![]() 現在の静岡県磐田市福田(ふくで)漁港から静岡県袋井市湊にかけての海岸の沖合で、寧波商船「万勝号」が座礁した。 その後、乗っていた八十数名の唐人は上陸し、日本側の役人の監視下に置かれた。 当時としては大事件で、江戸でも瓦版が出た。滝沢馬琴も、随筆でこの事件について書き残している。 鎖国時代であったこともあり、日本側は、唐人たちについて綿密な調査を行い、詳細な記録を残した。 これは期せずして、当時の中国商船の船員の文化・風俗習慣・出身地などについての第一級の史料となった。 船員たちが船旅の慰みに持っていた楽器や、唄の歌詞と楽譜の断片までもが、日本人によって記録されていた。 一説に、清楽「九連環」も、万勝号の船員が収容先で唄っていたものを、地元の人々が耳で聞き覚えたものであるという。 この写真は、2008年1月19日、福田漁港にて撮影。江戸時代の海岸線は今よりも内陸だった。 |
漢字 | 馬琴 | 連山 | 寧波語 |
我 | ゴ | ŋo (ンゴー) | |
的 | テ | テ | tiɪʔ (ティーッ) |
看 | カン | カン | kʼi (キー) |
賜 | スウ | ||
九 | キウ | キウ | ʨiʏ (チー) |
連 | レン | レン | |
環 | クワン | クワン | guɛ (グエ) |
双 | ツアン | シャン | sɔ~ (ソオー)(鼻音化) |
解 | カイ | キャイ | ka (カア) |
割 | コユツ | カ | kɐʔ (カアッ) |
誰 | スイ | ジュイ | zɥ (ズユィ) |
人 | イン | ジン | 〓iŋ (ニン) |
参考:李栄主編『寧波方言詞典』江蘇教育出版社(南京市)1997年 寧波語の発音表示には、お使いのパソコンにIPA(国際音声記号)の 文字フォントがインストールされている必要があります。 |
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![]() 唐人橋(とうじんばし)。 静岡県磐田市の太田川にかかる豊浜橋から、東に200メートルほどのところにある。 現在は狭い溝にすぎないが、江戸時代には、この川の幅は20メートル以上もあった。 万勝号の唐人たちが無事に長崎に帰ったあと、破損した万勝号の帆の木材を流用して、長大な橋をかけたという。 江戸時代の長大な橋に使われた万勝号の木材は、現在、この橋から北西に200メートルほど離れた豊浜小学校の校舎内で展示されている(非公開)。 なお、船主・劉然乙を含む唐人の半数が収容されていた大安寺は、この唐人橋から西に200メートルほど離れた、現在の豊浜橋の東側のたもとにあったが、1944年の東南海地震で倒壊した。大安寺の跡地は現在、民家になっている。 |
『清風雅唱 外編』(1888)より![]() 近代デジタルライブラリーのこちらの頁 |