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 中小企業の概念は時代と共に変化している。しかるに、概して二つの概念を示すことができる。ひとつは、大企業との労働環境、経営環境、賃金、資本、設備等の比較において中小企業を「二重構造の底辺」「経済的弱者」ととらえるものと、もうひとつは近年の傾向として、雇用の創出、新産業の苗床、新技術の担い手、地域経済発展の担い手として「日本経済のダイナミズムの源泉」「活力ある多数」として中小企業と概念化するものとがある。以上のような質的概念のほかに数量的概念がある。それを一覧としてまとめると次のようになる。

中小企業者の範囲
従来(1974年) 新(1999年) 備考
従業員 資本金 従業員 資本金
工業・鉄鋼など※ 300人 1億円 300人 3億円 資本金が3倍
卸売業 100人 3千万円 100人 1億円 資本金が3.3倍
小売業 50人 1千万円 50人 5千万円 資本金が5倍
サービス業 50人 1千万円 100人 5千万円 従業員数が2倍、資本金が5倍
(※工業、鉱業、運送業その他の業種、以下に掲げる業種を除く)

資料:「中小企業基本法等一部を改正する法律案要綱」より作成。
参考文献:百瀬恵夫編著『中小企業論新講』白桃書房、2000年、第2章第1節参照。




 高い志とハングリー精神の強いアントレプレナー(起業家)を中心とし、商品、サービス、経営システムなどにおいてイノベーション(革新)をもとにした新規性があり、変化するニーズに対応できる独自技術を武器に、潜在需要を掘り起こすことにより差別化を行って、新規市場を開拓することに果敢に挑戦する創業まもない未上場の中小企業である。
参考文献:百瀬恵夫・伊藤正昭著『新中小企業論』白桃書房、1996年、p.78参照




 事業機会を機敏にとらえ、自己の責任においてリスクを負担し、創造的な活動によって事業を起こす人が起業家であり、その起業家の創造的で野心的な自立した心を起業家精神という。起業家がみずから何か価値のあるものを創り出すことで、どんな条件下でも事業機会をとらえたり、あるいは、創り出して、新しい企業を起こすという夢を実現しようとする「動機」のことである。
参考文献:百瀬恵夫・伊藤正昭編著『新中小企業論』白桃書房、1996年、p.75より引用




 企業規模の関係上、大企業に比べ資本と経営が同一である企業が大多数である。そのようなベンチャー・中小企業の経営者とは、不況に対処するねばり強い企業経営への努力、企業維持力、対外的信用の維持、地域社会との円満な関係(企業の社会的責任を含む)など、自社をとりまく経営環境に前向きに対処し、意欲的な企業展開を行いつつ、創造的リーダーとして行動することで最高責任者としての役割を果たすことができる人物である。
参考文献:百瀬恵夫・伊藤正昭編著『新中小企業論』、白桃書房、1996年。




 成功する経営者の特徴として、過去の成功体験を捨て去り、謙虚さを持って経営に取り組むということがあげられる。また常に危機感を持って変革への挑戦を続けることができる。そして、重要な特徴として、成功する経営者は変える部分と変えない部分を明確に分ける傾向にある。例えば、事業拡大をする上でも、企業経営にとって根本となるような経営理念・主要技術等は変えず、関連性のある事業転換を図る傾向にある。
参考文献:百瀬恵夫編著『中小企業論新講』白桃書房、2000年、第6章第3節参照。




 成功する経営者に共通点が見られるように、失敗する経営者にも共通点がある。その特徴の最たるものとしては以下の三点が挙げられる。まず第一に明確なビジョンを持っていないこと、第二に財務管理能力が欠如していること、そして第三に市場理解度が低いことである。これらのうち、経営者に一つでも該当すればその経営者は失敗する確率が高い。しかし換言すれば、こうした項目に全く該当しない経営者は成功する可能性があるといえる。
参考文献:Gordon.B.Baty著『起業成功戦略30章』日刊工業、1997年。




 企業城下町型集積地とは、地域の単一あるいは複数の中核企業が存在し、その同一市町村や周辺地域に中核企業へ部品や半製品を供給する多数の下請企業が集積することで、一体的に発展した地域のことである。
 大きな特徴として、中核企業の存在が、その企業の属する産業特性を反映しながら、地域の政治、経済、社会に奥深くまで影響を与えていることがあげられる。集積地の企業間関係が、戦国時代以来の城下町のタテを機軸とした形態とよく似ていることからこう呼ばれる。
参考文献:伊藤正昭著『改訂版 地域産業論』学文社、2000年、p.18およびp.72より引用。




 『巨大な需要を内包する大都市に成立し、発展する産業であり、多様な産業分野にまたがるが、かなりの規模の生産者集団を形成したものであり、地方集積地とは対照的な製品展開、工業展開が見られ、多様なレベルを構成するが、そうした重層性に加え、大都市では最も先鋭的な需要の発生すること重要である。』
参考文献:関 満博・福田順子編著『変貌する地場産業』新評論、1998、p.16およびp.19より引用。




 産地型集積地とも言う。特定の地域に同一業種に属する企業が集中立地し、その地域内の原材料、労働力、技術等の経営資源が蓄積され、極めて地場産業的色彩が強い地域のことである。産地の歴史は古く、業種的には食料品、繊維、雑貨、家具などの生活関連用品が多く、多分に労働集約的である。したがって、円高による海外製品の流入や生活様式の変化によって多大な影響を受けやすいものが多い。
参考文献:中小企業庁編『中小企業白書2000年版』大蔵省印刷局、2000年、第2章第2節1項参照。
       百瀬恵夫・伊藤正昭編著『新中小企業論』白桃書房、1996年、第5章第3節2項参照。




 限られた範囲の顧客を対象に限られた取引量で経営を営んでいるので、徹底的に顧客第一の経営を行う。他にない独自の技術や製品で市場を開拓していくためには個人の能力を引き出し、企業の心として一つにまとめる組織が必要である。イノベーションを促すフットワークの良いフレキシブルな経営組織と組織ないに分散している個々のスキルとノウハウを全体で共有すること、賃金などに反映する評価の基準を能力主義に基づくものにすることが条件として挙げられる。
参考文献:坂本光司・伊吹六嗣編著『強い企業の経営学』同友館、1999、pp.189〜198参照。




 下請企業とは、自企業より資本金または従業者数の多い他の法人または個人〈親企業と呼ばれる〉から、製品、部品等の製造、加工、修理などを受託する事業形態を取る企業のことをいう。親企業の要求に対して、低コストで柔軟な対応をすることが求められるが、これは、高度に専門化した技術力、開発職、マーケティング力などに依るところが大きい。
参考文献:中小企業庁編『2000年度版 中小企業白書』大蔵省印刷局、2000年、p.407〜412参照。




 資本・資金・人事などの面で、子会社に対する直接の支配をする企業。資本参加、営業の賃貸借、経営委任、役員派遣などの方法などで従属企業に対して影響力を与える。商法では従属している企業の過半数の株式または出資口数を所有する企業と規定する。
参考文献:中小企業庁編『1999年度版 中小企業白書』大蔵省印刷局、1999年。




 高度経済成長による産業構造の高度化、製造工程の複雑化により下請企業に必要性が高まった。そのため系列化による下請企業の確保から、ユニット発注、ユニット部品の一括発注による下請企業の選別と再編成が進んだ。これを受注できる下請企業が一次下請となり、この下で多数の企業が二次、三次以降の下請を構成し、下請構造が重層化された。こうした親企業による下請企業の利用による重層化された下請構造。
参考文献:百瀬恵夫編著『中小企業論新講』白桃書房、2000年、p.126より引用。




 中小企業が、相互扶助、自助努力の理念のもと、事業の協同化、高度化を図り、規模の過小性、過当競争、大企業による寡占化弊害などの諸問題を中小企業が自主的に解決するための、中小企業等協同組合法(1949)に基づいた組織化形態のひとつ。主に共同事業(共同購入、共同受注、共同販売等)を行うことにより規模の経済を獲得し、組織化されたことより得られた利益を組合員に還元するための組織。
参考文献:百瀬恵夫著『中小企業組合の理念と活性化』白桃書房、1989年、第1章第3節参照。




 サイエンスパークとは、多様な研究開発を一ヶ所に集積させ、それらの連携のもとに研究開発を効果的に推し進めようという目的で計画された、関連企業技術の協力が行われる場所で、工業団地とは、工場を立地させるために事前に造成・区割りされた工業用地で、創業のための工業基盤(電力や上下水道施設など)が整備された土地で、企業のために提供されるだけでなく、計画的土地利用の実現や環境保全に対する狙いが込められている。
参考文献:川端基夫・宮永昌男共著『大競争時代の「モノづくり」拠点−工業団地のサバイバル戦略−』新評論1998年、pp.10-11および増田伸爾稿「日本のサイエンスパークの現状と本研究会の研究活動」、東京工業大学研究・情報交流センター『研究・情報交流センターレポートCRI-15サイエンスパークのベース/サイエンスパークの新展開』1996年、p.28より引用。関満博・大野二郎共著『サイエンスパークと地域産業』新評論、1999年参照。




 一般的に中小企業の場合、自社だけでは大企業と比較して自社内で経営上の資産(ヒト、モノ、カネ、情報など)を組織化することに限界がある。そこで、その代替物として複数の中小企業によって企業間の組織化をはかることで大企業と対抗できる組織を形成できる。(そこには、弱いものが群れることにより強いものに対抗する自然の知恵がある)この一連の行動を『多角的連携』と言う。
 『多角的連携』は、「中小企業協同組合」および「任意グループ」という形態をとる。
「中小企業協同組合」:事業協同組合、火災共済協同組合、信用協同組合、協同組合連合会、企業組合、協業組合、商工組合連合会などがある。
 「任意グループ」:親睦組織、経済事業組織、地域お越し事業組織、ボランティア組織などがある。
 中小企業者の『多角的連携』の経済的意義としては、経済的地位の向上、コスト競争向上、経営力向上などが挙げられる。
参考文献:百瀬恵夫・伊藤正昭編著『新中小企業論』白桃書房、1996年、第8章第1節参照。




 創業間もないベンチャービジネスが、研究間発成果の企業化を効果的に実施できるよう、コンピュータ、ワープロ、レセプション・サービス等と合わせて,事業場スペースを低廉な料金で貸し付けるとともに、財務・経理など各種のコンサルティング等を行い、これらの企業の立ち上がりを支援する施設のこと。また全国には、開放試験研究施設、人材養成施設、交流施設として多くの企業が利用できるインキュベーター施設が設置されている。
参考文献:百瀬恵夫・伊藤正昭編著『新中小企業論』白桃書房、1996年、p.124参照。




 事業継承は、・世襲・経営者の親族・幹部役員によって行われることが多い。中小企業や個人企業の場合は、現経営者が創業者と異なる場合でも、約半数が親子関係となっている。しかし、近年の個人企業における「後継者難」の比率は一貫して3割を超えており、また、後継者がいないということで、廃業するケースが倒産件数の60倍に及ぶといわれるなど、中小企業や個人企業にとって後継者問題は常態的な問題となっている。
参考文献:中小企業庁編『平成11年度版中小企業白書』大蔵省印刷局、2000年、pp.328〜329および百瀬恵夫編著『中小企業論新講』白桃書房、2000年、p.76参照。




 中小企業向けの金融制度は,専門の民間金融機関と政府系中小企業金融機関,および信用補完制度がある。専門の民間金融機関として,相互銀行(平成元年4月普通銀行に転換)、信用金庫、信用組合、政府系中小企業金融機関として、中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工組合中央金庫がある。他の機関では、中小企業投資育成株式会社や、研究開発型企業育成センターもある。
参考文献:諸井勝之助・後藤幸男編著『財務・金融小事典』中央経済社、1992年、p.226〜227より引用。




 成長の可能性が高いベンチャービジネスに対する投資を主な業務とする企業。投資先のベンチャービジネスが成功し、株式を公開して得られるキャピタルゲイン(有価証券売却益)を主な収益源とする。
 日本のベンチャーキャピタルの特徴は、創業間もないスタートアップ期の企業に対する投資に比べ、株式公開が数年先に可能と考えられる企業への投資が圧倒的に多い。
参考文献:『情報・知識imidas2000』集英社、2000年、p.264より引用。




 株式未公開のベンチャー企業に資金を提供する大口個人投資家。起業家自身やその親類、知人だけでは、創業資金を賄えない場合などに、主に出資の形で資金提供する。経営指導を行うこともある。企業が成長して株式を公開すれば、大きな利益を得られる。
 この言葉が生まれたアメリカでは、株式を公開済みの企業オーナーなどがエンジェルになることが多く、税制上の優遇措置もあり、ベンチャー企業ブームの立役者となった。
参考文献:『現代用語の基礎知識』自由国民社、1997年、p.233参照。




 血縁とは、血のつながりのある間柄、血筋、また血のつながっている親族のことを指す。一方、地縁とは、住む土地に基づいてつくられる縁故関係を指す。血縁関係(親子・兄弟姉妹などの血のつながりを基礎としてつくられた社会的関係。養子などの擬制的関係を含むこともある。)に基づいて成立している社会集団(家族・氏族)を血縁集団といい、一定地域に居住していることに基づいて作られる社会集団を地縁集団という。
参考文献:松村明監修『大辞泉』小学館参照。