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「第15回 六方向変身立体」への補足

補足1.鏡を2枚にするとなぜ垂直方向にまっすぐ立った姿勢にできないのか?



 六方向変身立体は、上の左のように5枚の鏡を使って表示する場合は、全ての姿をまっすぐに立てることができます。つまり、一組の平行線を、画像の中で垂直な方向に向けることができます。これは、それぞれの姿を別の鏡の向きで調整できるからです。
 一方、上の右のように2枚の鏡だけを使って表示する場合は、全ての姿で垂直方向をまっすぐに立てることはできません。理論的には、2枚の鏡で六つの姿をすべて垂直な姿勢に表示できるはずですが、そのためには視点を無限遠方に置かなければなりません。撮影のときには、カメラを有限の距離に置きますから、遠近法的な歪みが生じ、稜線の向きが垂直から少しずれてしまうのです。

補足2.厚みのない部分を削るとなぜ違和感が生じるのか?



 上の一番左は、六方向変身立体の中央の3枚の鏡の部分を拡大したものです。全ての姿が違和感なく変身しているのが分かります。
 中央は、立体の厚みのない壁の部分を削り取ったものを同じように鏡の前に置いたところです。両側の鏡には正常に変身した姿が映っていますが、中央の鏡に映った姿は違和感を感じる方も多いと思います。厚みのない板のような階段構造が正常な姿勢に置かれている姿が見えてくる人もいますが、そういう人は少ないと思います。多くの人は、立体をひっくり返して浮かせたものを下から見上げているように知覚します。この知覚は、右のように旗を立てて重力方向を強調しても消えない人が多いと思います。
 このように、六方向変身立体を作る場合は、立体の輪郭に凹な部分を作らないという注意が必要です。厚みのない壁の部分を残したままにした方が、錯視が強く起こるのです。この注意は、高さ反転立体を作るときにも有効です。一方、三方向変身立体を作る場合は、厚みのない壁の部分を削り取ってもかまいません。