紅線盗盒(こうせんとうこう)Hong-xian-dao-he
これから見ていただくのは、紅線盗盒、「赤い糸」という名前の女性の豪傑が、世の平和を守るため、黄金の皿を盗む、という芝居です。
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紅線は続けて言います。
「見れば、月は明るく夜風はきよらかです。みなが寝静まった夜、わたしは薛(せつ)様のお屋敷から出発します。
(歌)時刻を知らせる鐘が、夜中のときをつげ、月は明るく風は静かです
きっと月の神も今は静かに物思いにふけっていることでしょう
その昔、わたしは雲の上の世界で神々を祭る仕事をしていましたが
失敗を犯して、追放され、薛(せつ)様のお屋敷に身を寄せました
いま、田承嗣という悪者が戦争をはじめようとしています
わたくし紅線は、敵の様子を偵察(ていさつ)するため
電光石火(でんこうせっか)の早業(はやわざ)で 敵の中枢(ちゅうすう)にしのびこみます」
紅線は、広い川にさしかかりますが、身も軽々と川を渡ります。
「(歌)わたしは大河を、空を飛ぶように身も軽々と渡ります
夜風が吹きわたり、うすい雲の夜空に、天(あま)の河(がわ)の星々(ほしぼし)がきらめいています
草原(そうげん)に星はまたたき、声ひとつ聞こえない静けさです
川のさざなみの奥でひっそりと眠る魚たちと龍が、うらやましい
わたしは女の身でありながら、冷たい夜露(よつゆ)に濡れつつ苦労しています
願わくば、国と国とが、領土をめぐる争いをやめ、仲良く貿易をして
国の民が平和に暮らせるように、わたしは祈ります
遠くに敵の陣地の明りが見えてきました
わたしはこのまま前に進み、様子をさぐりましょう」
(完)