
- 応用化学実験2
- 応用化学実験3
- 応用化学実験4
- 化学情報実験1
- 化学情報実験2
- 化学情報実験3
- 化学情報実験4
- 化学情報実験A
- 化学情報実験B
- 化学情報実験C
- 化学情報実験D
- 応用化学実習1
- 応用化学実習2
- 応用化学概論1
- 応用化学概論2
- 無機化学
- 錯体化学1
- 無機錯体化学1
- 無機錯体化学2
- 固体化学1
- 無機材料化学1
- 無機材料化学2
- 有機化学1
- 有機化学2
- 有機反応化学2
- 物理有機化学
- 有機合成化学
- 有機工業化学1
- 有機工業化学2
- 高分子化学1
- 高分子化学2
- 物理化学
- 反応物理化学
- 統計熱力学
- 界面物理化学
- 基礎分析化学
- 分析化学
- 電気化学
- 機器分析学1
- 機器分析学2
- 基礎生物化学
- 基礎化学工学
- 化学工学1
- 化学工学2
- 反応工学
- 粒子化学工学
- 機器安全学
- 無機工業化学
- 天然物工業化学
- 化学プロセスシステム工学
応用化学実験1
応用化学実験1では,物質の化学的性質についての基礎的知識と実験の基本操作を学ぶ。実験は,「分析化学」・「無機化学」・「有機化学」・「物理化学」・「化学工学」の分野すべての実験を通して学べるようにカリキュラムが編成されている。実験の並びは授業と密接に関連しているので,教科書に記述されている理論をより実際的に学び,結果を考察することで,より深く,より具体的に学ぶ。
分析化学実験1
課題1.重量分析1(結晶硫酸銅中の結晶水の定量)
課題2.重量分析2(硫酸銅一水和物中の硫酸イオンの定量)
物理化学実験1
課題1.凝固点降下(溶質の分子量と溶媒の融解エンタルピー測定)
課題2.単蒸留による液体二成分混合物の分離
有機合成化学実験1
課題1.ハロゲン化アルキルに対する求核置換反応
課題2.アニリンの合成
無機化学実験
課題1a. 無機陽イオン定性分析―第族陽イオンの定性分析 ―
課題1b. 無機陽イオン定性分析―第族陽イオンの定性分析 ―
課題2a. 無機陽イオン定性分析―第族陽イオンの定性分析 ―
課題2b. 無機陽イオン定性分析―第族陽イオンの定性分析 ―
課題3. 無機陽イオン定性分析―未知試料の定性分析 ―
応用化学実験2
「応用化学実験2」では,化学研究に必要となる物質の化学的性質についての基礎的知識と実験の基本操作を学ぶ。実験は物理化学,有機化学,分析化学,機器実験の四分野にわたる。実験の並びは授業と密接に関連しているので,教科書に記述されている理論をより実際的に学び,結果を考察する事で,より深く,より具体的に学ぶ。「応用化学実験1」に引き続き,「応用化学実験2」ではさらに進んだ実験技術を学習し,より複雑な化学反応を体験する。この実験は応用化学科の最も重要な科目の一つであり,必修科目である。実験はクラスを4グループに分けて各分野の実験を順次行う。
応用化学実験3
応用化学実験3では,2年で学んだ応用化学実験1・2に引き続き,さらに進んだ実験技術を学び,より複雑な化学反応の知識やより高度で実践的な実験操作を習得することが目的となる。化学研究に必要となる実験手順を学ぶことができる,卒業研究前の最後の学生実験となるため,それぞれの単位操作を各自で適切かつ安全に実施できるように指導する。内容は,「無機工業化学実験」「有機工業化学実験」「化学工学実験」「機器実験」の分野である。実験テーマは授業と密接に関連しており,講義で学んだ理論をより実際的に学び,結果を考察することで,より深く,より具体的に化学を理解して欲しい。
応用化学実験4
応用化学実験4では,応用化学実験3に引き続き,さらに進んだ実験技術を学び,より複雑な化学反応の知識やより高度で実践的な実験操作を習得することが目的となる。化学研究に必要となる実験手順を学ぶことができる,卒業研究前の最後の学生実験となるため,それぞれの単位操作を各自で適切かつ安全に実施できるように指導する。内容は,「無機工業化学実験」「有機工業化学実験」「化学工学実験」「機器実験」の4分野である。実験テーマは授業と密接に関連しており,講義で学んだ理論をより実際的に学び,結果を考察することで,より深く,より具体的に化学を理解して欲しい。
化学情報実験1
化学情報実験1,2,3,4では,1人1台のパソコンを使い,物理化学,化学工学,有機化学,分析化学,無機化学の5分野の全てについて化学・応用化学における計算機利用技術の基礎の修得を目的としている。化学情報実験1では,計算分子構造化学実験1を行う。計算分子構造化学実験1では,ソフトウエアに PC Spartan pro を使って比較的簡単な分子の分子モデリングや分子軌道計算を行い,分子構造や電子状態について学ぶ。この PC Spartan pro はこの実験以降の化学情報実験2,3,4でも使用する。
化学情報実験2
化学情報実験2の実験内容は,「マクマリー有機化学(上)」を用いて2年春学期までに学んだ有機化学を題材にして,主に有機分子の物性や反応性に関する計算実験を行います。計算ソフトの PC Spartan(スパルタン)を使って分子の構造を推測したり,分子軌道計算を行ってエネルギーや反応性との関連を学びます。講義では教科書や黒板で2次元でしか表現できなかった化学構造を,スパルタンを用いて3次元で観察しながら有機化学を復習することを目的とします。実験時間内は,細かい理論よりも観察を重視します。
化学情報実験3
化学情報実験3では,計算化学反応実験を行う。具体的には,PC Spartan Pro を使って反応中間体と遷移状態の計算法を習得し,反応の動的過程に関する理解をエネルギーの観点から深めることを目標としています。
化学情報実験4
化学情報実験4では,ここまでの化学情報実験1~3の PC Spartan pro を使った分子軌道計算に続けて,計算分子構造化学実験3を行なう。PC Spartan pro を使って無機錯体化合物の分子モデリングや分子軌道計算を行ない,分子構造,電子状態,分子軌道の性質や,そのエネルギー等について学ぶ。ここまでに学んだ無機錯体化学1理論や応用化学実験3の実験結果を,この計算実験と結び付けて,理論―計算―事実の繋がりを意識して理解できるようになることを目的とする。
化学情報実験A
複雑な実験データから現象を理解するためには,データの解析や現象のモデル化が必要になる。特に,不確実性を伴う現象を対象とする場合には,統計的手法を用いた解析が必須である。化学情報実験 A では,Excel を用いたデータ解析とモデル解析に必要な基本的な計算法を学習する。
化学情報実験B
分子動力学シミュレーションは,計算機中の仮想空間において原子を配置して物質を創り,物質中の原子の集団がどういう動きをするかを計算する手法である。原子・分子レベルのミクロな視点から物質を観察することにより,マクロなスケールでは捉えることが難しい様々な現象が見えてくる。化学情報実験 B では,Materials Explorer というソフトウェアを用いて分子動力学シミュレーションの基礎を学習する。
化学情報実験C
プログラミング言語 Python を利用して,化学工学計算や実験結果・化学データを対象にしたデータ解析を行う。化学工学計算およびデータ解析の理論を学習するだけでなく,学習した内容を自分の手でプログラミングして実行することで,深い理解および実践力の向上を目指す。プログラミングの基礎から学び,さらにサンプルプログラムを事前に準備しておくため,プログラミングについて心配する必要はない。化学工学計算を行い,実験結果・化学データを解析し,さらに解析結果を解釈することで,有用な知見を自分の力で得られるようになることを到達目標とする。
化学情報実験D
運転検討を行う工学である。本実験では,分離操作の代表例である蒸留を取り上げて,数値計算の理解とともに,その設計に必要な計算を実習する。ツールには数値計算ソフト EQUATRANG と,モデルをシステム化できる VMEQUATRAN を使用する。この実習により,蒸留という分離操作と数値計算手法を理解し,物質収支やモデリングの考え方,ツールとしてのパッケージソフトの利用方法を修得する。応用化学実習1
物理量の扱い方を講義し,演習をおこなう。簡単な無機化合物の命名法を講義し,演習をおこなう。簡単な有機化合物の命名法を講義し,演習をおこなう。
応用化学実習2
応用化学実験及び化学情報実験の準備として,第1回,第2回,第5回,第11回~第13回は演習中心に授業を実施する。基礎無機化学,基礎有機化学,基礎物理化学,基礎分析化学などに関連した基礎的かつ入門的な内容について,毎回 a モジュール(前半50分)で講義を行い,b モジュール(後半50分)の演習で理解を深める。第3回と第4回は,「化学情報実験基礎」として,第6回~第11回は,「応用化学実験基礎」として実験科目の基礎となる内容について,実験をふまえて解説を行うことで,実験科目に必要な基礎力を習得することを目標とする。応用化学実験1, 2,化学情報実験1, 2に関連した基礎的かつ入門的な内容である。高校での化学には含まれていない内容を含め,応用化学科専門科目につながる授業である。
応用化学概論1
化学工業は20世紀に急速な進歩を遂げ,今や社会のあらゆる場面,すなわち衣,食,住,医療,環境,エネルギー等の人間生活の基盤を支えることに深い係わりを持つに至った。また近年は,基礎化学と科学技術の発展により種々の新素材が生み出され,高齢化社会,情報化社会,共生社会といわれる世の中を支えている。このような背景を考え,これからの化学の基礎を学ぶ学生が,実際の化学工業や社会との係わりを知ることを目的とした講義である。応用化学科では,4年生で卒業研究として研究室に配属される。将来,夢を持って学生生活を過ごしてもらうために,応用化学科の専任教員が研究に関連する話題や最新の技術をわかりやすく解説する。
応用化学概論2
明治大学理工学部応用化学科では学部3年生の講義科目として,「応用化学概論2」を実施している。応用化学科を卒業した(あるいは応用化学専攻を修了した)学生は,広い意味で化学工業という分野で活躍することになろう。実際,化学に立脚した産業は21世紀を迎えた現在も大きく発展している。例えば,最も基本的な衣・食・住のほかに,高度医療や情報,環境,エネルギー分野でも化学及びそれに基づく技術は多大な貢献をしている。このような社会的背景を踏まえ,応用化学科を卒業した将来の進路を考える場を提供する。「応用化学概論2」では工業化学科・応用化学科を卒業した(あるいは工業化学専攻・応用化学専攻を修了した)先輩に講師を依頼して,複数担当者によるオムニバス形式で講義及びゼミナールを展開する。第1回から第7回を講義,第8回から第12回までの5回を10日に分けてのゼミナール,第13回及び第14回をまとめの講義として科目を運営する。特に,第8回からのゼミナールは,これから就職活動及び大学院進学を行う研究室配属前の3年次学生に,明治大学応用化学会に所属する卒業生(または修了生)と直接対話する機会としたい。講義形式が多かった今までの授業に対して,少人数制のゼミナールを実施することで応用化学科の学生としての地力を養うことを目的としている。
無機化学
無機化学の講義の中で,無機化学と錯体化学1, 2の3科目は強く関連した積み上げ型の連続性を持つ科目群です。これらの科目を通して,無機化学における分子化学の概念と捉え方(スキル)を身につけることを目指します。無機化学では典型元素の化学,錯体化学では遷移元素の化学(錯体化学の基礎)を扱います。さらに,錯体化学では錯体(配位化合物)の化学を扱います。これら科目を通じて無機分子化学の重要な流れを学び,その観点での物質や反応の捉え方(スキル)を身につけます。この無機化学では,これまでの化学の講義で学んできた概念(原子構造や化学結合)を基礎として,典型元素を含む化合物の構造や性質について学びます。前半(第1~11回)では無機分子の形や結合を統一的に理解するための理論を実例(各論)を挙げながら学びます,後半(第12~14回)では典型元素の化学の各論を扱います。
錯体化学1
錯体化学1では遷移元素の化学を扱います。今日,無機化学の部門で発表される遷移元素に関する研究の大半は錯体化学(配位化学)が占めています。従ってこの講義でも,錯体化学の観点から遷移元素の化学を眺めていきます。前半(第1~11回)では錯体化学の初歩の初歩(錯体形成反応,構造)を,後半(第12~14回)では遷移元素の化学の各論を扱います。またこの講義では,3年次の応用化学実験3, 4で行う無機工業化学実験を充分に理解するために必要な事についても述べます。
無機錯体化学1
無機化学2で学んだ錯体の化学を基礎として,さらに詳しく錯体化学の理論や反応について学びます。つまり無機錯体化学は錯体化学のadvanced course と位置づけられます。したがってこの講義を充分に理解するためには,無機化学を受講していることが必要です(ただし,単位修得が必須であるとの意味ではなく,あくまでも受講が必須であるとの意味で,その達成度を要求するもではありません)。第1~7回は遷移金属錯体の結合生成と電子構造に関する理論を,第8回~11回は錯体の磁気的,分光学的性質をそれらの理論を使って理解します,第12~14回には錯体化合物の構造と物性について学ぶます。この科目で講義する領域は,化学情報実験4の無機錯体化合物の構造や電子状態に関する計算実験を,楽しく充分に理解するために必要なものです。
無機錯体化学2
有機化合物中の特定の炭素原子と金属元素との間に直接の結合を持つ化合物を総称して有機金属化合物といい,これらは意外性と多様性に富んだ一連のケミストリーを展開することが知られています。導電性ポリアセチレンの合成や,錯体触媒による不斉選択的有機合成,炭素―炭素カップリング触媒など,我が国の研究者によるノーベル化学賞受賞にもそれらの成果が端的に集約されています。金属は典型元素の金属と遷移金属の二種類に大別されますが,それらの有機金属化学は色々な面で互いに異なる点が多く見られます。本講では,金属―炭素結合の化学的性質に焦点を合わせながら,その各々について基礎から応用までを概説します。この授業で包含する内容は,無機錯体化学のみではなく,有機化学にも深く関わる部分が多く含まれます。従って,これら領域の基礎を既に学んでいることを前提にした授業構成となっています。
固体化学1
無機材料の物理的・化学的性質を理解するには,その材料を構成する化合物の構造の理解が不可欠である。本講義では,化合物の構造を理解する上で不可欠となる結晶学と,X 線構造解析の基礎を解説する。また,物質の構造と物性の関係を説明する。物質の構造と性質の関係を理解することを目標とする。
無機材料化学1
我々の身の回りは物質で埋め尽くされていて,化学は物質を扱う学問である。そして,ある機能を持たせた物質は特に材料とよぶことがある。人間が感じることはすべて物質あるいは材料同士の相互作用の結果であるといえよう。たとえば,あなたは今このシラバスを見ている。それは環境から放射された電磁波がシラバスの紙面に当たり,その紙面によって反射,散乱,吸収された結果の電磁波があなたの目に入射し,それを感じている結果である。また,あなたはシラバスのページに触れて,紙面を感じ,そしてそれをめくることができる。それはあなたの指先を構成している原子や分子と,紙面を構成している原子や分子との相互作用の結果である。この講義では,このような物質と電磁波および物質と物質の相互作用を詳しく解説し,物質や材料についての基本的な事柄を習得することを目標としている。
無機材料化学2
無機材料の物理的・化学的性質を理解するには,その材料を構成する化合物の構造の理解が不可欠である。本講義では,化合物の構造を理解する上で不可欠となる結晶学と,X 線構造解析の基礎を解説する。また,物質の構造と物性の関係を説明する。物質の構造と性質の関係を理解することを目標とする。
有機化学1
この講義では,炭素―炭素不飽和結合の反応性,有機化合物における分子の対掌性(キラリティー),ハロゲン化アルキルの性質と反応における各項目について,マクマリー著「有機化学(上)」を基に解説する。特に,有機化合物の構造と物性,対掌性と化学的性質,反応機構に焦点を当て,静的・動的な立体化学についての観点から講義を行う。本講義では,有機化学を暗記の学問として捉えるのではなく,化合物同士が如何にして出会い,如何にして反応していくかについて論理的に理解・解釈できるようになることを目的としている。このため,講義で取り上げる反応については,その反応機構について一つ一つ丁寧に解説し,電子の流れ図を正しく書けるようになることを目指す。有機反応を反応機構を基に理解することは,本講義が初めての体験になるかもしれない。一見複雑怪奇な有機反応も,各元素の電気陰性度が頭に入っていれば,これを基に,本講義で取り扱う反応は全て理解できるといっていいだろう。これは,有機反応の駆動力が,各元素の電気陰性度の差に基づいた官能基の電子密度の偏りに起因しているからである。この基本的な有機反応の捉え方を習得できれば,本講義の到達目的は達成できたと言える。繰り返しになるが,各元素の電気陰性度さえあればよい。本講義を通して楽しんで有機反応を理解し,“暗記の有機化学”に対する観念を是非捨ててもらいたい。また,そうなれるような講義を実践する。
有機化学2
この講義では,芳香族性,芳香族化合物の反応,アルコールやエーテルの性質と反応について,マクマリー有機化学(中)第9版をもとに解説する。前半は,アルコールやエーテルの特徴的な性質について分子構造をもとに解説する。加えて,アルコールやエーテルの反応については有機立体化学を復習しながらより深い理解を目標とする。特に,脱離反応(E1,E2反応)について詳しく解説する。後半は,化合物の構造と芳香族性の相関(Huckel 則)や芳香族化合物の反応に焦点を当て,p電子の振る舞いを理解することに重点を置き,講義する。有機化学における幾つかの重要な基本概念を習得するとともに,それをもとに多様な芳香族化合物の性質や反応について理解することを目標とする。有機化学2では化合物の p 共役系や官能基がそれらの性質と化学反応性にどのように影響するか,構造有機化学の視点から講義する。
有機反応化学2
有機化合物の中の「カルボニル化合物の化学」について講義する。カルボニル化合物は有機化学の中で重要な分子の一つであり,これを巧みに利用することで様々な機能性分子の創製に役立つ。この講義では,多様なカルボニル化合物の種類を理解し,その合成法や性質,反応性について解説する。最終的に,カルボニル化合物の基本的な考え方を理解し,目的とする化合物の合成においてカルボニル化合物が適切に利用出来るようになることを到達目標とする。
物理有機化学
有機材料は無機材料とは異なる特徴を持ち,エネルギー・資源の有効利用,環境への負荷の軽減といった人間社会の持続的発展に向けた重要な課題の解決につながる材料として期待され,近年盛んに開発され利用されている。具体的には,有機化合物は医薬品,香料,色素,液晶および光電子材料などへと利用され,このような機能性有機化合物の我々の社会で果たす役割はますます大きくなっている。これら機能性有機材料の基となる有機化合物の合成法の開発は,有機材料化学の根幹を支えている。この講義では,機能を示す有機化合物の分子構造の設計やその合成に使われる化学反応の理解に必須な分子軌道法について講義前半で取り扱う。基礎有機化学,有機化学で扱う有機電子論(電子の授受や電気陰性度に基づく反応理解)では説明ができない有機化学について,量子化学的な視点にもとづいてその基礎から応用まで幅広く講義する。講義後半では,分子軌道法に基づいて,光電子機能をもつ有機分子の設計に必要な基礎原理を説明するとともに,実際の製品(デバイス)の構造と機構についても概説する。具体的には,p 共役分子の光電子物性(ドナーとアクセプター,色素,染料,顔料,発光素子,太陽電池素子,半導体への応用など)について講義する。
有機合成化学
我々の身の回りには医薬品・化粧品・合成樹脂・機能性材料など様々な有機化合物があふれている。これらは我々の生活に潤いを与えるものであり,日常生活を営む上では必要不可欠なものとなっている。有機合成化学は,これらの有機化合物を様々な合成反応を駆使して効率的につくることを使命とする学問である。本講義では,官能基による電子密度の偏りが有機反応の原動力であることを念頭に,一見複雑怪奇な有機反応を暗記に頼ることなく整理して理解できるようになることを目的とする。このために,重要な有機人名反応をいくつか取り上げ,個々の反応の特徴について解説すると共に,特に反応機構を徹底的に理解することで正確な電子の流れ図の習得を目指す。人名反応といえども,問題点がないわけでない。問題点があれば積極的に取り上げて解説したい。また,有機人名反応の生理活性天然物合成への適用例についても併せて紹介する。
有機工業化学1
低分子有機化合物は,医薬品,香料,色素,液晶および光電子材料などへと利用され,我々の社会で果たす役割はますます大きくなっている。これら機能性有機化合物の合成法の開発は有機工業化学の根幹を支えている。この講義では,機能を示す有機化合物の分子構造の設計やその合成に利用される化学反応の理解に必須な分子軌道法と芳香族性について講義する。有機立体化学,有機反応化学で講義された有機電子論(電子の授受や電気陰性度に基づく反応理解)では説明ができない有機化学について,量子化学的な視点にもとづいてその基礎から応用まで幅広く講義する。これらの原理や有応理解は有機工業化学の理解に必須であり,本講義での習得を目標とする。
有機工業化学2
機能性有機材料は無機材料とは異なる特徴を持ち,エネルギー・資源の有効利用,環境への負荷の軽減といった人間社会の持続的発展に向けた重要な課題の解決につながる材料として期待され,近年盛んに開発され利用されている。この講義では,使用量の削減が求められている石油・石炭・天然ガスから低分子量有機化合物がどのよう得られ,変換されているかの現在の状況を理解するため,概論する。次に,材料として機能を付与するのに必要な有機分子の分子構造の設計に用いられる基礎原理を説明するとともに,実際の製品(デバイス)の構造と機構についても解説する。具体的には,前半に炭素資源からの有機化合物の分離と変換を中心とする有機工業化学について概観し,中頃で p 共役分子の光電子物性(ドナーとアクセプター,色素,染料,顔料,発光素子,太陽電池素子,半導体や電池への応用など)について講義し,後半で自己集合による超分子材料の形成(超分子,液晶,膜,界面活性剤など)について講義する。
高分子化学1
プラスチックやゴムなど,高分子材料は私たちの生活に無くてはならないものになっている。宇宙ステーション・ロケット・自動車・鉄道・航空機・船舶の部品,電気電子製品,建築・土木材料等に用いられる構造材料製品,化粧品,食品,フィルム・シート,ペットボトル・包装材料,塗料,接着剤,印刷,繊維,生分解性製品等に用いられる生活製品,ディスプレイ,有機 EL,太陽電池,電子ペーパー,スマートフォン,タブレット端末,燃料電池,光ファイバー部品等に用いられるエレクトロニクス製品,コンタクトレンズ,人工臓器,ドラッグデリバリーシステム等に使用されるバイオマテリアル製品等がある。高分子関連の講義を通して,高分子がいわゆる低分子量の化合物とどの様に異なるのかを理解するとともに,それらのどの様な特性を利用して高分子材料が製品化されているのかについて学んでいく。高分子化学では,高分子の合成に焦点をあてる。暮らしの中で使われている高分子が,どの様に合成されているのかについて講義を行う。
高分子化学2
プラスチックやゴムなど,高分子材料は私たちの生活に無くてはならないものになっている。宇宙ステーション・ロケット・自動車・鉄道・航空機・船舶の部品,電気電子製品,建築・土木材料等に用いられる構造材料製品,化粧品,食品,フィルム・シート,ペットボトル・包装材料,塗料,接着剤,印刷,繊維,生分解性製品等に用いられる生活製品,ディスプレイ,有機 EL,太陽電池,電子ペーパー,スマートフォン,タブレット端末,燃料電池,光ファイバー部品等に用いられるエレクトロニクス製品,コンタクトレンズ,人工臓器,ドラッグデリバリーシステム等に使用されるバイオマテリアル製品等がある。高分子関連の講義を通して,高分子がいわゆる低分子量の化合物とどの様に異なるのかを理解するとともに,それらのどの様な特性を利用して高分子材料が製品化されているのかについて学んでいく。高分子化学では,高分子の物性・機能及び生体高分子・生体関連高分子について焦点をあてる。日常生活に溶け込んでいる高分子材料は,高分子のどの様な特性を利用して開発されたのかについて講義する。それとともに生体高分子・生体関連高分子を取り上げ,合成高分子との比較をまじえて講述していく。
物理化学
「基礎物理化学」に続く講義として年春学期に開講する。物理化学とは,主に,物質が原子・分子からどのように作られるのか,作られた物質がどのような性質を持つのかを探求する学問である。その中でも,状態変化や相転移等,物質中の原子・分子の挙動によって引き起こされる現象を,熱の移動という巨視的な観点から捉えるのが熱力学である。「基礎物理化学」と本講義を合わせた受講により,古典熱力学を習得する。
反応物理化学
化学反応における反応機構や本質を理解するためには,反応速度の測定,分析,解析が欠かせない。本講義では,さまざまな化学反応について速度式を導き,それらの式を解く方法を習得する。化学反応を定性的にとらえ,定量的に扱えるようになることを目的とする。
統計熱力学
古典熱力学は,物質系の変化に伴うエネルギーの変化を内部エネルギー,エントロピー,ギブスの自由エネルギーなどの熱力学的関数を用いることにより考察するものであり,経験によって得られたつの基本法則を基礎としている。この熱力学においては,物質モルあたりの値として表わされる物性値は,物質の巨視的(マクロの)性質に基づく体系である。一方,統計熱力学では,原子,分子の性質(分子物性パラメーター)の集合体の平均的な挙動に基づいて,巨視的な熱力学特性を解明し応用する大系である。分子物性パラメーターは物質の微視的(ミクロの)性質を表わすので,物質の微視的性質に基づく体系とも言える。統計熱力学により,物質の巨視的性質の本質が分子の情報に基づいて解明されることになるので,物質の反応性や化学平衡を分子の情報に基づいて理解する統計熱力学は基礎理論として重要な位置を占めている。この授業科目では,古典熱力学で定義された熱力学的関数を,統計熱力学で用いられる測定可能な分子物性パラメーターで定義し,それぞれの熱力学的関数を具体的に計算できることできるようになることを目標とする。このために,考察の対象物質となる系,系を構成する分子を統計的分子集合体として取り扱う確率,分子の持つエネルギーが不連続であるとする量子論,そして物質のマクロの性質とミクロの性質を橋渡しする重要な役目を果たす分子分配関数を用いて統計熱力学を解説する。
界面物理化学
2つの相が接触する境界面(表面・界面)では,相の内部(バルク)とは異なる物理化学的現象がみられる。表面張力はその典型的な例のひとつである。表面や界面での物性の特異性は,我々がよく日常に経験する現象にもあり,また,これを応用している実例も多い。さらに,表面や界面における物理化学的性質は,学術的にも応用の面からも興味ある問題を提供している。表面・界面の性質や機能に関する理解は,近年,ナノテクノロジーと呼ばれる原子・分子レベルで物質を観察・操作・制御する技術の発達により,飛躍的に進歩している。今後,これらの技術を活用し,さらなる科学・技術の発展につなげるためにも,表面・界面の緒性質を理解することが不可欠である。本講義では,最近の技術・研究等の話題を織り交ぜながら,表面・界面の物理化学の基礎を解説する。
基礎分析化学
分析化学とは物質の化学組成を明らかにする手法を研究する学問であり,この手法を化学分析と呼ぶ。化学分析は化学反応解析や材料特性解析など幅広い分野に応用されており,化学実験を行う上で欠くことはできない。化学分析は元素や化学種を明らかにする定性分析と存在量を測定する定量分析のつに大別される。本講義では分析化学の基礎を学習するとともに,定量分析の基礎と化学平衡の原理について理解することを目標とする。
分析化学
「基礎分析化学」に続いて,溶液平衡と容量分析について講義する。分析化学にもちいる水溶液中での化学反応の基礎(錯平衡・沈殿平衡・酸化還元平衡)とその分析化学への適用(錯滴定・沈殿滴定・酸化還元滴定)について演習を取り入れながら学ぶ。化学平衡と化学量論を応用化学実験に結び付け,講義と実験から理解を深めることが目標である。分析化学を一通り修得するために,分析化学グループの「電気化学」,「機器分析学」に結び付けて学習することを望む。
電気化学
分析化学(2年春学期)に引き続いて,本授業の前半では,分析化学の基盤技術である分離の原理と各種分離技術について解説する。分離を応用した代表的な分析技術であるクロマトグラフィーの基礎,化学平衡の一つとしての分配平衡の概念と溶媒抽出を解説し,演習を行って理解を深める。分離に関するもう一つの基軸である,イオン化した物質の質量電荷比で分離・検出を行う質量分析の原理と装置の種類について解説する。本授業の後半では,測定値の信頼性の概念と,測定値から分析値の提示するためのプロセスに関する基礎知識を中心に解説する。すなわち,測定値はまだ分析値ではなく,それらに様々な検討を加えて信頼性を考察し,測定における不確かさを見積もって有効数字を決定し,数値を丸めて整理し,最終的に分析値として提示するわけであるが,そのために知らねばならない事項を網羅的に解説する。本授業は3年次以降の専門的分野の講義に向けた基礎分析化学の知識獲得の最終段階として,分析化学で用いる分離技術の概念および実験的計測値の取り扱いの理解を到達目標とする。基本式による計算が行えるようにすることももう一つの目標であり,小テストなどで確認する。なお,本講義の名称は「電気化学」であるが,内容は2年春学期分析化学に続くその後編とする。
機器分析学1
分析化学1, 2は,カリキュラム上,実験化学の基本という位置付けで化学量論と化学平衡を用いた化学計測について述べている。この授業(機器分析学1)は,機器分析学と一対の構成となっており,アドバンスな化学実用計測の導入部分という位置付けである。機器分析は各種装置を用いる分析技法の一つであり,近年のナノテクノロジーを始めとする最先端技術を支えている。この授業の目的は,受講者の皆が将来,研究者・技術者として自立したときに自分が所望する物質あるいは材料の特性を理解するためにどのような分析手法を用いればよいのかというチャンネルを開くことにある。しかしながら,社会には非常に多くの種類の分析装置があり,それぞれの分野で大いに活用されているが,時間の都合上,この授業で取り上げることのできる分析機器は限られている。そこで,この授業では,特に理解してもらいたい分析機器を取り上げるので,それらのさらにアドバンスな特性をもった分析装置については各自で自習する姿勢が必要である。この授業は機器分析の最も基礎となる「物質のもつ特性と電磁波の波長との関係」を概説した後,各論として講義形式で進める。各論では,光を利用した各種分析(紫外可視分光光度法・原子スペクトル法・赤外吸収スペクトル法・核磁気共鳴分析法・質量分析法など)及びクロマトグラフィーのような分離に着目した分析技法の原理と実際をトピックとして取り上げる。さらに,「学生参加型授業」を目指し,興味ある分析機器を対象としてグループをつくり,そのワーキンググループによるプレゼンテーションを行なう。
機器分析学2
物質を分離・精製する分離技術,得られた化合物の構造や性質を調べる同定技術に様々な分析機器が利用されている。本講義では,機器分析の基礎知識を修得する。さらに,生体の機能や生体分子を理解するための解析法についても知識と技能修得の基盤を学ぶことを目標とする。この授業(機器分析学)は,機器分析学と一対の構成となっており,アドバンスな化学実用計測の導入部分という位置付けである。
基礎生物化学
生命活動を支えている生体物質や細胞内で起こる膨大な反応を化学的な観点から捉えるためには,生体物質の基本的な構造と機能,物質の変化とそれに起因する様々な現象について分子レベルで理解することが重要である。ここでは,日常生活に関連した事象に基づき,生体物質の構造,性質,機能について解説し,それらが生体内での様々な反応にどのように役立っているのかを紹介する。本授業では,生命の基本単位としての「細胞の構成」を分子レベルで理解するとともに,生命現象が多種多様な生体物質間での相互作用により成り立つことを化学的視点から理解することを到達目標とする。
基礎化学工学
化学反応や環境保全・修繕技術を利用したプロセスを構築する上で重要な役割を果たすのが「化学工学」という分野で,機械と化学の学際領域を担う実践的な学問です。化学工学では,化学の他に数学や物理に関わる知識を必要とします。このような化学工学関連科目を今後学ぶ上で必要な基礎知識の修得を主な目的とする「化学工学基礎」では,できる限り基礎から講義し,演習を交えることにより,習熟度を高めて行きます。具体的な数値の取り扱いや各種の計算法,物質と熱の収支(マスバランス,エネルギーバランス)計算法とその利用法を講義します。
化学工学1
化学工学では様々な現象をモデリング(数式で表現すること,モデル化)し,モデルに基づいてシミュレーションし,シミュレーションを繰り返すことで最適化を行い,最終的にプラントを設計・構築することを目的としている。ここではその中でモデリングに焦点を当て,現象をモデリングの目的に合わせて単純化し,モデル化する方法について主に講義する。プロセス制御,そして物質や熱・エネルギーの移動に関してモデル化技術の方法論を理解し,様々なプロセスをモデル化できるようになることを到達目標とする。
化学工学2
物質の分離は製造プロセスにおいて必要不可欠な単位操作である。ある製造プロセスに最適な分離方法を決定するためには,各種の分離方法について詳しくなければならない。ここでは代表的な分離方法である蒸留・ガス吸収・膜分離について主に講義する。蒸留・ガス吸収・膜分離といった分離方法の原理・方法・特徴,そして分離装置の基本的な設計法を理解することを到達目標とする。
反応工学
反応工学は,反応器内で起こる化学反応を物質移動や熱移動等を含む物理化学現象として捉えて解析する学問である。また,解析の結果を基に,合理的な反応装置の設計・操作法を探求する。本講義では,吸着分離プロセスを想定し,反応器内で起こる素過程について講義し,各素過程のシミュレーション実習を行う。素過程についての知識と計算法,プログラミング法を習得することにより,反応器内で起こる複雑な現象を理解することを到達目標とする。
粒子化学工学
化学プロセス工業では,固体原料を砕いて適当な大きさにする,種々の粒をもつ粒子群を分けて粒径のそろったものにする,気体中に懸濁した固体微粒子を分離捕集し,気体を浄化する,液中に懸濁した固体微粒子を捕集し,濾過により清澄な溶液を得るなどという操作がおこなわれている。これらの操作に共通することは,固体粒子の化学的性質を変化させずに流体から分け,粒子群の粒径を変えることである。この授業では,固体微粒子の基本特性とその特性,及び粉体の単位操作を理解し,さらに粒子の沈降速度式を例として,式を暗記ではなく,式の成り立ちから式の検証まで深く考察できるようになることを目標とする。
機器安全学
応用化学実験及び化学情報実験では,化学の分野における各種の実験を通してより専門的な実験技術を学び,基本的な実験操作を習得するとともに,さらに進んだ実験技術を学習し,より複雑な化学反応を体験することを目的に実験してきた。年生になると各分野でさらに専門的な実験に取り組むこととなる。「機器安全学」では,研究者・技術者として必要な安全に関する基礎知識を習得するとともに,応用化学科が所有して共同利用可能な共通機器の安全取り扱い法を学ぶことで,より卒業研究が充実したものとなるようにと企画した授業である。
無機工業化学
様々な形態で用いられる無機固体材料であるセラミックスについて,種類,合成・製造法および機能発現の機構などを広く講義する。また,無機固体材料の機能を理解する上で必要となる結晶構造および電子構造の基礎についても学習する。無機化学および結晶化学の基本的な知識を要する。危険物に分類される無機化合物についても学習し,甲種危険物取扱者の資格取得のサポートを行う。
天然物工業化学
人類は,かつて天然に存在する様々な資源を活用することで衣食住を賄ってきたが,20世紀初頭に台頭した石油化学工業により,天然資源から得られるものと同等若しくは,優れた性質を持つ製品が安価に供給されるようになり先進国ではこれまで人類が経験したことのない豊かさを経験できるようになった。しかしながら,1970年台から人類が排出した化学物質に依る環境問題,化石資源などの埋蔵資源の可採年数等がクローズアップされ始め,これらの観点から石油化学工業のシステム及び製品も変革を迫られている。この様な状況の中で化学工業に於いて,天然物及びバイオシステムを基盤にした製品及び製造プロセスへの転換が模索されている。また,様々な分野への展開が期待される遺伝子工学,蛋白質工学に見られる新しい形での天然物の利用は,我々に新しい可能性をもたらすと共に,生態系に対して負うべき人類の責任をより大きなものとしつつある。本講義では,毎回テーマを決め,受講生のプレゼンテーションを題材に,討論を行いながら有機化合物を中心とする天然物について理解していく。
化学プロセスシステム工学
化学プロセスの設計・制御・管理の基礎を講義し,プロセス制御のシミュレーションをする。各自コンピュータ上でプロセス制御をシミュレーションできるようになり,さらにプロセスシステムの各段階において意思決定を合理的に行うための方法を身につけることを到達目標とする。