1.イスラームについて
イスラームとはどういう意味ですか?

イスラームという言葉はアラビア語で「神に帰依すること」「すべてを(神に)ゆだねること」を意味します。そして、すべてを神にゆだねた人は自らを「ムスリム」と称します。

その「神」とはなんですか?

イスラームにおける神はアッラーのみです。アッラーという言葉自体がアラビア語で「神」を意味するので「アッラーの神」とは言いません。

ちなみに・・・

アッラーは唯一無二、永遠の絶対者で、全知全能の創造主です。99の名前(属性)を持つとされます。アッラーには「慈悲深い」「慈愛あまねく」優しい側面、そして「嫉妬深い」「怒れる」といった恐ろしい側面、さらには、正義を司る、最後の審判における裁定者、といった側面もあります。

イスラーム以前のアラビア社会はどういうところだったのですか?そしてそこにはどのような宗教があったのですか?

西暦4世紀以降のビザンツ帝国とペルシア帝国の対立により、アラビア半島は貴重な交易ルートとなり、メッカなどの都市が繁栄しました。そこではそれまでの道徳観が変わり「金こそが力」という考え方も強くなりました。社会的に崩壊の危機を感じさせる状態になっていたのです。

イスラームが預言者ムハンマドによって広められる前のアラビア半島では、各部族がそれぞれの神を偶像にかたどって崇拝する多神教・偶像崇拝の世界でした。イスラームの歴史観は、ムハンマド以前を無法・無秩序の時代と見なし「ジャーヒリーヤ(無明時代)」といいます。

ムハンマドとは誰?どういう人ですか?

彼は西暦7世紀のはじめごろにメッカでクライシュ族(当時のアラビア半島は部族社会でした)の一人として生まれました。

ちなみに・・・

マホメットというのは、ヨーロッパ人が聞き取って書き記した音です。アラビア語ではムハンマドというのが正規の呼び方です。

彼は幼い頃に親を亡くし、祖父や叔父のアブー・ターリブのもとで苦労して育ちました。長じてハディージャという年上で生活力のある女性と結婚し(逆タマ!)生活は楽になったものと思われます。とはいえ、彼は精神的に何か求めるところがあったようで、時々山に入って瞑想をすることにしていました。そして40歳の頃、ムハンマドに最初の「啓示」が下ったといいます。

啓示とは何ですか?

啓示というのは神が人間の無知蒙昧を啓き(ひらき)、啓発すべく、何か(大概は言葉やイメージ)を示すことです。

神が啓示として示した言葉を預かる人が預言者なのです。

ちなみに・・・

「預言者」は、予め未来の出来事を知って言葉にする「予言者」とは違うことに注意してください。

ムハンマド以外の預言者はいなかったのですか?

イスラームは最初の人間アーダム、ユダヤ教の預言者たち(アブラハム、ノア、モーゼなど)やヨセフ、イエスらを先行する預言者だとしています。ムハンマドはその最後で「預言の封印」ともよばれます。

啓示を受けたムハンマドはどのように布教したのですか?

最初はムハンマド自身もそれが啓示だとはわからなかったということで、恐ろしくなって逃げ帰ったそうです。しかし、啓示は繰り返し彼に下り、妻ハディージャもこれは啓示に違いない、と彼を励まして最初の信者になったとのこと。ここから布教がはじまりました。

ムハンマドの説く新秩序の確立は、当時商業利権を独占し、事実上の支配者だったクライシュ族の猛反対にあいました。彼らにしてみれば、指導的立場を失いたくはなかった、そしてムハンマドの説く偶像崇拝禁止も納得しがたかったのでしょう。彼らはムハンマドを殺害しようとし、さらには介入・買収・脅迫・ボイコットなどあらゆる手段でムハンマドたちの行動を妨害しました。

ムハンマドとその信者たちはどうやって、その迫害をのりこえたのですか?

彼らはやむなく西暦623年、ヤスリブの町に移住しました。そしてそこで最初の共同体(ウンマ)を形成したのです。その規模は数百人だったと考えられます。

ちなみに・・・

ムハンマドたちの移住は聖遷(ヒジュラ)とよばれ、その年がイスラーム暦の元年だとされます。

ムハンマドの生前中、イスラームはどれくらいの範囲まで広まったのですか?

ムハンマドは  年に亡くなりましたが、それまでに彼の教団は彼らを苦しめ続けたメッカの勢力と繰り返し戦い(聖戦・ジハード)メッカに凱旋しました。そして戦いと説得の結果、アラビア半島族長たちの大半がムハンマドに服したそうです。

ムハンマドには、キリスト教の新約聖書にあるような奇跡物語はないのですか?

ムハンマドはあくまでも人間として捉えられているので、イエスのような奇跡の話はほとんどありません。 奇跡物語に類する唯一といっても良い話としては、西暦621年7月27日の「夜の旅(ミゥラージュ)」があげられます。

それは・・・

彼が寝ていると大天使ガブリエルが彼を天馬に乗せてエルサレムへ連れて行き、そこで彼はアダム、ヨセフ、イエス、イサク、モーゼ、アブラハムら八人の預言者に会い、最後にムハンマド一人が昇天してアッラーに親しくお言葉を賜り、再び天馬に乗って寝室に戻った、というものです。

ムスリムはムハンマドを崇拝しているのではないのですか?

彼はアッラーに選ばれた人間だとはいえ、それ以上のものではありません。ムハンマドの絵や彫像を作って拝む行為などは、偶像崇拝を禁じるイスラームの考え方からいって、もってのほかです。


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