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三国志について
明治大学教授 加藤徹 2013-9-28 京王プラザホテルにて
 
魏は天の時、呉は地の利、蜀は人の和。
 
(1)「三国志」の乱世 後漢の末から三国時代にかけての五十年間がメイン。
 184年 黄巾の乱。
 192年 董卓、殺害される。
 200年 官渡の戦い。曹操が袁紹に勝利。
 208年 赤壁の戦い。曹操が、孫権と劉備の連合軍に敗北。
 220年 後漢、滅亡。天下は、魏・呉・蜀の三国に分裂。
 234年 蜀の諸葛孔明、五丈原で陣没。
 239年 邪馬台国の女王・卑弥呼が、魏に遣使。
 280年 西晋が中国を再統一。
           cf.(夏)、殷、西周、春秋、戦国、秦、前漢、後漢、三国、・・・
(2)三つの「三国志」
 漢文の正史『三国志』・・・陳寿(233年-297年)の著。いわゆる「魏志倭人伝」も含む。
 古典小説『三国志演義』・・・14世紀ごろ成立か。作者は羅貫中あるいは施耐庵とも。
 アレンジ系(自由訳、翻案)・・・吉川英治『三国志』、横山光輝の漫画『三国志』など。
 
(3)ことわざや故事成語の宝庫
 白波(しらなみ)・・・山西省の白波谷にたてこもった黄巾賊の残党が語源。
 月旦(げったん)・・・許劭が曹操を「治世の能臣、乱世の奸雄」と評した話から。
 髀肉之嘆(ひにくのたん)・・・荊州の劉表に身を寄せた、不遇時代の劉備の故事から。
 三顧の礼・・・劉備が、20歳も年下の諸葛孔明のもとを三度も訪れた故事から。
 水魚の交わり・・・劉備が、自分と諸葛孔明の関係をたとえて。
 苦肉の策・・・「赤壁の戦い」直前の、周瑜と黄蓋の話から。
 危急存亡の秋(とき)・・・出典は諸葛孔明の「出師表(すいしのひょう)」。
 泣いて馬謖(ばしょく)を斬る・・・諸葛孔明が馬謖を罰した故事。
 死せる孔明、生ける仲達を走らす・・・諸葛孔明の最後の作戦から。
 
(4)三国志の魅力
 さまざまな男たち・・・「士」「侠」「漢」



 
    知    情   意

雅俗共賞
諸葛孔明
劉備
 


 張飛
 関羽
 趙雲
 
「肉声」を残した英雄たち・・・曹操の漢詩、諸葛孔明の名文「出師の表」など
(5)三国志と中華料理
 
☆諸葛菜
 諸葛孔明が蜀軍を率いて戦っていたころ、軍中では野菜が不足した。そこで現地の農民から「蔓菁」という野菜の栽培法を教わり、陣中で兵士に栽培させた。この野菜は育てやすく栄養もあった。庶民も「諸葛菜」と名付けて食べるようになった。この諸葛菜が現在のどの野菜に該当するかについては、カブ説やオオアラセイトウ説がある。
 
☆饅頭
 南蛮には人頭を祀る野蛮な風習があった。諸葛孔明が南蛮を征伐した際、人頭の代わりに、小麦粉をねった中に肉の具を包み込んだものを考案した。これが饅頭の起源であるという。出典は宋代の『事物紀原』が引く民間説話で、史実の可能性は薄い。
 
☆鶏肋
 鶏のあばら骨には食べるほどの肉はないが、捨てるには惜しい。転じて「役に立たないが、なかなか捨てるふんぎりがつかない物や事」を指す。出典は『後漢書』楊震伝附「楊修伝」、『三国志』魏書「武帝紀」注の『九州春秋』など。
 古典小説『三国志演義』では・・・劉備に対する漢中奪回作戦で苦戦していた曹操は、鶏湯を食べ、碗の中を見て無意識に「鶏肋、鶏肋…」と呟いた。部将の夏侯惇は、曹操の言葉の意味がわからぬまま、全軍に「鶏肋」と伝達した。楊修だけが意味を理解し、曹操の内心を夏侯惇に教えた。曹操がふと気づくと、自分の指図もないのに、全軍が撤退準備をはじめている。驚いた曹操は、部下から事情を聞いて激怒し、楊修を処刑した。その後、曹操は劉備に再び敗れ、撤退を決断し、楊修を殺したことを後悔した。
 
☆曹操が書いた書物『四時食制』
 佚。『太平御覧』や『初学記』で引用されている。曹操は魚が好物だったようで、内陸部の淡水魚だけでなく、「東海」や「北海」の魚にも言及されている。
 
☆曹操の「九?春酒法」
 曹操は、漢の献帝への上奏文の中で、酒の醸造法を説明したことがある。『斉民要術』巻七に「魏武帝上九?法奏曰『臣県故令九?春酒法、用麹三十斤、流水五石、 (以下略)』云々とある。紹興酒や日本酒と同様、麹(こうじ)を使った酒であった。
 
☆ 曹植が書いた上奏文「請祭先王表」
 曹操の息子である曹植が、父の死後、兄である皇帝(献帝)に提出した文章で、「求祭先王表」とも言う。『太平御覧』巻389の引用文の中に「先王喜鰒魚」(先王、鰒魚を喜ぶ)云々とある。先王(曹操)が好んだ「鰒魚」はアワビ説が有力だが、トコブシ説や、アワビの殻で作った薬という説もある。
(以上)