鎖五龍(さごりゅう)Suo-wu-long
これからご覧いただくのは、鎖五龍(さごりゅう)、五匹のドラゴンをしばる、という芝居です。
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李世民の部下、秦瓊(しんけい)が登場します。
秦瓊は、命令を受け、軍隊の為に食料を運搬しているのでした。
(湖広会館ではここから)
場面はかわって、ここは、唐(とう)の軍隊の陣地の中です。
この芝居の主人公、単雄信(ぜんゆうしん)が登場します。彼は、唐との戦いで捕虜となり、これから死刑になるのです。
単雄信は顔にくまどりをしています。このくまどりは、彼が非常に個性の強い人物であることを示します。
単雄信は歌います。
「俺はたったひとり馬をかって、さんざんに唐の軍隊をけちらしてやった。俺は捕虜になり、李世民の野郎から、家来になってほしいと頼まれたが、ことわった。俺はこれから死ぬが、すぐに生まれかわって、二十年後、また一人の豪傑になってやって来るからな」
という内容の歌を、朗々とした声で歌います。
唐軍の大将、李世民がやってきて、単雄信に、死刑の前の最後の乾杯をすすめます。
「この酒を飲みほして、今生(こんじょう)の恨みはお互いチャラにしよう」という内容の歌をうたいます。
単雄信は、李世民をののしります。
「この大馬鹿野郎、きさまのせいで俺の兄貴は戦死した。とりあえず天下は貴様にくれてやる。けれど俺は、いつかこの世に帰ってくるぜ」という内容の歌をうたいます。
次に、単雄信のむかしの仲間・徐茂公(じょもこう)が登場して、単雄信に最後の酒をすすめます。
この徐茂公という人物は、むかし、単雄信と兄弟ぶんのさかづきを交し、同じ理想を求めた仲でしたが、その後、単雄信とたもとを分かち、李世民の部下になりました。
単雄信は、徐茂公をののしります。
「この裏切りものめ、おまえは人間の皮をかぶったケダモノだ」という内容の歌をうたいます。
次に単雄信のもと兄弟ぶんだった羅成(らせい)という人物が登場します。
羅成は、「羅成叫関」すなわち「羅成が城の門のまえで叫ぶ」という芝居にも出てくる悲劇の武将です。
羅成は歌いながら、最後の酒をすすめます。
単雄信は、羅成をはげしく罵倒します。
「俺は、おまえの家族のことをずいぶん面倒みてやったのに、俺を裏切って李世民の家来になりさがるとは。おまえはきっと、タタミのうえでは死ねないぞ」という内容の歌を非常な早口で歌います。
次にまた、単雄信のもと兄弟ぶんだった、程咬金という男が登場します。
程咬金は「さあ兄貴、乾杯だ、これで兄貴の魂も極楽ゆきだ、間違いなし」という内容の歌をうたいます。
単雄信は、程の言葉をよろこび、乾杯します。
程咬金はさらに言います。
「さあ兄貴、また乾杯だ、これで兄貴の魂は天国ゆきだ、間違いなし」
程咬金は「その昔、俺たちみんなが兄弟のさかずきをかわして義兄弟になったとき、俺は兄貴と一番ウマがあった。兄貴の名前は死後も不滅だ」という内容の歌をうたいます。
単雄信は、程咬金の言葉によろこび、心ゆくまで酒を飲みます。
単雄信は「あと一人、昔の仲間の秦瓊の姿が見えないが、彼はいまどこにいるか」という内容の歌をうたいます。
秦瓊は、軍隊の食料を運ぶ任務のため、今日の単雄信の死刑には立ち合うことができないのでした。
単雄信は、最後に秦瓊に会えなかったことを、残念に思います。
単雄信は悠然と末期(まつご)の酒を飲みおえます。そして李世民にむかい「唐の小僧め、とっとと俺の首を切るがいい」という内容の歌をうたいます。
単雄信の死刑は終わりました。
李世民は、部下たちに言います。
「功労をねぎらう宴会を準備してある。さあ、みんなで行こう」
(完)