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ムスリムはシャリーアというイスラーム法を守って生きなくてはいけないそうですが、それは日本の法律と同じようなものなのですか? |
イスラームにおいては立法者は神のみ、とされており、ムスリムたちは神の命令(すなわち法)に従って生きることになっています。
ムスリムの社会生活のすべての領域、出生・結婚・死亡など個人の人生の節目に関してもイスラーム法は様々な規定を与えています。これは日本の憲法や民法などのような制定法とは趣を異にするものです。
ちなみに・・・
シャリーアとは「水場にいたる道」という意味で、「永遠の救いに至る道」という意味でイスラーム法のことをさすのです。
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ムスリムの行動規範としてコーランがくだされたのではなかったでしょうか? |
そうなのですが、ムハンマドの死後、イスラーム圏が急速に拡大してゆく中で、宗教上・生活上における様々な問題が出てきました。それらの対処法を、まず神の言葉であるコーランに求め、さらに預言者の言動であるスンナで補いました。
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スンナはどのようにして知ることができるのですか? |
ハディース(伝承)で知ることができるとされます。これは、8〜10世紀に多くの人々によって採集・記録された預言者の言行録です。
ハディースは伝達者たちの系譜を記したイスナードという部分と本文(マトン)から構成されます。
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口伝えの伝承をすべて信じたわけですか? |
いいえ、時代が下るにつれて偽造とおぼしきハディースも次々でまわるようになりました。そこで、イスナードの部分を検討して偽造ハディースを識別する学者たちが現れ、疑いのあるハディースを捨て、正しいハディースを集成しました。
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コーランとスンナがわかれば、すべてに対処できるのですか?
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いいえ、どちらにも載っていない事柄は多々あるわけで、それらに対処するには、まずムスリム共同体の合意(イジュマー)に基づくこと、次に合意に至っていない問題に対してはイスラーム法学者たち(ウラマー)が類推(キヤース)して対処案を出すことになっています。
つまりイスラーム法はウラマーが典拠(コーラン、ハディース)に基づいて解釈を施し、特定の規定を導き出すことで成り立っています。
こうしたイスラーム法体系は西暦9世紀に成立しました。
ちなみに・・・
ウラマーのことをイスラームの聖職者と説明することがあるようですが、イスラームでは元来専門の聖職者はいません。ウラマーはイスラーム法の専門家のことです。
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ウラマー(イスラーム法学者)は皆、同じ解釈をするのですか? |
どの方言を重視するかなどによって、いくつかの法学派が生まれました。
なお・・・
代表的な法学派としては、ハナフィー派、マーリキー派、シャーフィイー派、ハンバル派があげられます。
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イスラーム法の具体的な内容はどのようなものですか? |
内容は、儀礼的規範(イバーダート)と法的規範(ムアーマラート)に大別されます。
儀礼的規範は、宗教的行為、すなわち五行にかかわるもので、
法的規範は、婚姻、相続、契約、訴訟、非ムスリムの権利義務、刑罰、戦争など、イスラーム社会における相互の権利や義務に関わる規範で、私たちの考える民法や刑法に当たる事柄が規定されています。
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イスラーム法の施行はどうなっているのですか? |
基本的には、ムスリムの政権担当者がイスラーム法を施行する責任をになっています。(詳しくはイスラームの政治の章を参照)
歴史的には、支配者が政令や法令を発布していましたが、これらはイスラーム法に反してはならないという不文律があり、これによって諸政権はイスラーム法に従っている、と主張してきたのです。
また、司法に関してはカーディーと呼ばれる裁判官が判決を出したり、法律に関する文書を扱っていました。
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ムスリムはどのような刑罰を受けたのですか? |
イスラーム法では刑罰は、同害報復刑(キサース刑)、固定刑(ハッド刑)、裁量刑(タァズィール刑)に分けられます。
同害報復刑は、加害者が成人で知的に成熟しており、被害者と同等の身分である場合、被害者ないし相続人が同程度の報復をするというものです。(「目には目を!」)
被害者の同意を得れば金銭支払いで済ますこともあります。
固定刑は、姦通、中傷、飲酒をした場合は定められた回数のむち打ち、窃盗をした場合は手足の切断、追い剥ぎをした場合は死刑あるいは手足の切断あるいは追放、といった具合に明示されています。また、背教者は死刑です。
裁量刑は、イスラーム法に刑罰が定められていない犯罪に対して裁判官の裁量によって科す刑罰のことです。文書偽造、詐欺、恐喝、偽証などの場合に適用されています。
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