金翅大鵬(きんしたいほう)Jin-chi-da-peng

 これから見ていただくのは、金翅大鵬、金色の翼を持ったオオトリと孫悟空(そんごくう)が戦う、という芝居です。
 主人公は、みなさまよくご存じの孫悟空(そんごくう)です。
 三蔵法師(さんぞうほうし)たちが西の天竺(てんじく)にお経を求めて旅をしていたときのこと。大鵬(たいほう)という名前の妖怪があらわれて、三蔵法師をさらってしまいました。孫悟空はお釈迦(しゃか)様のもとに駆けつけ、助けを求めます。お釈迦様は、孫悟空の援軍として、仏弟子である十八羅漢(じゅうはちらかん)を地上に送ります。孫悟空たちは激しい戦いの末、最後に三蔵法師を妖怪の手から救い出すことに成功します。
 それでは、妖怪と孫悟空の電光石火の立ち回りを、どうぞこの京劇の舞台で御堪能ください。

(青年京劇団 35-40分)

 お釈迦(しゃか)さまが登場します。
「(詩)東のくにには迷える衆生(しゅじょう)があふれておるゆえ
 三蔵法師(さんぞうほうし)が天竺(てんじく)に経文(きょうもん)を取りにゆく
 三蔵法師の一行(いっこう)が数々の試練をのりこえたあかつきには
 仏の光は人間の世界に満ちるであろう」

 孫悟空が登場します。
「孫悟空が参りました」
「悟空よ、三蔵法師になにかあったのか」
「申し上げます。われら一行が天竺にありがたいお経(きょう)を取りに行く旅の途中、いきなり、大鵬(たいほう)とかいう名前の、大きなトリの化け物があらわれて、お師匠さまをさらっていきました。お釈迦さまのところで腕のたつ神さまを、どうか援軍(えんぐん)として、人間界に送ってください」
「大鵬はてごわい相手だ。仏弟子(ぶつでし)たちとて、簡単には勝てまい」
「そんなに強いなんて、いったい、大鵬って何者なんです?」
「聞くがよい。
 (詩)青い獅子(しし)と白い象は、もともと文殊菩薩(もんじゅぼさつ)や普賢(ふげん)菩薩の乗り物だったが
 こっそり逃げ出し、大鵬とぐるになり悪さをしておる」
「で、大鵬は?」
「(詩)大鵬は天地の気(き)を受け、その神通力(じんつうりき)は無限(むげん)である」
「それじゃまさか、お師匠さまを救えるのぞみはない、ってことですかい?」
「案(あん)ずるな、とっておきの猛者(もさ)たちを、そなたの応援につけよう。仏弟子(ぶつでし)たちよ」
 羅漢(らかん)が答えます。
「はい」
「妖怪を退治(たいじ)せよ」


 大鵬が登場して歌います。
「俺は、こうるさい仏の束縛(そくばく)から逃げ出した。
 心ははずむ。
 黄金色(こがねいろ)に輝くつばさを伸ばし、猛威(もうい)をふるい、
 法力(ほうりき)をつかって、三蔵法師をつかまえた。
 さあ祝いの宴会だ。
 三蔵法師の肉を食べれば、俺は不老不死(ふろうふし)になれる。
 俺は楽しみをきわめて、神(かみ)と同格(どうかく)になってやる。」
 大鵬は呼びかけます。
「子分(こぶん)たちよ、谷(たに)の外に出て、あのサル野郎めを迎えうて」

 妖怪たちは戦いのしたくをととのえ、歌います。
「(歌)わが法力(ほうりき)は無限、わが法力は無限
 かならずや、敵をたちまち地獄に送りつけてやる
 敵がやってきたみたいだぞ
 敵は、わが兄弟たちの手柄(てがら)を立てさせるために来たようなものだ
 敵は刀をふるって、カッコつけているけれど
 俺には青い獅子、白い象という強い味方がついている
 さあ、この黄金のつばさを広げて、空たかく飛んでゆこう
 やつらを倒し、敵のヨロイ、カブトを跡形(あとかた)もなくふっとばしてしまおう
 俺さまの神通力(じんつうりき)で、海はひっくりかえり、大空(おおぞら)もふるえおののく」

(戦いの時間、約15分)

 最後に孫悟空たちは、三蔵法師を救いだします。

(完)


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