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「第22回 視点のトリック」への補足

補足1.問題1の回答


 建物を見上げた画像のコピーを3つ横に並べると、一番左が最も左に傾いて見えます。
 建物の縦の線は3次元空間で平行なので、画像上では、無限遠点と呼ばれる1点から出る放射線群になります。見上げた画像では、この無限遠点は画像の上のほうに位置し、3枚の画像ではそれぞれ別の場所になります。ですから、建物は別の方向に延びていると知覚されます。無限遠点が画像の上方にある時は、それが左にあるほど左に傾いて見え、右にあるほど右に傾いて見えます。
 ですから、同じ画像のコピーを何枚並べても、一番左の建物が最も左に傾いて見え、右へ行くほど右へ傾いて見えます。
 (左の画像は、新宿西口の近くで撮影しました。)

補足2.問題2の回答

 上から見下ろした建物の画像を並べた場合は、左がより右へ傾いて見えます。これは、建物の縦線の無限遠点が画像の下の方に来るためです。(左の画像は、東京都庁の展望台から近くのビルを見下ろして撮影したものです。)

補足3.バスタブ伸縮錯視と斜塔錯視

 バスタブ伸縮錯視は、米国の科学者 L. Maniatis (American University) が2010年に発表しています。その作品は 国際「ベスト錯覚コンテスト2010」 のファイナリストに選ばれています。

 斜塔錯視は、カナダの科学者 F. Kingdom, A. Yoonessi and E. Gheorghiu (McGill University) が2007年に発表しています。その作品は、ピサの斜塔の画像を使ったもので、 国際「ベスト錯覚コンテスト2007」 で優勝を獲得しています。

補足4.合成画像を作るときの注意

 画像を見る視点位置が変わると見えるものも変わってくることは、合成画像を作る時にも注意しなければなりません。例えば、空き地を撮影した画像と、そこに立てる予定の建物のCG画像を合成して完成予想図を作る時には、視点位置も一致するように合成しなければなりません。視点位置がずれた合成画像は、どこから見ても正しく奥行きを知覚することはできません。
 下の例の入れ物の画像は、左は焦点距離の短いレンズで撮影したもので、右は焦点距離の長いレンズで撮影したものです。逆に、そこに合成するルービックキューブの画像は、左は焦点距離の長いレンズで撮影したもので、右は焦点距離の短いレンズで撮影したものです。左のほうが、広い空間にゆったりとモノが置かれた印象が生じるのではないでしょうか。




補足5.視点の重要さについての参考文献

 画像を見るときに視点位置が重要であることは、拙著 杉原厚吉:「立体イリュージョンの数理」、共立出版、東京、2006 でも解説しています。

補足6.講義で使った絵について

 講義の中で使った絵は、撮影直前の週末に我が家に遊びに来た孫娘の一人が描いたものでした。