3.1 地方政治家のホームヘージと調査方法

 管見の限り20016月現在で全国の地方議会の議員のホームページは741件ある(9)。なお、政党・政党支部や会派単位でホームページを開設している例があるが、そうしたページに設けられている所属議員のページは含めない。あくまで、政治家が個人として持っている場合に限る。このうちメールアドレスをホームページから確認できたもの711件を調査対象とし、メールによるアンケートを実行した。残りの30件はメールアドレスが確認できないものである。その中にはcgiプログラムにより来訪者が意見を政治家に投稿できるようにしているものが含まれる。つまり、来訪者からのメールによるアクセスを想定しない、もしくはそれを望まないものは殆どない。

 平成11年度自治省調べによると日本で地方議員と呼ばれる人(都道府県会議員、市会議員、町村会議員、区議)の総数は62,496名である(10)。地方政治家でホームページを持っているのは約八三名に一人、つまり1.2%に過ぎない。このような調査に統計科学的な意味合いを求めることはできない。従って、設問事項は設問から用意された回答を選択するという体裁ではなく、とにかくその実態を文章で記述してもらうという方式を選んだ。設問内容は以下の4テーマ・9項目であり(11)、第1が政治活動全般に関わるもので@インターネットによる情報収集の実際、Aインターネットによる政治活動の変化である。第2が情報倫理に関わる問題として、B現実社会とネットワーク空間でのギャップについて、Cインターネット利用で困惑したこと、D匿名についてである。第3が選挙とインターネットであり、Eインターネットは支持の拡大になるか、F公職選挙法によるインターネット規制について、G選挙区外への情報発信についてである。そして最後にHインターネットで政治・社会は変わるか、という間口の広い設問を設けた。この論文では、紙幅から第1のテーマについての分析報告に限らせて頂く。残りは他の何らかの機会に託すこととしたい。

 711件のうち138人の議員(都道府県会議員25名、市会議員87名、区議9名、町村議17)から回答が寄せられた。711件といっても内容は千差万別であり、中には選挙ポスター的な内容以上のものを含まないようなものもある。しかし、返信してきた政治家というのはインターネットによる情報発信にそれなりに、あるいはかなり関心があり、それ故、このような調査結果に強い関心を持つ人々である。実際、メールによるアンケートとしては回答率が非常に高い(筆者の経験値となるが、通常は23%)。

 回答者、136名というのは日本の地方議員のわずか0.2%に過ぎないが、むしろ、この「先駆者」集団から多様な見解を引き出し、今後、さらに浸透・拡大するであろう政治の世界におけるインターネット利用に予見的、先行的な予備調査となることに期待したい。

 また強いてその政治的価値を指摘するとすれば選挙区外への情報発信は町村会から市議会、市議会から都道府県議会、さらに都道府県から国会へと、彼らの動機の如何にかかわらず何らかの上昇をもたらす可能性がある、ということが言えるだろう。