5. PSIの理論的検討

明治大学情報コミュニケーション学部教授
メタ超心理学研究室 石川 幹人

本章では,PSIの理論構築を目指した超心理学者のアプローチを解説する。PSIの理論とは,PSIがどのように現われるかを説明するものである。そうした説明は,ラインが指摘したように,社会学,心理学,生物学,物理学の全領域に渡ったものである必要がある。PSIは,社会的・心理的条件によって発現が左右されるように見える。PSIは,生物学的能力のように見えるし,それが発揮されると現在の物理法則に反するようでもある。PSIの理論は,多くの研究分野の知見を基礎として,それらと整合的に展開されねばならないのだ。
 「良い」理論とはどのような理論かは,厳密には科学哲学の議論になる(8-2)が,次のような評価ポイントが挙げられる。第1に,これまでの観察結果が説明できること,第2に,訓練を積んだ専門家ならば説明が理解できること,第3に,将来の観察結果を予測できること,である。反証可能性の高い理論ほど,精度の高い予測ができるので,より実用的理論となる。現在のところ,実用的に「使える」PSIの理論は,まだない。超心理学では,それに向けた理論化の努力がなされている途上と言える。ここでは,そうした努力をいくつかの角度から概観してみる。
 まず最初に,PSIが存在するならば何故日常的に現われて来ないか,微小な電流変化に敏感な情報機器が,何故PKによって損なわれないか,という観点の検討(5-1)をする。次に,PSIの発揮主体が,我々人間個人であるとすると,その超能力にはどのような進化生物学的意義があるのか(5-2)を考える。そして,心理学的な知見を踏まえてPSI実験の結果を説明するPMIR理論(5-3)を,続いて,ESPをもとにPSIを一元的に捉えるDAT理論(5-4)を解説する。その次には,物理的視点から構築される理論を概観する(5-5)。物理的理論は一般に,心理学的知見が盛り込みにくい問題がある。そこを改善する試みとして,量子論における観測問題を手がかりにして心理学的要素(意識)を導入する理論(5-6)が現われた。それはさらに,情報を鍵概念にしたシステム論的理論(5-7)へと展開する。最後に,古典的な理論ではあるが,今でも多大な影響力を持っているユングの理論(5-8)について述べる。

第5章の目次
5-1 隠蔽効果の理論
5-2 進化適応の理論
5-3 PMIR理論
5-4 DAT理論
5-5 特異的場の理論
5-6 量子的観測理論
5-7 情報システム理論
5-8 シンクロニシティ


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