戦金山(せんきんざん)Zhan-jin-shan

 これから見ていただくのは、戦金山、金山(きんざん)の戦い、というお芝居です。
 今から九百年前の中国。漢民族の国である宋(そう)は、満州人(まんしゅうじん)が建てた北方の強国・金に圧迫されていました。宋の軍隊は、金山という場所の近くの川で、敵の軍隊に決戦をいどみます。
 宋の女武者・梁紅玉(りょうこうぎょく)は、女性だけの軍隊をひきいて戦場におもむき、戦さの太鼓をたたいて味方をはげますのでした。
 凛々(りり)しい女性軍隊の歌と舞い、太鼓の激しい音色など、ダイナミックな魅力の京劇「金山の戦い」、どうぞごゆっくりお楽しみください。

(京劇団「中心」版)

 四人の女兵士が登場し、そのあと、主人公の梁紅玉が登場します。
 梁紅玉は、はやる胸のうちを、しぐさと踊りで表現します。(約3分)

 梁紅玉は歌います。
「いくさの太鼓を、女の細腕(ほそうで)で叩き、味方の士気を鼓舞(こぶ)しましょう。
 見渡せば、戦場には、兵隊の旗指物(はたさしもの)と鎧兜(よろいかぶと)は、光り輝いています。
 大河(たいが)をうめつくす軍艦(ぐんかん)はびっしりと陣列を組み、まさに鉄壁(てっぺき)のかまえ。
 わが軍隊のときの声は、天空たかくこだまする。
 女であっても、戦いの帰趨(きすう)を左右するはたらきをしましょう。
 栄光の軍旗(ぐんき)を守り、戦場の大河も逆流せんばかりの気迫をもって、
 忠勇無双(ちゅうゆうむそう)、わが祖国の旗を守りぬきます」

 梁紅玉は言います。
「私(わたくし)は、梁紅玉と申す者です。今日、わが国の男たちは、敵に決戦をいどみます。私は、いくさの陣太鼓(じんだいこ)を打ち鳴らし、味方をはげまそうと思います。女兵士たちよ、陣太鼓をこれへ」
 太鼓が運ばれてきます。
 梁紅玉は歌います。
「直接、敵と戦わずとも
 敵の大軍を倒すことはできるのです」

 味方をはげますため、太鼓をはげしく叩きます。(約3分)

 女たちは、踊りながら歌います。
「はるかに見ゆるは、はげしく波立つ戦場の大河。さかまく波は天まで届く勢いです。
 大きな網を川に投げいれて、大物の敵をつかまえましょう。
 戦場では、角笛(つのぶえ)や太鼓の音が鳴りひびいています。
 まるで、神話に出てくる巨大な魚が、大波(おおなみ)をたてて暴れているかのようです。
 馬はいななき、旗ははためく。馬はいななき、旗ははためく。
 戦場にみなぎる殺気(さっき)は、空高く雲の中にまで立ち上ってゆきます。
 残念なのは、敵の数が多すぎて殺しきれぬこと。
 豪華なよろいを身にまとい、刀をひっさげて馬に乗り、
 豪華なよろいを身にまとい、刀をひっさげて馬に乗り、
 魔生(ましょう)の女武者(おんなむしゃ)たちが、天空(てんくう)から地上の戦場におりたつ。
 さあ、威風堂々、戦場の花となりましょう。」

 女たちは見事な槍さばきを披露します。(約3分)

  (完)


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