赤壁之戦・壮別(せきへきのたたかい・そうべつ)Zhuang-bie
これから見ていただくのは、壮別、という三国志の芝居です。
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ここは、呉の司令部です。
夜、人気(ひとけ)の無いときに、総司令官の周瑜と、老武将の黄蓋が、ふたりで秘密の作戦をたてます。
敵の曹操は、圧倒的な大軍をひきいて、船に乗って攻めてきていました。
まともに正面から戦っては、到底勝ち目はありません。
そこで、司令官の周瑜と、武将の黄蓋は「苦肉(くにく)の計(けい)」という作戦を立てました。まず、人々の目の前で周瑜がわざと黄蓋を打たせ、はずかしめます。黄蓋は「たとえ司令官といえども、自分より何十歳も年下の若僧に打たれるとは、我慢ならない」とわざと怒ります。
黄蓋は、呉の国を裏切るそぶりを見せ、曹操を油断させます。そして最後に、黄蓋が曹操のところに身を寄せるふりをして、曹操の船に火をつけて燃やしてしまう。・・・
ふたりがたてた「苦肉の計」という作戦は、このように危険で難しいものでした。敵の曹操をあざむくためには、まず、呉の味方をだまして、周瑜と黄蓋の仲が悪いように見せなければなりません。
こういう訳で、ふたりはいま、夜、人のいないところで会っているのです。
黄蓋は、澄んだ太い声で、国のために命をかける覚悟を、えんえんと歌います。この黄蓋のような役がらを、京劇では「浄(じょう)」と言います。黄蓋が顔に赤いくまどりをしているのは、彼が正義の心を持った熱血漢であることを表わします。
周瑜は、かんだかい裏声で、黄蓋を激励する歌をうたいます。この周瑜のような役がらを、京劇では「小生(しょうせい)」と言います。彼の声がかんだかいのは、血気さかんな若者であることを表わします。
人前では仲の悪いふりをしなければならぬふたりは、お互いを尊敬しあう気持と、国のため命をはる覚悟を歌い、酒をくみかわします。
(完)