火焼裴元慶(かしょうはいげんけい)Huo-shao-fei-yuan-qing
これから見ていただくのは、火焼裴元慶、火で裴元慶を焼き殺す、という芝居です。
|
辛文礼とその妻・東方氏(とうほうし)が登場し、自己紹介します。
二人はこれから、敵の要塞を攻めに行くのです。
二人は、家来たちをひきつれて、敵の要塞にむかい、出発します。
場面はかわって、こちらは敵の要塞の中の司令部です。
敵の要塞の指揮官は、名前を徐勣(じょせき)といいます。
徐勣は錚々(そうそう)たる仲間の武将たちと会合をひらいています。突然、手下が飛び込んできて、辛文礼とその妻・東方氏が攻めてきたことを報告します。
徐勣は、武将たちに、てきぱきと指示をくだし、敵を迎かえ撃つ布陣をしきます。
場面かわって、こちらは要塞の外。
辛文礼とその妻・東方氏が登場し、たちまちのうちに、敵をやぶってしまいます。
場面かわって、こちらは要塞に通じる道。
兵士たちと、馬ひきの若者が登場。そのあと、裴元慶が馬に乗って登場します。
京劇では、馬のきぐるみは使わず、俳優が手にする小道具や、俳優の演技によって、馬に乗っていることをあらわします。
この裴元慶という武将は、「錘」(すい)という武器の使い手です。徐勣の命令により、いま、食料物資を運んで、要塞に帰る途中です。
場面かわって、ふたたび要塞の中です。
指揮官の徐勣が登場します。
徐勣は、辛文礼とその妻・東方氏を迎え討った武将たちに、戦況をたずねます。武将たちは口々に「相手はとても強く、かないませんでした」と答えます。
徐勣は、戦闘では敵に勝てないことをさとります。そして部下に命じて、城門に「免戦牌」(めんせんはい)を立てさせます。この「免戦牌」というのは、戦闘禁止の立て札(ふだ)のことです。辛文礼夫婦と戦っても勝ち目はないので、徐勣は、ひたすら要塞の中に立てこもる持久戦(じきゅうせん)の道を選んだのです。
裴元慶が、食料を運んで、要塞に帰ってきました。
彼は、要塞の門に、味方に戦闘禁止を命ずる立て札がたっているのを見て、腹をたてます。
裴元慶はとうとう、自分の武器で、命令の立て札をこわしてしまいます。
裴元慶は同僚から、戦闘禁止の立て札が立てられたいきさつを告げられます。
同僚は、彼が勝手に指揮官の命令の立て札をこわしたので、そこに立って反省していなさい、とうながします。しかし裴元慶は、内心、不満たらたらです。
裴元慶は、指揮官の徐勣に面会します。
裴元慶は「自分にやらせてください。必ず辛文礼夫婦をやっつけて見せます」と言います。
徐勣は「そなたの腕前なら、必ず勝てるだろう。だが、勝ったあと、決して深追いしてはならぬ」と猪突猛進(ちょとつもうしん)をいましめます。
徐勣は、裴元慶の同僚に、彼を援護するよう命令します。
場面かわって、要塞の外です。
辛文礼が登場し、戦いをいどみます。
裴元慶は、「錘」(すい)という武器を使い、辛文礼を撃退します。
裴元慶は、逃げる辛文礼を追いかけます。女兵士たちや、辛文礼の妻・東方氏も出てきて戦いますが、裴元慶の敵ではなく、みな蹴散(けち)らされてしまいます。
裴元慶の援護の役目をおおせつかっていた同僚は、裴元慶が徐勣の言いつけにそむき、どんどん敵を深追いしてゆくので、驚きます。同僚は、徐勣に報告するため退場します。
場面かわって、辛文礼とその妻・東方氏が登場します。
辛文礼は、正攻法では裴元慶にとてもかなわぬことをさとり、作戦を立てます。
辛文礼は家来の中から、年よりの兵隊を呼びだし、硫黄(いおう)や硝石(しょうせき)などをこっそり山道に仕掛けておくように命令します。
場面かわって、裴元慶が登場します。
「指揮官には深追いするなと命令されたが、敵を目のまえにもと来た道を引き返したら、男がすたる。よし、このまま追いかけて、やつらをとらまえてやろう」
裴元慶の行く手に、年よりの兵隊があらわれ、命ごいをします。
裴元慶は、相手が年よりの兵隊なので、すっかり油断します。彼は、辛文礼夫婦の逃げた方向をたずねますが、年よりの兵隊は耳がとおくて、意味がわかりません。
裴元慶は、身ぶり手ぶりで、自分の意図を伝えます。ユーモラスな箇所です。
裴元慶は年よりの兵隊に、辛文礼をとらえてここまで連れてこい、と身ぶり手ぶりで伝えます。しかし、年よりの兵隊は「あなたはお強いのですから、ご自分でどうぞ。すぐにつかまえられますよ」と答えます。
裴元慶は少し考えたあと、結局、山のなかに入ってしまいます。
裴元慶が山に入ると、年よりの兵隊は、山に火をつけました。
裴元慶は火の中で逃げ道を切り開こうとしますが、最後は力つきて、焼け死んでしまいます。
要塞の武将たちが追いついてきます。しかし裴元慶はもう、焼け死んでいます。
武将たちは、裴元慶のなきがらをかついで、要塞にもどります。
辛文礼が登場し、三日間の休息のあと再び敵の要塞を攻めることを家来に告げます。
(完)
ここは、要塞に通じる道です。
裴元慶が馬に乗って登場します。
京劇では、馬のきぐるみは使わず、俳優が手にする小道具や、俳優の演技によって、馬に乗っていることをあらわします。
この裴元慶という武将は、「錘」(すい)という武器の使い手です。徐勣の命令により、いま、食料物資を運んで、要塞に帰る途中です。
場面かわって、ここは要塞の外。
辛文礼が登場し、戦いをいどみます。
「要塞にたてこもる反逆者ども。男なら外に出てきて、この俺と戦ってみろ」
裴元慶が登場します。
ふたりは互いに名乗りあったあと、戦います。
裴元慶は歌います。
「俺は今日、いくさの手柄をたててやる。
俺の名前を知らぬものはいない。
おまえもとっとと、降伏したほうが身のためだ」
と、このような内容の歌をうたったあと、裴元慶は辛文礼とその家来を次々に打ち負かしてしまいます。
裴元慶は勝利の歌をうたいます。
辛文礼は、正攻法では裴元慶にとてもかなわぬことをさとり、作戦を立てます。
辛文礼は家来の中から、年よりの兵隊を呼びだし、硫黄(いおう)や硝石(しょうせき)などをこっそり山道に仕掛けておくように命令します。
場面かわって、裴元慶が登場します。
「指揮官には深追いするなと命令されたが、敵を目のまえにもと来た道を引き返したら、男がすたる。よし、このまま追いかけて、やつらをとらまえてやろう」
裴元慶の行く手に、年よりの兵隊があらわれ、命ごいをします。
裴元慶は、相手が年よりの兵隊なので、すっかり油断します。彼は、辛文礼夫婦の逃げた方向をたずねますが、年よりの兵隊は耳がとおくて、意味がわかりません。
裴元慶は、身ぶり手ぶりで、自分の意図を伝えます。ユーモラスな箇所です。
裴元慶は年よりの兵隊に、辛文礼をとらえてここまで連れてこい、と身ぶり手ぶりで伝えます。しかし、年よりの兵隊は「あなたはお強いのですから、ご自分でどうぞ。すぐにつかまえられますよ」と答えます。
裴元慶は少し考えたあと、結局、山のなかに入ってしまいます。
裴元慶が山に入ると、年よりの兵隊は、山に火をつけました。
裴元慶は火の中で逃げ道を切り開こうとしますが、最後は力つきて、焼け死んでしまいます。
(完)