艶陽楼(えんようろう)Yan-yang-lou

 これから見ていただくのは、艶陽楼という名の建物を舞台にした活劇です。
 『水滸伝』(すいこでん)の後日談(ごじつだん)のものがたり。腹黒い大臣、高[人求](こうきゅう)には、高登(こうとう)という名前のドラ息子がいました。高登は父親の権力をかさにきて、徐佩珠(じょはいしゅ)という名前のむすめをつかまえて、艶陽楼という名の建物のなかに監禁(かんきん)しました。『水滸伝』に出てくる英雄・花栄(かえい)の息子は、徐佩珠の兄・徐士英(じょしえい)と力をあわせ、徐佩珠を艶陽楼のなかから救い出し、高登を殺します。
 それでは、とらわれの美女を悪者の手から救い出す活劇「艶陽楼」どうぞごゆっくりご覧ください。

(上演時間約35分)
 花逢春(かほうしゅん)が登場し、自己紹介のせりふを言います。
「俺の名は花逢春。梁山泊(りょうざんぱく)の英雄・花栄(かえい)の息子だ。俺の親父(おやじ)の花栄は、弱きを助け強きをくじく男だったが、最後は酒に毒をもられて殺されてしまった。あとに残された俺とおふくろは、ここ、南陽(なんよう)の地にまで逃げてきた。ここで俺は、ふたりの弟ぶんと知り合った」

 花逢春のふたりの弟ぶんが登場します。ふたりの名前は、呼延豹(こえんひょう)と秦仁(しんじん)と言います。
 呼延豹と秦仁のふたりは、花逢春にあいさつをします。
 呼延豹と秦仁のふたりは、三月三日の桃の宴会にいっしょに遊びに行こうと、花逢春を誘います。
 花逢春は、いっしょに桃の宴会に行くことを承知します。


 場面はかわって、こちらは徐佩珠という美しい娘の家です。
 徐佩珠と、彼女のお母さんがいっしょに登場します。
 一家はこれから、亡くなったお父さんのお墓参りに行くところです。

 徐佩珠の兄・徐士英が、手下を連れて帰ってきます。徐士英は、お墓参りに行くための馬車を手配してきたのでした。
 徐士英は母と妹を馬車に乗せて、お墓参りに出発します。


 高登が登場し、詩とせりふで自己紹介します。
「それがしは高登と申すもの。わが父、高[人求](こうきゅう)は皇帝陛下(へいか)のご信任あつい政府高官。それがしは、はっきり申して勉強は大嫌い。大好きなのは、棒術や拳法(けんぽう)などの武術である。父上は、それがしを都に置いておくと、なにか騒ぎをしでかすのではないかと懸念(けねん)して、それがしをこの南陽の田舎に住まわせている。今日は三月三日、桃の花の宴会の時分(じぶん)。これから桃の花が咲く野にあそびにゆき、思うぞんぶん棒術のけいこをするとしよう」
 高登は、四人の武術の師匠(ししょう)を呼びだし、一緒に馬に乗って、桃の花の宴会の場所にむかいます。


 場面かわって、賈斯文(かしぶん)が馬に乗って登場します。
「わしの名前は賈斯文と申します。わしは高旦那(だんな)のお屋敷で、秘書(ひしょ)の仕事をしとります。われながらの口八丁(くちはっちょう)手八丁(てはっちょう)で、うまいもんを食い、きれいな服をきて、贅沢(ぜいたく)を満喫(まんきつ)しとります。さて、いま若旦那(わかだんな)の高登さまのお言いつけで、これから、桃の花の宴会の場所に下ごしらえに行きます。つまり、かわいい女の子を若旦那のために物色(ぶっしょく)するのが、わしの仕事です。はい。それじゃ、先を急ぎますんで、馬にムチあて、はいさようなら」


 花逢春とふたりの弟ぶんが馬に乗って登場します。
 そこへ、賈斯文も馬に乗ってやって来ます。
 花逢春たちは、もともと賈斯文と知り合いでした。賈斯文がいま、悪い大臣の高のやしきで働いていることを知り、花逢春たちはあきれます。
 花逢春たちは、賈斯文を置いて、自分たちだけ馬を飛ばして桃の宴会の場所にむかいます。


 高登が、四人の武術の師匠をひきつれて登場します。
「桃の宴会場は気持ちいい。あと、女の色気(いろけ)があれば言うことなしだが」
 高登たちは、武術の練習をはじめます。
 そこへ賈斯文がやってきます。賈斯文は、一足さきに桃の花の宴会場に到着して、すでに美しい女を物色していたのでした。
 賈斯文は、高登にこっそり耳うちします。
 一同は桃の花の宴会場にむかいます。


 徐佩珠とその兄、母親が家(いえ)の子(こ)郎党(ろうとう)とともに登場します。
 母親は、亡き夫の墓(はか)にむかって涙ながらに呼びかけます。
 息子の徐士英は、母と妹をのこし、神社にお参りに行きます。

 賈斯文が登場し、徐士英の郎党にたずねます。
「あちらのかわいいお嬢(じょう)ちゃんに、いいお話しがあるんだけど」
 郎党は「無礼者め」と怒ります。
 賈斯文は高登を呼びます。
 高登が、武術の師匠たちや手下の男たちを連れて登場します。高登は、徐佩珠の美貌(びぼう)を見て一目で気にいります。
 高登たちは力づくで、いやがる徐佩珠を無理やり連れてゆきます。母親は高登に取りすがりますが、高登は母親を足で蹴りとばしてしまいます。
 高登たちは馬に乗り、徐佩珠を連れて立ち去ります。
 そこへ、兄の徐士英が帰ってきます。徐士英は母親から妹がら致(ち)されたことを聞き、腹をたてます。
 徐士英は、母を家に送るよう郎党に命じ、自分ひとりで妹を助けだすため、高登のあとを追いかけます。


 花逢春たち三人が登場します。
 三人の目の前を、馬に乗った高登たちが、徐佩珠をら致したまま通りすぎてゆきます。
 花逢春たちは、不良息子の高登が若い女性を馬で連行しているのを見て、高登がまた女性をつかまえて乱暴しようとしている、と腹をたてます。
 花逢春たちは、高登を追いかけ、さっきの女性を助けに行くことにします。
 ちょうどそこへ、兄の徐士英が駆けつけて、「高登という名前のふざけた野郎はどいつだ」と花逢春たちにたずねます。
 花逢春たちは自己紹介します。徐士英は自分の非礼をあやまります。
 徐士英は、自分の妹が高登にさらわれたことを話します。花逢春たちは、いましがた、それらしき一行を見かけたことを話します。
 徐士英は、これから自分は妹を救いに行く、と言います。
 花逢春たちは、正義を愛する男としして、助太刀(すけだち)することを申し出ます。


 高登たちが馬で登場します。徐佩珠はずっと泣いています。
 高登たちは、首尾(しゅび)よく成功したお祝いに酒を飲むことにします。


 花逢春とふたりの弟ぶん、徐士英が馬に乗って登場します。
 一同は、高登のやしきに殴り込みをかけることにします。


 場面かわって、高登のやしきです。時刻はもう夜。やしきを守る警備員が見回りをしています。

 花逢春、徐士英、呼延豹、秦仁の四人がこっそり闇のなかをしのびよります。
 高登が酔っ払って登場します。高登は「あのアマめ、なかなか落ちない。畜生、やけ酒(ざけ)だ」と言いながら去って行きます。
 花逢春たち四人は、まず徐士英の妹を助け出してから、暴れ者の高登に復讐することにします。
 花逢春たち四人は、見回りの警備員をつかまえて締(し)めあげます。見回りの警備員は、徐士英の妹が艶陽楼という建物のなかに捕えられていることを答えます。

 花逢春たち四人は艶陽楼にやって来ます。
 徐佩珠は建物のなかから助け出されます。
 秦仁と徐士英はまず、徐佩珠を安全な場所に送り届けることにします。
 あとに残った花逢春と呼延豹のふたりは、建物に火をつけます。
 高登の手のものたちが火を消すために登場します。花逢春と呼延豹は、高登たちと戦い、乱闘になります。
 秦仁や徐士英ももどってきて、乱闘に加わります。

 花逢春たちは、高登の用心棒たちとの苦戦のすえ、最後に高登を打ち殺し、意気揚々(いきようよう)とひきあげます。

(完)


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