ファクシミリ送信公文書偽造事件控訴審判決


広島高裁岡山支部平成8年(う)第3号有印公文書偽造,同行使,詐欺被告事件


判        決

<被告人住所氏名等省略:以下,関係者名等仮名:*は伏せ字>

主        文

原判決を破棄する。

被告人を懲役2年6月に処する。

原審における未決勾留日数中90日を右刑に算入する。

この裁判確定の日から4年間右刑の執行を猶予し,その猶予の期間中被告人を保護観察に付する。

押収してある葉書の写し1枚(広島高等裁判所岡山支部平成8年押第1号の1)を没収する。

理        由

 本件控訴の趣意は,検察官鞍元健伸作成の控訴趣意書に記載されたとおりであり,これに対する答弁は,弁護人中村有作作成の答弁書に記載されたとおりであるから,これらを引用する。

一 控訴趣意第一(法令適用の誤りの主張)について

 所論は,要するに,原判決は,本件公訴事実のうち,有印公文書偽造,同行使の事実について,原本の写しであっても,文書偽造罪の客体たる文書となる場合が認めつつも,ファクシミリで送信して,受信先の機械で印字した写しは不鮮明である上,原本の代用として認められていないのが通常であって,その証明文書として原本と同一の社会的機能と信用性を有するものと認めることはできないから,刑法が文書偽造罪において保護しようとする文書には該当せず,ファクシミリによって文書を送信すること自体は文書偽造行為には当たらないとしたが,これは,ファクシミリが,原本を鮮明に再現する性能を有するものであること,ファクシミリによる文書の写しが原本同様の社会的機能と信用性を有していることなどを看過した結果,法令の解釈適用を誤ったものであり,右の誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかである,というのである。

 そこで,原審記録を調査し,当審における事実取調べの結果を併せて検討する。

1 本件公訴事実のうち,平成7年6月30日付け起訴状記載の公訴事実は,次のとおりである。

 被告人は,岡山市<番地略>所在F株式会社岡山営業所長Aから,融資に関する証拠書類の提示を求められるや,支払金口座振替通知書を偽造,行使しようと企て,平成4年11月9日ころ,同市<番地略>の自宅において,行使の目的をもって,ほしいままに,実父Dあてに岡山市財務課から郵送されていた郵便葉書による同通知書の宛名欄,担当課欄,通知書番号欄,年月日欄,金融機関名欄,預金種別欄,支払内容欄の各文字を修正液で消去した上,ワードプロセッサーを使用して,その宛名欄に「岡山県岡山市****,****」,支払内容欄に「口座振込日平成4年11月12日」と記入し,さらに,右担当課欄に,ワードプロセッサーを用いて「中央福祉母子福祉課」と記載した紙を貼り付けたほか,同様の方法により,通知書番号欄に「**」と,年月日欄に「平成4年11月9日」と,金融機関名欄に「中国銀行青江支店」と,預金種別欄に「普通」と,口座番号欄及び差引支払金額欄に「2,100,000円」と各記載した紙を貼り付け,同月10日午前9時52分ころ,前記Aあてに,右自宅からファクシミリ通信により右各支払金口座振替通知書の写し1通を送付し,もって,中央福祉母子福祉課作成名義の支払金口座振替通知書1通の偽造を遂げるとともに,即時,同所において,同人に了知せしめてこれを行使したものである。

2 原審記録中の関係各証拠によると,右公訴事実のうち,被告人が岡山市教育委員会財務課から実父D宛に郵送されていた郵便葉書による支払金振込通知書の一部を修正液で消去した上に,ワードプロセッサーを使用してその宛名欄等に記入し,かつ,これを使用して新たに文字を印字した紙片を担当課欄,すなわち作成名義欄及び支払金額欄等に貼り付ける方法で右文書を改ざんし,これを送信原稿として,自宅のファクシミリを利用して前記F株式会社岡山営業所のファクシミリ宛に送信して同ファクシミリで印字させ,もって,中央福祉母子福祉課作成名義の支払金振込通知書写し(以下「本件通知書写し」ともいう。)を作成し,そのころ,同営業所において,前記Aにこれを閲覧了知させた事実が認められる。
 そして,被告人が右のような本件通知書写しをファクシミリで送信するに至ったのは,予て金融業者F株式会社岡山営業所長のAに対し,岡山市から母子福祉資金の融資が受けられるので,それを担保に金を貸してほしいと申し込んでいたことから,右Aから,母子福祉資金の融資の証拠になる書類を要求されたことにあるところ,岡山市には,中央福祉事務所はあるが,母子福祉課はなく,また,母子福祉資金の融資の実行は金券で行われ,口座振込の方法でなく,葉書による支払金振込通知書が作成されることもないので,被告人がファクシミリによる送信により作成した本件通知書写しは架空の公務所名義の架空の文書の写しである。しかし,それは,公務所が作成した真正な公文書としての形式,外観を備えたものであることが認められる。

3 ところで,真正な公文書としての形式を備えた被写原本を複写機械で複写する方法により,あたかも真正な記名押印のある公文書を原形どおり正確に複写したような形式,外観を備えるコピーを作成した行為は,被写原本が架空の公文書である場合或いは偽造文書として実在しない場合でも,有印公文書偽造罪にあたるというのが最高裁判所の判例とするところである(最高裁判所昭和51年4月30日第2小法廷判決・刑集30巻3号453頁,同昭和54年5月30日第1小法廷決定・刑集33巻4号324頁,同昭和61年6月27日第2小法廷決定・刑集40巻4号340頁)。
 そこで,被告人がファクシミリによる送信により本件通知書写しを作成した行為が,右の各事例と同様に有印公文書偽造罪にあたるといえるかどうかが本件の問題である。
 原判決は,ファクシミリによる通信は,送信文書の電気信号を受信先のファクシミリで読みとって印字するものであるから,その写しは,原本と同一の意識内容を保有していることにはなるが,数字等の見分けが容易につかず,原本では一目瞭然であるはずの改変の痕跡が判明し難いなどの画像の不鮮明さは,現在普及しているファクシミリによって受信される文書に一般的に見られ,現段階のファクシミリ文書にとっては避け難い特性であるとし,一般にファクシミリは通信の一手段として認識されており,そのため,権利義務や資格等に関する事実を証明する文書については原本の代用として認められていないのが通常であるから,ファクシミリで作成した写しは,原本と同一の社会的機能と信用性を有するものと認めることはできないとして,ファクシミリにより作成された写しは文書偽造罪で保護しようとする文書にあたらないので,ファクシミリで本件通知書写しを作成した行為は公文書偽造罪には該当しないと判断したが,右判断は是認することができない。その理由は以下のとおりである。

(一) 公文書偽造罪は,公文書に対する公共的信用を保護法益とし,公文書が証明手段として持つ社会的機能を保護し,社会生活の安全を図ろうとするものであるから,公文書偽造罪の客体となる文書は,これを原本たる公文書そのものに限らず,原本の写しであっても,右の文書に該当する場合があるところ,原本の写しが右文書に該当するというには,(1)機械的方法により,あたかも真正な原本を原形どおりに正確に複写したかのような形式,外観を有するものであること,(2)文書の性質上,原本と同様の社会的機能と信用性を有するものであることが要件であると解される。

(二) 当審における事実取調べの結果によると,ファクシミリの基本原理は,送信文書を電気信号に変換して,一般電話回線等により伝送し,受信された電気信号が感熱紙等の記録紙に記録され,受信文書が作成されるというものであるが,送信者の手元のファクシミリで文書を複写することも可能であり,その記録法法には,感熱記録方式,熱転写記録方式,電子写真方式があり,被告人が本件で送信した文書の受信に使用されたファクシミリは,感熱紙を用いる感熱記録方式である。
 したがって,ファクシミリは,文書の送受信用の機器であると共に,複写用の機器でもあり,右の基本原理によって一般的に作成された受信文書は,送信文書の写しではあるが,その写し作成者の意識が介在混入する余地がなく,原本である送信文書が電気的かつ機械的に複写されるものであるといえるから,ファクシミリについても,真正な原本を原形どおりに正確に複写したかのような形式,外観を有する写しを作成する機能を有するものである。
 もとより,ファクシミリの印字機能,記録紙の種類等によって,印字の精細度ないし鮮明度,濃淡等に差異があり,送信文書ないし被写原本の印字と全く同一の印字が再現されるとは限らないことはいうまでもないが,それでも,文書全体の規格,文字の配置,文字の字体及び大きさ等は正確に複写され,これを見る者をして,同一の体裁と内容の原本の存在を信用させ,原本そのものを現認するのに近いような認識を抱かせる程度の写しが作成されることは否定できない。
 なお,原判決が本件通知書写しについて,「3」と「8」の見分けが容易につかないと指摘する点は,保存性に多少難点のある感熱紙に記録されたことに由来することが窺われるし,当審で取り調べた検察事務官作成の実況見分調書によると,送信側及び受信側とも本件と同機種のファクシミリを使用して行った実験では,右の「3」と「8」の区別が鮮明であることが認められる。また,原判決が原本では一目瞭然であるはずの改変の痕跡が判明し難いと指摘する点は,本件の被写原本のうち,ワードプロセッサーで印字された紙を貼り付けた部分の継ぎ目を修正液で修正した部分が本件通知書の写しでは判明し難いということのようであるが,そのことは真正な文書の形式,外観を備える写しを偽造するためには有用なことであり,右写し自体を偽造文書と判断することの妨げとはならない。
 したがって,複写機械による写しとファクシミリによる写しとの間には,あたかも原本を原形どおりに正確に複写する点で格別の差異があるとはいえない。

(三) 次に,ファクシミリによる文書の写しの社会的機能と信用性についてみると,真正な原本を原形のまま正確に複写したかのような形式,外観を有するファクシミリによる文書の写しは,一般には,同一内容の原本が存在することを信用させ,原本作成者の意識内容が表示されているものと受け取られて,証明用文書としての社会的機能と信用性があることは否定できず,その信用性の程度については,文書の作成名義,文書を行使する人物等の要素によって異なるものである。もとより,文書の本来の性質上,その存在自体が法律上又は社会生活上重要な意味をもっている文書,或いは人の重要な権利の行使に関して必要な文書などにおいては,ファクシミリによる文書の写しを原本の代用としてまでは認められないにしても,その他の分野においては,隔地者間における即時性のある証明用文書として有用なものとして利用されていることは明らかである。この点においても,複写機械による写しとの間に格別の差異があるとはいえない。
 本件の被告人が作成した通知書写しについても,岡山市の母子福祉担当課から被告人に対する支払金が振り込まれることを証明する原本文書の存在を信用させ,金融業者から借入れをするについて,保証書的役割を果たしたのである。

(四) 以上のとおりであるので,本件通知書写しは,公文書偽造罪の客体としての文書としての要件を満たした公文書に当たるというべきである。
 なお,本件において,通知書写しが被告人の手元で完成しなかったことは右判断には影響がないものというべきである。

4 したがって,被告人の本件通知書写しの作成行為が有印公文書偽造罪に該当しないとした原判決は法令の解釈適用を誤ったものというべきであるから,論旨は理由がある。

二 よって,その余の控訴趣意に対する判断を省略し,刑事訴訟法397条1項,380条により原判決を破棄し,同法400条ただし書により,当裁判所において更に次のとおり判決する。

(罪となるべき事実)

 被告人は,岡山市<番地略>の自宅において,**の名称で清掃請負業を営んでいたものであるが,右清掃請負業の経営状態が悪い上,生活費に困り,金融業者から借入金名下に金員を騙取しようと企て

第一 原判示第一記載のとおり。

第二 前記Aから前記母子福祉資金の融資に関する証拠書類の提示を求められるや,前記詐欺の発覚を防ぐために,支払金口座振替通知書を偽造,行使しようと企て,平成4年11月9日ころ,同市<番地略>の自宅において,実父Dあてに岡山市財務課から郵送されていた郵便葉書による同通知書の宛名欄,担当課欄,通知書番号欄,年月日欄,金融機関名欄,預金種別欄,支払内容欄の各文字を修正液で消去した上,ワードプロセッサーを使用して,その宛名欄に「岡山県岡山市****,****」,支払内容欄に「口座振込日平成4年11月12日」と記入し,さらに,右担当課欄(作成名義欄)に,ワードプロセッサーを用いて「中央福祉母子福祉課」と記載した紙を貼り付けたほか,同様の方法により,通知書番号欄に「**」と,年月日欄に「平成4年11月9日」と,金融機関名欄に「中国銀行青江支店」と,預金種別欄に「普通」と,口座番号欄及び差引支払金額欄に「2,100,000円」と各記載した紙を貼り付け,中央福祉母子福祉課作成名義の支払金振込通知書に改ざんした上,行使の目的をもって,ほしいままに,同月10日午前9時52分ころ,これを送信原稿として右自宅のファクシミリを使用して前記F株式会社岡山営業所のファクシミリ宛に送信し,同ファクシミリにより支払金振込通知書の写し1通を作出し,もって,あたかも真正に作成された中央福祉母子福祉課作成名義の支払金口座振替通知書を原形どおり正確に複写したかのような外観を有する写し1通(広島高等裁判所岡山支部平成8年押第1号の1)の偽造を遂げ,そのころ,同所において,同営業所長の前記Aに閲覧了知せしめてこれを行使し

第三 前記Aが中央福祉母子福祉課から被告人の預金口座に210万円が振り込まれるものと誤信したことに乗じ,借入金名下に金員を騙取しようと企て,同日昼過ぎころ,前記F株式会社岡山営業所において,同人に対し,真実は被告人に右210万円が振り込まれる事実がなく,返済の意思も能力もないのに,これらがあるように装い,「11月12日には全部返しますから,これが最後じゃから,55万円貸してください。間違いなく210万円が入るから,それで返済します。」などと言って,その旨同人を誤信させ,よって,即時同所において,同人から,現金55万円の交付を受けてこれを騙取し

第四 原判示第三記載のとおり。

たものである。

(証拠の標目)

<省略>

(法令の適用)

 被告人の判示第一の各所為は包括して平成7年法律第91号附則2条1項により同法律による改正前の刑法(以下同じ。)246条1項に,同第二の所為のうち,有印公文書偽造の点は同法155条1項に,その行使の点は同法158条1項,155条1項に,同第三,第四の各所為は同法246条1項にそれぞれ該当するところ,同第二の有印公文書偽造とその行使との間には手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条により一罪として犯情の重い偽造有印公文書行使罪の刑で処断することとし,以上の各罪は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により最も重い同第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役2年6月に処し,同法21条を適用して原審における未決勾留日数中90日を右刑に算入することとし,後記情状により同法25条1項を適用してこの裁判確定の日から4年間右刑の執行を猶予し,なお同法25条の2第1項前段を適用して被告人を右猶予の期間中保護観察に付し,押収してある葉書の写し1枚(広島高等裁判所岡山支部平成8年押第1号の1)は,同第二の偽造有印公文書行使の犯罪行為を組成した物で,何人の所有をも許さないものであるから,同法19条1項1号,2項本文を適用してこれを没収し,原審及び当審における訴訟費用は刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。

(量刑の理由)

 本件は,自己破産宣告を受けてから1年も経過しないうちに,無計画なまま清掃請負業を始めた被告人が,生活費や事業資金等に窮した結果,判示第一のとおり,平成4年10月19日から同年11月5日までの間,前後8回にわたり,借入金名下に金融業者から合計151万円を騙取し,同第二のとおり,同月10日,右詐欺の発覚を防ぐため,公文書である支払金振込通知書を利用し,修正液やワードプロセッサーを用いて架空の公務所作成名義の同種の文書に改ざんした上,これを送信原稿として自宅からファクシミリを使用して送信し,あたかも真正に作成されたかのような公務所作成名義の支払金振込通知書写しを偽造して,これを行使し,同第三のとおり,同日,右写しを見た金融業者が被告人の預金口座に210万円が振り込まれるものと誤信したのに乗じて,55万円を騙取し,さらに,その後,右騙取の事実が発覚するや,右騙取金の返済に充てるため,同第四のとおり,同年12月31日ころ,またもや借入金名下に知人の金融業者から48万5000円を騙取したという事案であって,もとよりその動機において斟酌すべき余地に乏しいし,犯行の態様も,同第一の詐欺については,岡山県の母子福祉課貸付制度関係書類を被害者に示して,その融資が受けられるかのように説明し,或いは虚偽の売上げを記載した帳簿を作成して,清掃請負業の仕事が順調であるかのような工作を弄するなどした上,数回にわたり執拗に金員を騙し取り,同第の有印公文書偽造,同行使についても,真正な公文書を被告人の預金功罪に210万円が振り込まれる内容の架空の公務所名義の文書に改ざんした上,これを金融業者にファクシミリで送信して,公文書の写しを偽造行使し,実質的に被害者を欺罔する手段に利用し,同人がその旨誤信したのに乗じて同第三の詐欺に及ぶなど,いずれも巧妙かつ用意周到で,その後,右各犯行が看破されるや,知人の金融業者にも触手をのばして同第四の詐欺に及んだものであって,被告人の欺瞞的な性格傾向の表われた悪質な犯行であるといわざるを得ない。
 以上のような本件各犯行の動機及び態様等に加え,有印公文書偽造,同行使の犯行は,現代的機器を利用して行った犯行で,公文書に対する社会的信用を傷つけたこと,詐欺の各犯行による被害総額は254万5000円と多額であることなどを考慮すると,被告人の刑事責任は重大である。

 しかしながら,本件有印公文書偽造,同行使の犯行は,公文書のコピーの偽造,行使であって,原本自体の偽造,行使に比較して容易に実行され易く,コピーに対する公共的信用も原本に比べて小さく,その犯情にはおのずと差異があること,本件詐欺の各犯行については,被害者が被告人の資力の調査等を十分に行わないまま,福祉的給付金による回収を目的として,安易に多額の金員を貸し付けたことが被告人の犯行を助長し,被害を拡大したという側面も否定できず,被害者がいずれも貸金業者である点で若干の落ち度は免れないこと,詐欺の被害総額のうち実質上76万余円の被害弁償がなされたこと,今後も被告人の姉や長女も被害弁償のための協力を申し出ていること,被告人は,就労の意欲はあり,原判決後求職に努力した結果,平成8年4月1日から岡山市内の会社に就職し,教育教材を配布する仕事に従事しており,給与から少しずつでも被害弁償をしていく決意であること,被告人には財産犯の前歴が2回あるものの,平成3年に無免許運転により罰金7万円に処せられた以外に前科がなく,今回約5か月間勾留されたこともあって,事実上の社会的制裁を受けるとともに,本件各犯行及び従前の生活態度に対する反省の念が窺われること,被告人の3人の子どものうち,長男は未だ小学校6年生であり,被告人の両親は老齢で,母親も病気を患っているため,一家の支柱として被告人の果たすべき役割が期待されていること,その他被告人の健康状態等被告人に有利な諸事情を総合考慮すると,被告人に対しては,今回に限り,その刑の執行を猶予して保護観察に付し,専門家による指導監督のもとに,社会生活の中で被害弁償に鋭意努力させながら自力更生の機会を与えるのが相当であると思料される。

 よって,主文のとおり判決する。

裁 判 長  裁 判 官    福   嶋     登

       裁 判 官    内  藤   紘  二

       裁 判 官    山   下     寛

 


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最終更新日: 1998/02/18

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