明治非線型数理セミナー

ホームページを移転しました ⇒ こちら


2011年度までRDSセミナーとして開催してきたセミナーを,2012年度は明治非線型数理セミナー(キックオフイヤー)として開催しました.2013年4月に総合数理学部現象数理学科が開設され,ここに,新たな気持ちで明治非線型数理セミナーをスタートしていきます.理工学部数学科と2学科協働で新たな非線型数理のあり方を模索しながら情報発信していく所存です.場所は,中野キャンパスと生田キャンパスの両方を使用予定です.

生田キャンパスへのアクセス (Access to Ikuta campus) / Ikuta campus map
中野キャンパスへのアクセス (Access to Nakano campus) / Nakano campus map

2018.11.12 (月) 15:30〜17:50@中野キャンパス6階研究セミナー室3
2018年度第8-9回明治非線型数理セミナー
講演者1: 森龍之介 (明治大学) 15:30〜16:30
『Prey-predator型反応拡散方程式のコンパクトな台をもつ初期値に対する解の長時間挙動について』
概要:Prey-predator型方程式とは,自然界における捕食-被食関係にある2種の生物群の個体数密度の時間発展を数学的に記述するモデルである. 本講演では,被食者の分布域の拡大速度(広がり速度)が捕食者の広がり速度よりも早い場合を考察する.そして, 捕食者の存在が被食者の広がり速度や分布域の形状に影響するのか,あるいは,しないのかを解析する.
講演者2: 中島主恵 (東京海洋大学) 16:50〜17:50
『ある遺伝子頻度のモデルの解の一意性について』
概要:この講演では1976年に Nagylaki により提案された,2つの対立遺伝子の遺伝子頻度を記述するモデルを考える. このモデルはある反応拡散方程式で表され,その非線形項は環境変数 g(x) とともに符号を変える. この方程式に関し, Nagylaki と Lou は1992年に次のような予想をした.
  「環境変数 g(x) の領域Ωの上の積分は非負であるとする.拡散係数微小の条件の下,非定数定常解は一意である.」
講演者はN(2016,2018)でこの予想を部分的に証明したが, 最近,g(x) が極端に非対称な形状であるときには必ずしも解は一意でないことがわかった.本講演では一意性の成り立たない例について報告する.


2018.10.22 (月) 16:30〜17:30@中野キャンパス6階研究セミナー室1
2018年度第7回明治非線型数理セミナー
講演者: Simon Eberle (University of Duisburg-Essen)
『Front blocking versus propagation in the presence of drift term varying in the direction of propagation』
概要:In this talk we derive quantitative conditions under which a compactly supported drift term depending on the direction of propagation blocks a traveling wave solution or lets it pass almost unchanged. We give explicit conditions on the drift term for blocking as well as almost unchanged propagation in one spacial dimension.
2018.8.7 (火) 17:00〜18:30@中野キャンパス6階研究セミナー室3
2018年度第6回明治非線型数理セミナー
講演者: Frank Merle (University of Cergy-Pontoise / IHES)
『Inelasticity of soliton collisions for the 5D energy critical wave equation』
概要:For the focusing energy critical wave equation in 5D, we construct a solution showing the inelastic nature of the collision of two solitons for any choice of sign, speed, scaling and translation parameters, except the special case of two solitons of same scaling and opposite signs. Beyond its own interest as one of the first rigorous studies of the collision of solitons for a non-integrable model, the case of the quartic gKdV equation being partially treated, this result can be seen as part of a wider program aiming at establishing the soliton resolution conjecture for the critical wave equation. This conjecture has already been established in the 3D radial case and in the general case in 3, 4 and 5D along a sequence of time.
2018.7.26 (木) 17:00〜19:00@生田キャンパスA棟A301室
2018年度第4-5回明治非線型数理セミナー
講演者1: 牛越惠理佳 (横浜国立大学) 17:00〜18:00
『Hadamard variational formula for the multiple eigenvalue of the Stokes equations with friction slip boundary conditions』
概要:楕円型方程式のグリーン関数や固有値は,その領域の幾何学的情報によって特徴付けされることが知られており,これらの領域依存性の解析は、理論的側面からだけではなく実用的側面からも有意義といえる.本講演においては, 流体力学の基礎方程式として知られているストークス方程式の領域摂動問題について考察する. 具体的には,滑らかな有界領域の正則な摂動に対し, フリクション付スリップ境界条件を課したストークス方程式の多重度をもった固有値がどのように変化をするか詳細に解析する. なお本講演の内容は,北海道大学の神保秀一氏との共同研究に基づく.
講演者2: 田中良巳 (横浜国立大学) 18:00〜19:00
『ソフトマターの破壊現象―非線形科学の観点から―』
概要:固体の破壊は,き裂の成長によって生じる.ガラスなどの,微小変形領域から破壊する物質でさえ, き裂の先端では,結合の切断に到る非平衡性・非線形性の強い変形過程が生じており,き裂伸展挙動の実験的制御や数理的解析は一筋縄ではいかない. ソフトマテリアルと総称されるような物質群(例えば,各種の高分子)では,巨視的スケールの振舞すら線形弾性からは逸脱し, また,き裂先端でのプロセスにも様々な緩和効果が関与してくる. セミナーでは, (1) まず破壊学の基礎概念を概観し; (2) 非線形科学の観点からなされた興味深い破壊実験の例を紹介した後; (3) 我々が取り組んでいるゲル(溶媒でぶよぶよになったゴム)や紙といったソフトマテリアル系の破壊に関する実験結果について報告する.
2018.5.8 (火) 17:10〜19:10@生田キャンパスA棟A303
2018年度第1-3回明治非線型数理セミナー
講演者1: 川上翔矢 (埼玉大学) 17:10~17:40
『O'Haraエネルギーの離散化とその収束について』
概要:O'Haraエネルギーは結び目のエネルギーのひとつで,結び目の均整度を測るために考案された.しかし,正円を除いてエネルギー値を計算することが困難であるため,数値計算が必須であると考えられる.実際, O'Haraエネルギーの特別な場合であるメビウス・エネルギーについては,多角形により定義される離散エネルギー汎関数が考案され,その収束性が議論された. 本講演では一般のO’Haraエネルギーの離散化を考案し,その収束性を得ることができたので,その結果を報告する.
講演者2: 中村恒平 (埼玉大学) 17:55~18:25
『平面閉曲線に対する等周比を用いた補間不等式とその応用』
概要:平面閉曲線に対するgeometric flowにおいては曲率やその導関数を評価することにより解の漸近解析を行うことができる. そのため,flowの形に依らない曲率の評価が得られれば,多くのflowの漸近解析に応用できることが期待される. 今回,回転数1の平面閉曲線に対して,曲率の$H^k$ノルムを等周比を用いて評価する補間不等式を示すことが出来たので,これについて紹介する. また具体的なflowの漸近解析に応用して得られた結果を紹介する.本研究は長澤壯之先生(埼玉大学)との共同研究である.
講演者3: 伊藤涼 (東京大学) 18:40~19:10
『進行波の最小速度のYoung測度による解析』
概要:本講演では,KPP型の非線形項を持つ反応拡散方程式の進行波の速度に関する変分問題を考察する.この方程式は,生態学,集団遺伝学,疫学など様々な分野で空間的な伝播を伴う現象を記述する数理モデルとして使われている. 本講演では,特に生態学モデル,つまり外来生物が侵入・拡散する現象に焦点をあてる.また,空間次元は1とし,方程式の係数は空間変数に関して周期的であるとする. これは,環境が空間周期的に変化することを表している.このような状況では,この方程式は,波面の形状を周期的に変化させながら進む進行波と呼ばれるタイプの解を持つ. 非線形項はKPP型,したがって単安定型であるので,この場合には相異なる平均速度の進行波が無数に存在し,それらの進行波の平均の速度のうちで最小のもの(以下,これを「最小速度」と呼ぶ)が存在することが知られている. さらに最近の研究により,この最小速度はコンパクトな台を持つ非負の初期値から出発した解の波面の広がり速度(spreading speed)に一致することがわかっている. 生態学モデルの観点からは,波面の広がり速度は外来生物の侵入速度を表すと解釈できる.さらに非線形項がKPP型であるので,この広がり速度(=最小速度)は外来生物の内的自然増加率を係数とするある線形問題の情報だけから完全に決定されることが知られている. (いわゆる“linear determinacy”) 本講演では, 内的自然増加率が光量や熱量などのコントロールできる環境パラメータに非線形に依存する場合について考え,環境パラメータの平均値が一定という制約条件の下で,広がり速度を最小化する環境の配置を決定する問題を考察する. 環境パラメータの空間的配置を決めるごとに広がり速度が定まるので,広がり速度は一種の(非線形)汎関数とみなすことができる. 従って,この汎関数を,与えられた制約条件の下で最小化したり最大化したりする変分問題を考えることができる. しかしこの汎関数は一般には非凸であるので最小化関数が存在しない場合が起こり得ることが予測される. 本講演では,解が存在しない場合を含め,汎関数の最小化列の様子をYoung測度の理論を使って解析する手法を紹介し,最小化関数が存在するための必要十分条件について論じる.

前年度までの明治非線型数理セミナー


このセミナーは,
・科研費基盤研究(B)「反応拡散系および自由境界問題の解のパターンダイナミクスの解明」(研究代表者:二宮広和)
・科研費基盤研究(B)「不整脈および除細動のための数学的基盤整備」(研究代表者:二宮広和)
・科研費基盤研究(B)「均質化法と連鎖反応理論による電気化学触媒反応の数理モデル構築」(研究代表者:小川知之)
・科研費基盤研究(B)「雪氷現象に現れる移動境界問題の数理解析」(研究代表者:矢崎成俊)
の補助を受けています.


組織委員
 名和範人,坂元孝志,佐々木多希子,渡辺浩,矢崎成俊 (明治大学理工学部数学科)
 Elliott Ginder,二宮広和,小川知之 (明治大学総合数理学部現象数理学科)
 俣野博 (明治大学先端数理科学インスティテュート)