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「第6回 多シルエット立体」への補足

補足1.穴の空いたシルエットから多シルエット立体が作れる条件

全体がつながっていて穴がない図形に対しては、高さが等しい図形からいつでも多シルエット立体が作れるが、穴があってもやはり同じ条件で多シルエット立体が作れる。すなわち、全体がつながっていて、高さが等しければ、穴の有無にかかわらず多シルエット立体が作れる。このことは、次のようにして理解できる。上から下までつながった図形(穴があってもなくてもよい)を断面とする十分に長い柱体を作り、それを横から眺めると、その高さの長方形キャンバスが与えられたとみなすことができる。このキャンパスに、高さの等しい第二のシルエットを描くことができ、そのシルエットを断面とする柱体と最初の柱体との共通部分を作れば、目的の多シルエットを作ることができる。

補足2.三つのシルエットを持つ立体

 多シルエット立体の創作では、シルエットの数を3以上に増やす試みも行われている。正面と横に加えて上から見下ろすことによって、三つの直交方向を選ぶことができ、それによって三つのシルエットを実現できる場合がある。例えば、次の本の表紙には、G,E,Bの3文字をシルエットに持つ立体が掲載されている。 【参考文献】 D. R. Hofstadter, "Godel, Escher, Bach: An Eternal Golden Braid." Vintage Books, Random House, Inc., New York, 1989.
 上から見下ろすのではなくて、立体を水平方向に眺めながら三つのシルエットを実現する試みもある。左に示したのは、私たちの研究室で見つけた立体の一つである。詳しくは、次の文献を参照いただきたい。 【参考文献】 T. Ohgami and K. Sugihara: Realizability of solids from three silhouettes. Collection of Abstracts of the 24th European Workshop on Computational Geometry (Nancy, France, March 18-20, 2008), pp. 233--236.