東京パチンコ・カード(パッキーカード)変造事件第一審判決


東京地裁平成5年(わ)第805号有価証券変造幇助,同交付幇助(変更後の訴因有価証券変造,同交付)被告事件


控訴審 : 東京パチンコ・カード(パッキーカード)変造事件控訴審判決


判        決

<被告人氏名等省略:以下,関係者名等は仮名>

主        文

被告人を懲役2年6月に処する。

未決勾留日数中360日を右刑に算入する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理        由

(罪となるべき事実)

 被告人は,Aとの間で,平成3年10月ころ,N株式会社作成の有価証券であるパッキーカードについて,行使の目的をもってこれを変造した上,手数料を得てこれを他者に交付する旨の共謀をし,同年11月中旬以降は,右他者の中に,北海道から上京して来るB,D及びEも含まれることになった。右被告人との間の共謀に基づいて,Aにおいて,行使の目的をもって,平成4年3月19日,東京都豊島区<番地略>Y125号室において,パッキーカード48枚につき,その残使用可能度数をほしいままに磁気情報改ざん用機械1台を用いて正規の度数以上に改ざんしてこれを変造した上,同日,同区<番地略>池袋Wビル1階喫茶店「Z」前路上において,右変造にかかるパッキーカード48枚をその情を知るEに交付した。

(証拠の標目)

<省  略>

(事実認定の補足説明)

 被告人は,本件犯行への関与について,捜査,公判を通じて全面的にこれを否認し,弁護人も被告人は本件と無関係である旨主張しているので,事実認定について補足して説明する。

一 前掲関係各証拠によれば,以下の事実が争いなく認められる。

 Aは,平成4年3月19日,Eと池袋西口付近で待ち合わせをして,Eから残使用可能度数14度まで使用済みの5000円券パッキーカード51枚を受け取った。その後,Aは,判示の『Y』125号室において,磁気情報改ざん用機械(以下,「改ざん用機械」という。)を用いて,右パッキーカードの磁気情報部分の度数記録の改ざん作業を行った。その方法は,改ざん用機械のカード出入口にパッキーカードを挿入すると,いったんカード全体が機械の中に入り,ここで磁気情報部分の残度数が29度に改ざんされ,間もなく右出入口からカードが排出されるというものであった。

 Aは,同日,再びEに連絡を入れて待ち合わせをし,判示の喫茶店Z前路上において,Eに対して,改ざん作業が終わった右パッキーカード51枚を手渡した。このうち,48枚について,右のとおりの磁気記録の改ざんが行われていた。

二 被告人が本件犯行に関与していたか否かについて検討する。

1 証人Aに対する当裁判所の尋問調書によれば,Aは,この点について,おおむね以下のとおり証言している。

「被告人とは被告人が福井に在住中から交際があったが,被告人の上京後連絡を取ったら,上京すれば1日3万円くらいになる仕事があると言われ,平成3年9月下旬ころに上京した。上京後被告人と会った際,被告人から1万円券パッキーカード(100度数)について,70度まで使ったものを95度に改ざんすること,改ざんしたパッキーカードをパチンコ店でカード用玉貸機に挿入して使用すること,その際,エラーコードC14表示が出た場合には,店員に頼んでカードを返してもらうようにすることなどについて説明を受けた。
 それから1週間くらいは右のように改ざんされた1万円券パッキーカードを使ってパチンコをしていたが,エラーコードC13が何度も出るようになったので,被告人の指示で,いったん使用を見合わせることになった。その後,被告人から,今度は5000円券パッキーカード(50度数)を利用することとし,これを10度まで使用して29度に改ざんするという説明を受け,パチンコ店で使用を開始した。
 このころまでは,使用したパッキーカードを被告人に渡して改ざんしてもらっていたが,その後同年10月に入ってからは,被告人から改ざん用機械で改ざんする方法を教わって,自分自身で改ざん行為を行うようになった。そして,このころ,自分はウィークリーマンションから,東武練馬駅付近の被告人のマンション『X』101号室に移っていたが,そこに,自分と同じように居住して,改ざんしたパッキーカードを使ってパチンコをしていた者達に対しても,パッキーカードを改ざんして,これを交付し,1枚につき300円の手数料をもらうように被告人から指示された。この手数料のうち60円分は自分に,240円分は被告人に渡すという約束になっていた。
 改ざん用機械は,当初は『X』101号室に置いてあったが,その後すぐに『Y』125号室に移された。その機械は,しばしば改ざん能力が衰えて修理が必要になったが,そのようなときは,被告人と連絡を取って修理を頼み,2,3日後くらいには再び使用に耐えるものとして戻ってきていた。
 11月の初旬か中旬に,池袋駅東口で被告人からBを紹介されたが,その際被告人は,Bに対して自分のことをCと紹介して,これからこのCという人間がカードの受け渡しをするからという話をした。これ以降,自分がB,D,Eのグループに渡すカードの改ざんを担当するようになり,本件犯行当日にもEと改ざんカードの授受をした。
 B,D,Eのグループからの手数料についても,1枚300円で,同じ割合で自分と被告人とで分配することになっていたが,最初のころは支払いの請求を待つように被告人に言われ,平成4年2月から手数料を受け取るようになった。」

2 Aの右証言内容は,パッキーカードの改ざん方法,自ら改ざんされたカードを使用した状況,Eらへの交付の状況,手数料等について細部にわたって明確かつ詳細で,一貫性,合理性が認められるとともに,A自身,右証言当時すでに本件犯行に関して有罪判決を受けてこれが確定しており,ことさら虚偽の証言をするべき事情は認められないことに照らせば,その証言の信用性は高度のものがあると認められる。

3 次に,証人Bに対する当裁判所の尋問調書によれば,Bは,被告人の本件犯行への関与につきおおむね以下のように証言している。

「被告人とは平成2年1月に知り合ったが,同3年7月ころに,被告人から,パッキーカードの変造機械が製作できるのではないかというアイデアを聞いていた。そして,同年11月に,被告人の知り合いであると名乗る人から連絡を受けて北海道から上京し,その人から,パッキーカードを10度から29度まで改ざんするという説明を受けた。その後北海道に戻り,DやEに対してパッキーカードの改ざんの話を伝え,同年11月14日に3人で上京した。同日,ロイヤルホテルで被告人及びAと会い,被告人から『C(Aの偽名)という人間が今後全部のことを取り仕切ります。』と,Aを紹介され,以後Aにカードの改ざんをしてもらっていた。改ざん手数料については,平成4年1月から,1枚につき300円をAに支払っていた。」

 また,Eも検察官に対する各供述調書において,被告人の犯行への関与について,次のとおり供述している。

「平成3年11月4日ころ,Bから,知り合いの被告人がパッキーカードを改ざんする機械を作って持っているので,改ざんしたパッキーカードを使ってもうけようという話があり,B,Dとともに北海道から同月14日ころ上京した。同月15日ころ,池袋のロイヤルホテルで被告人及びAと会い,被告人から注意事項として,『改造したパッキーカードはもともとは本物のカードだから,店員に何か言われても堂々と荒っぽく自信をもっていれば,店員がカードを見ても絶対にばれることはない。』などと言われ,『カードの関係はこのCにやらせるから。』とAを紹介された。それ以降,4回の上京の都度,Aから1枚につき手数料300円を支払った上で,改ざんパッキーカードを入手してはパチンコをし,使い終わるとまた改ざんしてもらって次の日に使うということを繰り返していた。今回の4回の上京において,被告人とは4回会っている。その中には,Aとのカードの受け渡しのときに被告人が一緒に来ていたことや,Aに連絡が取れないとき,被告人に連絡してカードを改ざんして渡してもらったこともある。このようにして,逮捕された前日の平成4年3月19日にもAから改ざんパッキーカードの交付を受けていた。」

 なお,証人Dに対する当裁判所の尋問調書によれば,Dは,本件改ざん用機械を作ったのはAであり,被告人は関係していないと思っていたとの趣旨の証言をしているが,右A,B及びEの各証言及び供述に照らせば,右証言はにわかに信用できない。そして,Dも,B及びEと一緒に上京して改ざんされたパッキーカードを使用してパチンコをしていたこと,平成3年11月中旬に最初に上京した際,池袋のロイヤルホテルで被告人とAと会い,パッキーカードの改ざん等について説明を受けたことなどについては,右A,B及びEと符合する証言をしているのである。

 このように,右各証言及び供述は,被告人が本件犯行の共謀者であることを裏付けるものであるとともに,被告人が中心となってパッキーカードの変造を企て,Aが実際に変造行為を担当し,変造パッキーカードをBらのグループに手数料を得て交付し,Bらのグループがこれを用いて連日のようにパチンコをしていたということ及びその一連の行為の一環として本件犯行が敢行されたということにおいて,Aの証言と符合し,相互にその信用性を高め合っている。

 そして,確かに弁護人の主張するとおり,右各証言及び供述の細部の点については,互いに相反し,あるいは矛盾する点がないわけではないが,そのうち,被告人の関与に関するDの供述部分が信用できないことは先にも述べたとおりであり,その余についても,その相違点の存在が,被告人が本件に関与していたことの認定の妨げになるとは到底認められない。

1 そして,さらに,本件パッキーカードの変造の背景事情として,第5回及び第7回各公判調書中の証人Fの供述部分,第6回公判調書中の証人Hの供述部分,同人の検察官に対する供述調書,Gの当公判廷における供述等を総合すれば,少なくとも以下の事実が認められる。

(一) Gは,平成3年4月か5月ころ,被告人からパッキーカードの改ざんの計画を聞き,同年7月初めころから同年9月末ころまでにかけて,多額の資金援助を行ったこと

(二) Hも,平成3年6月ころ,被告人からパッキーカードの度数を改ざんする機械を製作するという話を打ち明けられ,同年7月から同4年3月までの間,多数回にわたり合計約800万円を被告人の銀行口座に振り込んだこと。

(三) Fは,平成3年7月か8月ころ,被告人から,パッキーカードの変造機械を製作できないかと依頼され,同年8月末ころにその開発を引き受け,1万円券パッキーカード改ざん用機械を完成させた後,さらに5000円券パッキーカード改ざん用機械を完成させて被告人に引き渡したこと

2 以上の事実からすると,被告人の発案でパッキーカードの改ざん用機械の開発が行われ,その開発資金も被告人の依頼で調達された事実が認められ,被告人の本件犯行への関与がこの点でも裏付けられるのである。

 なお,改ざん用機械の完成台数やその完成時期について,A,F,Gの各証言間には食い違いも存するところである。しかし,改ざん用機械の製作,完成の過程について,その証言内容が概略的には一致しているのであって,右の食い違いの存在は,右認定を何ら左右するものではない。

四 これに対し,被告人は,前記のとおり,本件犯行への関与を全面的に否定し,公判廷において,平成3年9月ころ,AとBとを引き合わせたことはあるが,Fに改ざん用機械の製作を頼んだことはなく,GやHからもその資金提供を受けたことはない。自分は,変造しにくいプリペイド・カードのシステムを研究開発していただけである。自分の供述に反する証言をする証人は皆嘘つきである。旨供述している。しかし,これらはいずれも具体性のない弁解であって,これを裏付ける客観的証拠も,他の証言等と食い違う理由についての納得のいく説明もなく,到底信用しがたいものといわざるを得ない。

五 以上によれば,平成3年10月ころ,被告人とAとの間で,パッキーカードを変造し,これを手数料を得て他者に交付する旨の共謀が成立し,同年11月中旬以降は,右他者の中にBらのグループも含まれることになり,これに基づいて,本件犯行が行われたことを優に認定することができる。

よって,判示のとおり認定した次第である。

(弁護人の主張に対する判断)

 弁護人は,パッキーカードは刑法上の有価証券には当たらないし,本件パッキーカードの改ざんは刑法にいう変造に当たらず,また,仮にそうでないとしても,本件パッキーカードの交付行為は変造有価証券交付罪には当たらない旨主張するので,当裁判所が本件について有価証券変造罪及び同交付罪を認めた理由について説明を加えることとする。

一 パッキーカードの有価証券性について

1 前掲関係各証拠によれば,パッキーカード及びその使用システムに関して,次のような事実が認められる。

 パッキーカードは,N株式会社の発行するパチンコ店用のプリペイドカードであり,券種としては,500円券,1000円券,2000円券,3000円券,5000円券,1万円券がある。このカードは,同会社の加盟店であるパチンコ店において使用できるものであり,その販売は各加盟パチンコ店内のカード自動販売機で行われている。このパッキーカードシステムを採用している加盟パチンコ店は,全国で280から290店舗に及んでいる。

 パッキーカードの表面には,「パッキーカード」という名称,発行時の使用可能度数である券面金額等が記載され,一定額を使用するとその都度パンチ穴があけられ,残高目安が表示される。その裏面には,発行者名,注意書き,同社への当該カードの納入年月日などを表すロット番号と呼ばれる表示が記載されている。さらに,可視できない磁気情報部分があり,ここに発行者,発行時の使用可能度数,残使用可能度数,通番及び同社にカードが納入された後に磁気情報として記録した年月日など磁気情報が記録されている。

 パッキーカードの使用方法は,パチンコ店内にあるパッキーカードサンドと呼ばれるカード用玉貸し機・メダル貸し機にパッキーカードを挿入し,パッキーカードサンドの玉貸(メダル貸)金額選択ボタン(100,300,500)を押して,相当額分のパチンコ玉又はメダルを借り出すというものである。パッキーカードサンドのカード残高表示部分には,カード挿入の際に当該カードの残使用可能度数が表示され,玉貸(メダル貸)金額選択ボタンを押すと,その額に見合う分を差し引いた残使用可能度数が同じく表示される。また,パッキーカードサンドに内蔵されているリーダーライターにより,挿入されたカードに書き込まれている磁気情報が読み取られ,真正に作成されたカードであるかについてチェックされた上で,当該カードの磁気情報部分の残使用可能度数を書き換えてカードが排出されるというシステムになっている。

2 以上の事実を前提に,パッキーカードの有価証券性について判断する。

 まず,刑法162条及び163条にいう有価証券とは,財産上の権利が証券に表示され,その表示された財産上の権利の行使につきその証券の占有を必要とするものであると解される。パッキーカードにおいては,発行時の使用可能度数及び発行者以外の情報は券面上からは知り得ないが,磁気情報部分に書き込まれている情報のうち,残使用可能度数については,パッキーカードサンドにパッキーカードを挿入すればパッキーカードサンドのカード残高表示部に表示され,その他の通番,磁気情報記録年月日等の情報についても,パッキーカードサンドに内蔵されたリーダーライターにより読み取ることができることになっている。そして,パッキーカードの磁気情報部分並びにその券面上の記載及び外観を一体としてみれば,パチンコ玉又はメダルの貸出しを受ける財産上の権利がその証券に表示されていると認められ,かつ,これをパッキーカードサンドに挿入することによって使用するものであるから,パッキーカードは有価証券に当たると解すべきである。

3 弁護人は,種々の理由をあげてパッキーカードが有価証券に当たらないというが,このうち,パッキーカードには可読性がないことを理由にする点については,磁気情報部分に可読性がないからといって有価証券に当たらないものでないことは右に判示したとおりであり,パッキーカードにはテレホンカードのような流通性がないことを理由に有価証券に当たらないとする点も,独自の主張にすぎず,採用の限りではない。

 また,弁護人は,パッキーカードにおいては,いかなる権利が化体されているか外観上明らかでないから,有価証券に当たらない旨主張する。しかし,前記のとおり,パッキーカードシステムがすでに全国で280から290の店舗に普及していることのほか,パッキーカード裏面の注意書きには,「このカードは左のマークのある加盟店及びPANYマークのある加盟店のカード玉貸機・メダル貸機でご使用できます」「カード残額は玉貸機・メダル貸機に表示されご使用後はカードのパンチ穴でその目安が表示されます」との記載があることをあわせ考慮すれば,外観上パチンコ店でパチンコ玉及びメダルの貸出しを受ける権利を化体していることはおおむね明確であり,この点でも弁護人の主張は採用できない。

 さらに,弁護人は,パッキーカードには,停電,装置の故障等カードの使用ができなくなる場合があること,また,パッキーカードシステム自体が風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に違反していることなどからして,パッキーカードは有価証券として保護すべき対象には当たらない旨主張するが,これらの点がパッキーカードの有価証券性の判断に影響を与えるとは考えられず,これらの主張も採用できない。

二 変造について

 弁護人は,本件パッキーカードの改ざん行為がされた後,一般人をして真正な有価証券と誤信させるに足りる外観を呈していないとして,有価証券変造罪には当たらないと主張する。

 しかし,有価証券の変造とは,真正に作成された有価証券に権限なく変更を加えることをいうと解されるところ,パッキーカードを有価証券に当たると解する以上,その磁気情報部分に記録された使用可能度数を権限なく改ざんする行為がこれに当たることは明らかである。

三 交付について

1 弁護人は,仮にパッキーカードが有価証券であり,その磁気情報部分の改ざんが変造に当たるとしても,本件AからEへの変更パッキーカードの交付行為は,変造有価証券行使の共謀者間の授受であるから,変造有価証券交付罪は成立しないと主張する。

 しかし,変造有価証券行使罪が訴因として掲げられている場合であれば格別,本件のように変造有価証券交付罪としてのみ起訴されているもとにおいては,交付の事実が関係証拠によって認められる以上,交付者と受交付者とが行使の共謀者であるか否かについて論ずるまでもなく,交付者には交付罪が成立すると解すべきである。

2 また,弁護人は,パッキーカードはパッキーカードサンドに挿入して使用されるもので,人に対する行使が観念できないから,変造有価証券交付罪における行使の目的がないと主張する。

 しかし,変造有価証券の行使とは,その用法に従って真正なものとして使用することをいうと解されるから,変造されたパッキーカードをパッキーカードサンドに挿入して使用する行為は,変造された有価証券の行使に当たるというべきである。

(法令の適用)

 被告人の判示所為のうち,有価証券変造の点は刑法60条,162条1項に,同交付の点は同法60条,163条1項にそれぞれ該当するが,右の有価証券変造と同交付の間には手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条により1罪として犯情の重い変造有価証券交付罪の刑で処断することとし,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役2年6月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中360日を右刑に算入し,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項本文により全部これを被告人に負担させることとする。

(量刑の理由)

 本件は,行使の目的をもってパッキーカードの磁気記録の残使用可能度数を改ざんして,これを交付したという事案であるが,磁気情報という可視できない部分に改変を加える巧妙な犯行であるとともに,ひいては,近時ますます普及の度を増している磁気情報部分を有するプリペイドカード一般の信用を害する,極めて悪質な犯行である。また,本件は,パッキーカード48枚の変造,交付というものではあるが,Aが被告人との共謀に基づき平成3年11月中旬ころから本件犯行当日にかけて交付した改ざんカードは,Bらのグループに対するものだけでも約3000枚にも上っており,本件はその一環にすぎないものと認められる。被告人は,そのような犯行の首謀者として,資金調達をした上,改ざん用機械の製作に関与していたものであり,さらには,製作した改ざん用機械を高額で売却して利益を得る目的すら有していたことがうかがわれるのである。しかも,被告人は,捜査公判を通じて犯行を否認し,全く反省の色を見せておらず,これらからすると,今後も,自らの電気関係の知識を利用して,パッキーカードのみならずその他の種々のプリペイドカードの偽造変造等の違法行為に関与する可能性も否定できない。

 以上の諸事情からすれば,パッキーカードがテレホンカード等に比して通用性が低い現状を考慮しても,被告人の刑事責任は極めて重大であるといわざるを得ない。

 このほか,被告人には罰金及び執行猶予に処された前科が3犯あることなども考慮して,被告人には,主文のとおり実刑を科するのが相当であると判断した。

 よって,主文のとおり判決する。

(求刑・懲役3年)

 

裁 判 長  裁 判 官   岩   瀬     徹

       裁 判 官   山  田   敏  彦

       裁 判 官   吉  崎   佳  弥

 


Copyright (C) 1998-2001 Takato Natsui, All rights reserved.

Published on the Web : Mar/23/1998

Error Corrected : Mar/13/2001

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