朝日放送ホームページ不正書換事件判決


大阪地裁平成9年(わ)第2305合電子計算機損害等業務妨害,わいせつ図画公然陳列被告事件


判        決

当事者名等省略

主        文

(懲役1年6月・執行猶予3年)

理        由

(罪となるべき事実)

 被告人は,大阪市<番地略>所在の朝日放送株式会社がインターネット利用者に提供するため開設したホームページ内の天気予報画像を消去してわいせつな画像に置き換え,同会社の情報提供業務を妨害するとともに,わいせつな画像を不特定多数のインターネット利用者に閲覧させようと企て,平成9年5月18日,埼玉県富士見市<番地略>の当時の自宅において,インターネットを利用して,右朝日放送株式会社内に設置されたサーバコンピュータの記憶装置であるハードディスク内に記憶・蔵置されていた天気予報画像のデータファイル9個を消去して損壊するとともに,女性の性器を露骨に撮影したわいせつな画像のデータファイル5個を含む画像のデータファイル9個を,消去した右天気予報画像のデータファイルと同一のファイル名を付して,右サーバコンピュータに順次送信するなどし,右ハードディスク内に記憶・蔵置させ,右サーバコンピュータが,不特定多数のインターネット利用者に対し,右天気予報画像のデータファイル9個分のデータを提供しようとした場合には,これに代えて新たに記憶・蔵置されたデータファイル9個分のデータを提供する結果となり,右利用者らが右わいせつな画像のデータファイル5個分のデータを受信してこれを再生閲覧することが可能な状況を設定し,右ホームページにアクセスしてきたBら不特定多数の者にこれを再生閲覧させ,もって,人の業務に使用する電子計算機の用に供する電磁的記録を損壊し,かつ,同電子計算機に虚偽の情報を与え,電子計算機に使用目的に反する動作をさせて,人の業務を妨害するとともにわいせつな画像を公然と陳列したものである。

(証拠の標目)

<省 略>

(法令の適用)

 被告人の判示所為中電子計算機損壊等業務妨害の点は刑法234条の2に,わいせつ画像公然陳列の点は同法175条前段にそれぞれ該当するが,右は1個の行為で2個の罪名に触れる場合であるから,同法54条1項前段,10条により1罪として重い電子計算機損壊等業務妨害罪の刑で処断することとし,所定刑中懲役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役1年6月に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判確定の日から3年間右刑の執行を猶予することとする。

(量刑の事情)

 本件は,朝日放送のホームページ内の天気予報画像をわいせつ画像に置き換えて,同社の業務を妨害するとともに,同ホームページ上でわいせつな画像を公然陳列したという事案である。虚偽の情報を入力してプロバイダから得た仮ユーザIDを利用してアクセスしていた右ホームページで,たまたま天気予報画像が書き換え可能な状態にあることを発見したことから,検挙されることはないであろうと安易に考えて,かねて集めていたわいせつ画像に置き換えて右ホームページの利用者を驚かせようと思い付き,直ちに実行したものであり,ネットワークにおける匿名性に付け込んだ卑劣で自己中心的な犯行といわざるを得ない。また,その結果,公共放送である朝日放送の本来の業務目的を損ない,わいせつ画像を利用者に閲覧させることとなったばかりか,その復旧等のため一時的な閉鎖のやむなきに至らせるなどした点,結果も重いというべきである。被告人の刑事責任は軽いとはいえない。しかし,他方では,本件犯行には多分に偶発的な要素もあるほか,被告人には前科前歴がなく,反省の情も認められるので,これら諸事情を総合考慮して,その刑の執行を猶予することとした。

 


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最終更新日: Jul/15/1998

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