ESPIを用いたCFRP自転車フレームの非破壊評価 -JKA補助事業による研究の成果ー
スポーツ用のCFRP製自転車フレームの非破壊評価を目標としてESPIを用いたCFRPの非破壊評価方法の研究を実施した成果をここに公開します。この研究は引き続き進めています。

スペックル干渉法を用いたひずみ分布測定によるCFRP積層板の剛性低下評価

Evaluation of Stiffness Degradation on CFRP Laminate by Measuring Strain Distribution Using Speckle Interferometry.

有川秀一 遠藤祐輝

明治大学 理工学部 機械情報工学科

はじめに

CFRP(Carbon fiber reinforced plastics)の破壊
  • CFRP構造体は損傷後も形状回復しやすい。
  • 外見では損傷を判別し難い。
  • 微視的な破壊過程は複雑である。

層間剥離、繊維破断、樹脂破壊、繊維/樹脂界面剥離およびの相互作用。

CFRPが最終破壊に至る前に非破壊検査が必要。
CFRPの非破壊検査
  • X線CT
  • 超音波
  • 微小変位測定(振動、熱の負荷)
  • AE法
低コストで広範囲の非破壊検査が必要。
CFRPは損傷に伴いその剛性が変化する。
  • 新たな損傷を受けない程度の低負荷で剛性の変化を検出できなければ非破壊検査として有効である。
スペックル干渉法(ESPI)による微小ひずみ測定
  • 低負荷で生じるわずかなひずみから剛性の変化を検出できると考えられる。
  • ひずみの分布を得られることから剛性の変化した個所を特定しやすいと考えられる。

目的

CFRP積層板の剛性劣化を、スペックル干渉法を用い低負荷で生じる微小ひずみを測定することで非破壊的に評価する方法を提案する。
  • CFRP積層板に対して曲げ負荷と剛性およびAEの発生挙動の関係を調査。
  • 新たにCFRP積層板の剛性を低下させる前後の状態に対して大きなAEの発生しない低負荷で生じる微小ひずみ分布をスペックル干渉法により測定。
  • 剛性の変化に対応するひずみ分布の変化をどの程度評価できるか調査

実験方法1剛性とAEの関係

CFRP積層板に3点曲げ試験とAE測定を実施

  • 試験条件:0.1mm/minの変位制御変位および荷重を測定
  • プリプレグ:三菱レイヨンTR380G250
  • 繊維配向:0°,45°,-45°,90°,-45°,45°,0°両表面にクロス材(計9層)
  • 寸法:100mm,15mm,2mm

  • AE計測:利得40dbのアンプ、100kHZのハイパスフィルタ、測定レンジを2V、閾値を15mV、1波形当たりサンプリング間隔50nsで8192点保存

実験結果1剛性とAEの関係

荷重およびAEカウントの変異の関係

  • 3つの試験片で、破壊荷重やAEカウントの変化は同様の傾向を示した。
  • 変位1〜2mm、荷重200〜300NでAEが発生

  • AEカウントの上昇に伴い、剛性が低下。
  • 損傷過程における剛性の低下を確認。
剛性の低下率とAEカウントの関係

  • 剛性低下率とAEカウントは比例関係にある。
  • 比例係数は約3.5×10-4

実験方法2ESPIによる剛性評価

微小負荷で生じるひずみ分布をESPIにより測定

  • 損傷前後において、微小負荷に対応するひずみ分布を測定する。
  • 低負荷で剛性の変化を検出する。
  • クロス材の影響をうけたひずみ分布から剛性の変化を評価する。
装置

負荷条件
  • 剛性低下率の目標値は3.5%

実験結果2ESPIによる剛性評価

  • 局所最小二乗法によりひずみ分布を求める。

ESPIによるひずみ分布測定

  • クロス材の影響おを顕著に受けたひずみ分布が得られた。

→平均ひずみを比較

平均ひずみの評価

  • 感度よく剛性の低下に対応したひずみ増加を検出できた。
ひずみ分布の評価

  • 損傷前後のひずみ分布の差からひずみ増加率分布を評価
  • 複雑なひずみ場でも、剛性の低下した位置を評価可能。

まとめ

  • 本研究ではCFRP積層板の剛性劣化を、スペックル干渉法を用い低負荷で生じる微小ひずみを測定することで非破壊的に評価する方法を提案した。
  • 有効性を検討するために表面にクロス材層を有するCFRP積層板に対し3点曲げによる損傷を付与する前後での剛性低下を評価した。
  • 破壊荷重800Nに対して100Nまでの低荷重で生じる10-4オーダーの微小ひずみ分布から剛性の低下に起因するひずみの増加を十分に評価することができた。
  • クロス材のようなひずみ分布に影響を与える要因がある場合においても、その影響を受けないひずみの変化率を分布として評価することができた。
  • スペックル干渉法により微小ひずみを分布として測定することは、剛性低下の非破壊検査法として有効である。