HOME > 授業教材集 > このページ

中国理解の三つの座標軸
――年代軸、地域軸、階層軸

2011.7.20 加藤徹 最新の更新 2011-9-14

形式知と暗黙知 形式知 explict knowledge ←→ 暗黙知 tacit knowledge

cf.弊サイト[中国人の知恵]
中国人の「知」の四大象限

(2)   形式知   (1)

内省的・虚学的← →外向的・実学的

(3)   暗黙知   (4)

(第1象限)外向的形式知・・・孫子、孔子、韓非子など
(第2象限)内省的形式知・・・玄奘、朱子など
(第3象限)内省的暗黙知・・・荘子、達磨など
(第4象限)外向的暗黙知・・・老子など
中国人の思考法の特徴と限界

中国論の二分法
 鳥の目、虫の目、魚の目。
cf.知魚楽
二つの流れ
龍と鳳(聞一多、陳舜臣)
 龍:老子的、融合、皇帝…
 鳳:孔子的、純粋、皇后…

貝と羊(加藤徹、他)
 貝:殷人的、老子的、沿海部、商業、財・貨・買・購…
 羊:周人的、孔子的、内陸部、道徳、義・美・祥・善…

無権力と権力(竹内実)
 無権力の流れ:孔子→毛沢東思想
 権力の流れ:始皇帝→毛沢東→鄧小平


三つの座標軸 数学の「3次元空間の直交座標系」。立体的な空間における位置を、正確に指し示す方法。
x軸(左右)、y軸(上下)、z軸(奥行)
cf.2次元レーダーと3次元レーダー(目標の距離・方位・仰角=高度の3つを同時に把握できる)、従来型の映画と「3D映画」

cf.松岡洋右(1880-1946)の失敗 1893-1902アメリカに留学し、キリスト教に入信。アメリカ人(の一部)を知りすぎたために、アメリカ全体の底力を見誤った。

人物、キャラクター、物語、芸術作品などの風格の分類
知(知性)情(感情)意(意志)
雅知雅情雅意
雅俗共賞共知共情共意
俗知俗情俗意
例:「三国志演義」のキャラクターづけ:劉備は共知、関羽は雅意(義の人)、張飛は俗情(酒好き)。諸葛孔明は雅知、趙雲は共意、馬超は俗意。

「庶民の良識」風刺まんがにおける庶民の良識とは「権力は悪い」「昔はよかった」の2種類のみである。(『サルでも描けるまんが教室』)
中国における「庶民の良識」は?

日本人の漠然とした世代分類…大正世代、昭和一桁、焼け跡世代(全共闘世代)、団塊の世代(ビートルズ世代)、しらけ世代(高度成長世代)、 新人類(バブル世代)、氷河期世代(団塊ジュニア、ポスト団塊ジュニア)、ゆとり世代……
中国人の漠然とした世代分類……民国世代、革命世代、17年世代、文革世代(紅衛兵世代)、傷痕世代、80後、90後、……

「同じ時代の空気を吸った者どうし」「今の若い者にはわからない、という疎外感をもつ者どうし」という連帯感。

李香蘭(山口淑子)、高倉健・中野良子、山口百恵、老師(蒼井そら)……

加藤徹『中国古典のスターたち』ラジオテキスト「まえがき」より

2011.6.30-9.23 NHKカルチャーラジオ「文学の世界」
(http://www.nhk.or.jp/r2bunka/ch04/1107.html)
NHKラジオ第2放送で放送中
本放送 木曜夜20:30-21:00 再放送 金曜朝10:00-10:30


 中国人とつきあう極意は「顔」です。抽象的な理屈を並べるより、ずばり具体的な「顔」を見せる。それに尽きます。
 筆者の勤務先は明治大学です。中国人との交流の場で、明治大学を説明するとき「明治大学は今年、創立百三十周年です」「キャンパスが三つあります」と言うと、たいてい「はあ、そうですか」という儀礼的な顔が帰ってくるだけです。
 もし相手が四十代以上の中国人なら、明治大学を印象づける魔法の言葉があります。
「明治大学の卒業生で、中国でも有名なのは、まあ、高倉健さんでしょうかねえ」
 わざと、さりげなく言う。すると、相手が庶民であれ、高級幹部であれ、それまでの儀礼的な雰囲気が一変し、中国人は目を爛々と輝かせてしゃべり出す。
「えっ、高倉健の母校は明治大学だったんですか! 知らずに失礼しました。私たちの世代は全員、健さんの主演する映画『追捕』(一九七六年の日本映画『君よ憤怒の河を渡れ』の中国語役題)を見てます。文化大革命が終わったあと、初めて見た外国映画でした。衝撃でした。健さんが演じた杜丘(中国語の発音はドゥーチウ)や、中野良子さんが演じた真由美(中国語ではジェンヨウメイ)は、本当にかっこよかった。私たちはみな健さんの髪型やジャンパーをまねたものです。当時の中国で最大の罵語は『おまえは横路敬二(ホンルー・ジンアル)だ』というものでした。横路敬二。わかりますか? 『追捕』で田中邦衛という役者が演じた悪役です。『おまえは横路敬二だ』と言われたら、必ず殴りあいの喧嘩になりました」云々と、機関銃のように話が止まらなくなります。
 こうして中国人の脳裏には「明治大学は、若いころの高倉健さんみたいな学生がいる大学なのだろう」という好印象がすりこまれる。そのあとだめ押しで、
「かつて周恩来総理も、東京に留学中、明治大学に通学されてました。今でも明治大学の隣には、当時、周総理が通ってた中華料理屋さんが営業してます」
と付け加えます。・・・・・・相手がもっと若い世代なら、明大卒の別の芸能人やスポーツ選手の名前を挙げる。するとやはり、その場の雰囲気は一変します。
 いつの時代でも、現実の世界には難しい問題があります。感情の行き違いもある。だが映画『追捕』の主人公・杜丘は、日本語でモリオカと読もうと、中国語でドゥーチウと読もうと、スター的なキャラクターです。彼の顔を思い出すだけで、人々の心はなごむ。  民衆がふりあおぐスター的なキャラクターは、時代と民衆の心を映す鏡です。心は目では見えません。が、キャラクターという具体的な「顔」を分析して話題にすることは、日本人と中国人が互いの心を理解するうえで、役に立つはずです。
 本講座では、中国のスター的なキャラクターの実例を、何人かとりあげます。  紙数の都合も考え、現代物ではなく古典的なキャラクターに限定し、日本の物語との比較を試みます。中国文学について予備知識のない人でも理解しやすい人物と物語を選びます。
 これから取り上げるキャラクターが最良、という訳ではありません。始皇帝や楊貴妃、岳飛と秦檜など、重要でありながら紹介を割愛したキャラクターも多い。しかし、中国人との会話の中で、本講座のスター的なキャラクターたちを話題にすれば、きっと話がはずむことでしょう。
cf.『老子』第四十七章「不出戸知天下、不闚牖見天道。其出彌遠、其知彌少。是以聖人、不行而知、不見而名、不爲而成。」
(コをいでずしてテンカをしり、まどよりうかがわずしてテンドウをみる。そのいずることいよいよとおければ、そのしることいよいよすくなし。 ここをもってセイジンは、ゆかずしてしり、みずしてあきらかにし、なさずしてなる。)

HOME > 授業教材集 > このページ