幾何学セミナー

場所:明治大学生田キャンパス
世話係:吉田尚彦


Last updated 19 November 2018

12月7日(金)16:00 - 17:30, 第二校舎6号館6715

橋本 義規 氏(東京工業大学)

J-流の微分幾何と代数幾何

概要: 複素幾何学における重要な定理として,モーメント写像の零点と代数幾何学的安定性が同値である,というKempf-Ness定理があり,定スカラー曲率ケーラー計量の存在と関連して近年活発な研究が行われている.DonaldsonはJ-方程式と呼ばれる非線形偏微分方程式が無限次元モーメント写像の零点として定式化できることを示し,これに付随する勾配流としてJ-流を定義した.J-方程式に関してKempf-Ness型定理が成り立つことが予想されており,非線形偏微分方程式の解の存在という微分幾何的条件と安定性という代数幾何学的条件の関連について多くの研究が行われている.本講演ではJ-流及びJ-方程式について簡単なサーベイを行なった後,J-方程式の「有限次元近似」においては微分幾何的条件と代数幾何的条件が同値であることを紹介する.Julien Keller氏との共同研究である.

11月9日(金)16:00 - 17:30, 第二校舎6号館6715

本多 正平 氏(東北大学)

Ricci曲率とL^2空間へのほぼ等長埋め込み

概要: Nashの埋め込み定理とは「任意の閉Riemann多様体が十分大きな次元のEuclid空間に等長的に埋め込める」という主張をさす。この主張は等長という強い性質を導いているが、その写像は自然なものではない。 一方で、熱核を用いてL^2空間に自然にほぼ等長的に埋め込むことができることがBerard-Besson-Gallotによって知られており、さらにRicci曲率と単射半径評価があれば有限次元にquantitativeに埋め込めることがPortegiesによって知られている。この考察は多様体学習と関係があり、応用上もとても重要である。 本講演では単射半径評価を体積評価に置き換えるとどうなるかについて考える。そのための道具は測度距離空間上の幾何解析であり、多様体ですらない特異空間を扱い、sharpな結果を導く。 これらはLuigi Ambrosio, David Tewodrose, Jacobus W. Portegies氏達との共同研究に基づく。

7月16日(月)16:00 - 17:30, 第二校舎6号館6718

金沢 篤 氏(京都大学)

DHT予想とLagrangeファイブレーション

概要: 本講演ではDoran-Harder-Thompson(DHT)予想と関連する話題について議論する。DHT予想とは、Calabi-Yau多様体XがFano多様体の和Y_1 \cup Y_2にTyurin退化する場合にXのミラー対称性とY_1,Y_2のLandau-Ginzburg模型を関係付ける予想である。これは小平次元の異なる代数多様体のミラー対称性の関係を一番基本的な場合に明らかにする予想である。Calabi-Yau多様体のTyurin退化は実3次元多様体のHeegaard分解の複素類似であり、今回説明する(楕円曲線とAbel曲面の場合の)証明はこの類似とSYZミラー対称性のアイデアを用いるものである。また証明においてテータ関数が現れるが、これについて予想される幾何学的量子化との関係についても説明したい。

5月21日(月)16:00 -17:30, 第二校舎6号館6718

小林 和志 氏(千葉大学)

高次元複素トーラス上の射影的平坦束の成す完全三角系列の幾何構造

概要: ホモロジー的ミラー対称性により, 自明な特殊Lagrangeトーラスファイバー束 T^{2n} ---> T^n のアファインLagrange(多重)切断と, ミラー双対なn次元複素トーラス上の正則ベクトル束が対応する. 本講演では, 複素トーラス上の射影的平坦束の保形因子の分類結果を用いることによってこれらの正則ベクトル束がある種の射影的平坦束と1対1に対応することを証明し, さらに, それらの射影的平坦束の成す完全三角系列に対して, 対応するアファインLagrange部分多様体同士の共通部分の次元に注目した幾何学的解釈を与える.


5月14日(月)16:00 -17:30, 第二校舎6号館6718

古賀 勇 氏(明治大学)

複素射影直線から複素グラスマン多様体への調和写像について

概要: コンパクトケーラー多様体から複素グラスマン多様体への滑らかな写像のホモトピー類はコンパクト ケーラー多様体上のベクトル束の同型類と対応することが知られている.複素グラスマン多様体に標準計量を固定した時,対応するベクトル束にエルミート計量とエルミート接続が誘導されるが,写像を変形させ ると一般にこれらも変わってしまう.また写像が調和であるとき,対応するベクトル束には正則構造が誘導される.

これらの事実を利用して,エルミート接続が与えられた正則ベクトル束を一つ固定し,それに対応する 種々の写像を分類しようというのが講演者の研究テーマの一つである.本講演では,特に複素射影直線から階数 2 の複素グラスマン多様体への 2 次ユニタリ群の作用を保つような調和写像の分類について最近の進展を紹介する.

この講演で紹介する結果は長友康行氏との共同研究によるものである.


2017年度の幾何セミナーの記録