獅子楼(ししろう)Shi-zi-lou
これから見ていただくのは、獅子楼、豪傑の武松(ぶしょう)が兄の仇(かたき)を獅子楼でとる、というお芝居です。
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『水滸伝』(すいこでん)の英雄、武松が登場します。
武松は、自分の兄・武大に会いに帰ってきたのです。
武松が兄の家のなかにはいると、兄の姿は見えず、つくえのうえに位牌(いはい)が置いてあります。
武松は、位牌のうえに兄の名前が書いてあるのを見て、兄が死んだことを知り、悲しみます。
武松は兄の妻である潘金蓮を呼び、事情をききます。
武松は兄の死因をたずねます。潘金蓮は、武大は心臓病で亡くなった、と言います。しかし武松は、日ごろ健康だった兄が心臓病で亡くなったときいて、疑います。
武松はつづけて、葬式の様子をたずねます。しかし潘金蓮の答えはしどろもどろで要領を得ません。
潘金蓮は夫の喪(も)に服しているはずなのに、服装も化粧も派手です。武松はますます怪しみます。
武松は、兄の霊前(れいぜん)に、自分がかならず真相を究明し決着をつけることを誓います。
「王婆(おうば)」というやりて婆(ばば)が登場します。
彼女は、表むきは茶店(ちゃみせ)を経営していますが、裏では、男女の不倫(ふりん)関係や逢引(あいびき)を取り持つことをなりわいとしていました。
実は、西門慶(せいもんけい)という悪い金持ちのプレイボーイが、人妻である潘金蓮に恋をしたとき、この王婆が浮気の仲をとりもったのです。西門慶は、潘金蓮を完全に自分のものにするため、彼女とぐるになり、夫の武大を毒で殺してしまいました。王婆はその一部始終にかかわっていたので、武松が兄の死の真相を知ったら大変なことになる、と、心配します。
武松が、王婆の茶店にやって来ます。
王婆は型どおりのおくやみを言い、あたりさわりのない会話をしてごまかそうとします。
武松は、この茶店でも、兄の死についての真相をきくことができません。今度は知人の何九叔(かきゅうしゅく)に話をききにゆくことにします。
何九叔は、兄・武大の葬式をおこなってくれた人物です。
何九叔は武松に、武大の死の真相を打ち明けます。茶店をひらいている王という老婆が、潘金蓮と西門慶の浮気の仲を取り持ったこと。西門慶は潘金蓮を完全にわがものにするために、夫の武大を毒殺したこと。何九叔は葬式のとき、武大の死体が毒気(どくけ)で変色しているのを見て、武大の死が病死ではなく毒殺であると気付いたこと。西門慶が何九叔を口止めするため、お金を贈ろうとしたこと、など。
武松は、真相を打ち明けたてくれたことを感謝します。
武松は、真相を明らかにするため、計略を考えます。武松は、町の人々が兄の葬式を出してくれたことに感謝するため宴会を開くことにし、そのしたくのために出て行きます。
何九叔はまず、張大公(ちょうたいこう)のところに行きます。張大公は八十九歳の老人で、お酒に目がないので、武松が町内の人々に感謝の酒をふるまってくれると聞いて、喜んで行くことにします。
何九叔と張大公は、いっしょに野菜売りの少年・[軍邑]哥(うんか)の家に行きます。[軍邑]哥は冗談を言いながら応対します。
結局、[軍邑]哥も母親の許しを得て、ふるまい酒をご馳走になりに行くことにします。
何九叔と張大公と[軍邑]哥(うんか)の三人は、一緒につれだって、茶店を開いている王婆のところに行きます。
王婆は武松を恐れているのでいやがりますが、結局、いっしょに武松のふるまい酒をご馳走になりに行きます。
武松が、一同の前に登場します。
潘金蓮は悲しんでいるふりをして、うそ泣きしています。
武大毒殺にかかわった王婆は、気が気ではありません。
武松はまず、普通に酒をふるまうふりをして、町内の人々の様子を見ることにします。
武松は手下に命じ、酒をはこばせます。
武松は、まずは町内の人々への感謝の気持ちをこめて、と、 第一回目の乾杯をします。
続いて、第二回目の乾杯をします。
第三回目の乾杯のとき、[軍邑]哥が「この三杯目は、毒薬を準備した王婆(おうば)さんのために飲もう」と皮肉をこめて提案します。王婆はあわてます。
武松は、王婆に無理に酒を飲ませます。
武松は、町内の人々に、今日の宴会の本当の目的を打ち明けます。
「みなさん、わたしは兄が亡くなった本当の理由を知りたいのです」
潘金蓮と王婆は、気が気ではありません。
武松はあらためて、潘金蓮と王婆のふたりに兄の死因をたずねます。潘金蓮は「心臓病」と、王婆は「急性アルコール中毒」と、ふたり同時に違う答えを言ってしまいます。
ふたりが何かを隠していることは、ますます明らかになります。
武松は最後に、[軍邑]哥に真相を言わせます。「王婆が手引きして、西門慶が悪事をはたらいたんだよ」
武松は町内の一同に、王婆らの身柄(みがら)をあずけると、自分は役所に訴えるため、その場から出て行きます。
場面かわって、西門慶が登場します。
「(詩)俺はたぐいまれな男、百人力(ひゃくにんりき)の力もち。
潘金蓮の亭主を殺し、これで邪魔者は片付いた。
俺は王婆とぐるになって、潘金蓮の亭主・武大郎(ぶだいろう)のやつを殺した。いま、やつの弟の武松が帰ってきた。このままでは済むまい。ほとぼりがさめるまで、どこかにしけこんで、武松のやつをやりすごすことにしよう」
西門慶は手下とともに、「獅子楼」(ししろう)という名前の芸者屋(げいしゃや)に遊びに行きます。そしてこの芸者屋を借りきって、かくれることにします。
幕の中から、役所の役人がどなる声が聞こえてきます。
「このふとどきものめが。西門慶どのは立派な人物である。武松よ、名誉毀損(めいよきそん)と中傷(ちゅうしょう)のかどで、おまえを四十回の棒たたきの刑に処する」
武松が手下に両脇からかかえられて、幕の中から出てきます。
「西門慶のやつめ、金にものを言わせて、役人をすっかり買収(ばいしゅう)していやがる。こうなったら、もう役人は信用できない。法律のかわりに俺が裁いてやる」
武松は受理されなかった告訴状を破り捨て、自分の手で兄のかたきを打つことを誓います。
武松は、西門慶のかくれ場所をさがすため、盛り場(さかりば)へと足を運びます。そして西門慶の居場所をおしえてくれたものには、銀十両を与える、とふれまわります。
西門慶の部下は、お金に目がくらみ、武松に「西門慶は獅子楼にかくれています」と居場所を密告します。
武松は、その部下に「おふくろさんのところに帰りな」と言い、足で蹴(け)りとばします。
武松は手下に刀を持ってこさせます。
武松は獅子楼にやってきます。
西門慶は、ふてぶてしくも自分が武松の兄を殺したことを認めます。
武松は刀で西門慶を殺し、兄のかたきを討ちます。
(完)
西門慶が登場します。
「(詩)俺はたぐいまれな男、百人力(ひゃくにんりき)の力もち。
顔役(かおやく)のこの俺に、たてつけるやつなど誰もいない。
武松のやつが、みやこに帰ってきたという。もしやつに、俺と潘金蓮がふたりで武大を殺したことがばれたら、ただではすむまい。ほとぼりがさめるまで隠れていよう。さて、どこがいいだろうか」
手下の者は「獅子楼です」と言います。
西門慶は手下とともに、「獅子楼」(ししろう)という名前の芸者屋(げいしゃや)に行きます。
西門慶は芸者屋の主人に「この建物は、俺の貸切(かしきり)にするから、誰も通すな」と言います。そして手下に、役所に行って役人に賄賂を贈り、買収しておくように命令します。
幕の中から、役所の役人がどなる声が聞こえてきます。
「このふとどきものめが。西門慶どのは立派な人物である。武松よ、名誉毀損(めいよきそん)と中傷(ちゅうしょう)のかどで、おまえを四十回の棒たたきの刑に処する」
武松が部下とともに、幕の中から出てきます。
「西門慶のやつめ、金にものを言わせて、役人をすっかり買収(ばいしゅう)していやがる。こうなったら、もう役人は信用できない。法律のかわりに俺が裁いてやる」
武松の部下、周天(しゅうてん)は、西門慶はたぶん盛り場にかくれているだろう、と言います。
武松は、西門慶のかくれ場所をさがすため、盛り場(さかりば)へと足を運び、たずねてまわります。
たまたま、西門慶の部下がやってきました。この部下は主人を恨むことがあったので、武松に「西門慶は獅子楼にかくれています」と居場所を密告します。
武松は手に刀を持って獅子楼にやってきます。
西門慶は、ふてぶてしくも自分が武松の兄を殺したことを認めます。
武松は刀で西門慶を殺し、兄のかたきを討ちます。
(完)
西門慶が登場します。
「(詩)俺はたぐいまれな男、百人力(ひゃくにんりき)の力もち。
顔役(かおやく)のこの俺に、たてつけるやつなど誰もいない。
武松のやつが、みやこに帰ってきたという。もしやつに、俺と潘金蓮がふたりで武大を殺したことがばれたら、ただではすむまい。ほとぼりがさめるまで隠れていよう。さて、どこがいいだろうか」
手下の者は「獅子楼です」と言います。
西門慶は手下とともに、「獅子楼」(ししろう)という名前の芸者屋(げいしゃや)に行きます。
西門慶は芸者屋の主人に「この建物は、俺の貸切(かしきり)にするから、誰も通すな」と言います。そして手下に、役所に行って役人に賄賂を贈り、買収しておくように命令します。
幕の中から、役所の役人がどなる声が聞こえてきます。
「このふとどきものめが。西門慶どのは立派な人物である。武松よ、名誉毀損(めいよきそん)と中傷(ちゅうしょう)のかどで、おまえを四十回の棒たたきの刑に処する」
武松が部下とともに、幕の中から出てきます。
「西門慶のやつめ、金にものを言わせて、役人をすっかり買収(ばいしゅう)していやがる。こうなったら、もう役人は信用できない。法律のかわりに俺が裁いてやる」
武松の部下は、西門慶はたぶん盛り場にかくれているだろう、と言います。
武松が、自分はこれから兄の仇を取る、と言うと、部下は「それなら、わたくしが一部始終を見届けて、いざというときの証人になります」と言います。
武松は、部下の勇気に感激し、部下を拝んで感謝の気持ちをあらわします。
武松は、西門慶のかくれ場所をさがすため、盛り場(さかりば)へと足を運び、たずねてまわります。
たまたま、西門慶の部下がやってきました。この部下は主人を恨むことがあったので、武松に「西門慶は獅子楼にかくれています」と居場所を密告します。
武松は手に刀を持って獅子楼にやってきます。
西門慶は、ふてぶてしくも自分が武松の兄を殺したことを認めます。
武松は刀で西門慶を殺し、兄のかたきを討ちます。
(完)