神道夢想流
明治大学体育同好会連合会杖道部

杖道って何?

現在の杖道は神道夢想流杖術という古武術を起源としています。このページでは、神道夢想流杖術の起こりから現代にいたるまでの歴史や、杖道の特徴など、諸々説明していきたいと思います。

神道夢想流杖術の始まり

 時は江戸時代時代初期…下総国香取(現千葉県香取郡多古町)に生まれた剣聖、夢想権之助勝吉は、何度も有名な剣客たちと戦い、一度も敗れたことがなかったそうです。ある例外を除いて。
 その例外とは、かの有名な剣客、宮本武蔵。権之助は、慶長10年(1606)頃の6月のある日、播州(現兵庫県南部)明石にて宮本武蔵と試合をし、押すことも退くこともできず敗れてしまいます。以来、権之助は、諸国を遍歴し武者修行をし、つらい修行の末、数年後筑前国(現福岡県筑紫郡)にいたりました。
 権之助は太宰府天満宮神域に連なる霊峰、宝満山に登り竈門(かまど)神社に37日祈願しました。すると、誠意が神様に届いたのでしょうか、37日目の満願の夜、夢の中に童子が現れ、「丸木をもって水月を知れ」と神託を授かります。
 その神託を胸に、権之助は太刀よりも1尺ほど長い、長さ4尺2寸1分(約128cm)、直径8分(約2.4cm)の樫の丸木を作り、これを武器として自らが剣で得た真理のみならず、槍・薙刀・体術等の特長を総合的に取り入れた武術を編み出しました。これが、神道夢想流杖術の始まりです。

杖術の発展

 杖術を編み出した後、権之助は黒田藩(福岡藩)に召抱えられ、杖術は藩外不出の捕手術として継承されていきましたが、明治時代、廃藩置県が行われると、杖術の藩外不出も必然的に解除され、全国的に広まっていきました。特に、昭和の始めごろ、福岡で杖術の師範を務めていた清水隆次師範が上京し、主に警察などに逮捕術として広まっていきました。

現在の杖道

 昭和30年に、多くの愛好家の手により日本杖道連盟が結成され、翌年、全日本剣道連盟に神道夢想流杖術の加盟が認められました。現在の杖道は、神道夢想流杖術を基盤に全日本剣道連盟制定杖道として選定されたものです。全日本剣道連盟は、剣道・居合道・杖道の三道の普及を目指しており、近年体術の一環として、杖道の普及率が高まりつつあります。

杖道の特徴

 杖道は、(じょう)と太刀と呼ばれる木刀による形武道です。剣道のように自由に技を掛け合うのではなく、決められた形に沿って技をかけていきます。
 杖道においての特徴は、やはり杖にあるといえます。杖はただの丸木ですので、刀のように刃もなければ鍔もない、柄もありません。そのため、杖のすべての部分を存分に使うことで、槍のように突くことも、薙刀のように払うことも、太刀のように切る(打つ)こともできます。形が単純であるゆえに、自在に変化する動きができるということです。また、左右両方の腕を同じように使うことができるため、相手の動きに柔軟に応じることができるということも特徴です。

参考文献:中嶋浅吉・神之田常盛(1982)『神道夢想流 杖道教範』清水隆次監修,日賀出版社.