幾何学セミナー

場所:明治大学生田キャンパス
世話係:古賀勇,吉田尚彦


Last updated 3 February 2020

2月17日(月)16:30 - 18:00, 第二校舎6号館6718

山下 真由子 氏(京都大学)

幾何学的量子化におけるスペクトル収束と変形量子化

概要:  シンプレクティック多様体X上の関数のなすPoisson代数の表現を構成せよ, というのが量子化の基本的な問題である. 幾何学的量子化では, X上に前量子化束を与え, さらにTXの偏極を与えることで, 表現空間となるべき量子ヒルベルト空間の列{H_k}_kを得る. 偏極がKahler構造で与えられている場合はH_kはL^kの正則切断の空間, Lagrangian ファイバー束(実偏極)で与えられている場合はk-Bohr-Sommerfeld 点でのL^kの平行切断のなす空間となる.
 本講演では, Kahler構造が実偏極に退化するときに, この量子ヒルベルト空間がどのようにふるまうか, という問題に対して, ラプラシアンのスペクトル収束の観点からのアプローチ(服部広大氏(慶応大学)との共同研究)を解説する. d bar ラプラシアンのスペクトルが, そのような退化によって, k-Bohr-Sommerfeld点の個数だけ調和振動子を直和したもののスペクトルに収束することを示す. 正則切断の空間がd barラプラシアンの0固有空間であることに注意すると, ここから特に量子ヒルベルト空間の収束が従う.
 さらに時間が許せば, 現在進行中の研究である, 実偏極から得られる量子ヒルベルト空間の列{H_k}_kを用いた, (strictな)変形量子化の新しい構成方法を解説する. さらにKahler偏極によるBerezin-Toeplitz 変形量子化との関連についても触れる予定である.


5月13日(月)16:30 - 18:00, 第二校舎6号館6706

服部 広大 氏(慶應義塾大学)

幾何学的量子化と測度付きグロモフ・ハウスドルフ収束について

概要: シンプレクティック多様体上に,シンプレクティック形式を曲率とするようなエルミート接続付きエルミート直線束が与えられた状況で,その直線束上の「良い」切断の空間を定めるための2通りの方法を考える.一つは,シンプレクティック形式と整合する複素構造を取って正則切断の空間を考えることであり,もう一つは,シンプレクティック多様体にラグランジュファイブレーションが入っているとしてファイバー方向に平行な切断の空間を考えることである.多くの閉シンプレクティック多様体の例では,両者の空間の次元が一致し,前者のタイプの空間の極限として後者の空間が現れるという現象が観測されているが,その根源的な理由は分かっていない.本講演では,測度距離空間上のラプラシアンに関する幾何解析の結果を応用することによって,上記の2種類の空間の関連を説明し,この問題への新たなアプローチを提供する.


2018年度の幾何セミナーの記録