日立クレジット対岡山東伸繊維事件控訴審判決


広島高裁岡山支部平成元年(ネ)第30号損害賠償請求本訴,不当利得返還請求反訴控訴事件


上告審 : 日立クレジット対岡山東伸繊維事件上告審判決


判        決

控   訴   人      岡山東伸繊維株式会社
右代表者代表取締役      高  砂   譲  司
被 上 告 人        高  砂   譲  司
被 上 告 人        村  上   知  彦
右控訴人ら訴訟代理人弁護士  中  村   道  男

被 控 訴 人        日立クレジット株式会社
右代表者代表取締役      小  林   信  市
右訴訟代理人弁護士      西  田   秀  史
同              西  田  美 千 代
同              宇 佐 美  英  司

主        文

一 原判決中被控訴人の本訴請求に関する部分を取り消す。

二 被控訴人の本訴請求を棄却する。

三 控訴人岡山東伸繊維株式会社のその余の控訴を棄却する。

四 本訴の訴訟費用は,第一,二審とも被控訴人の,反訴の控訴費用は,控訴人岡山東伸繊維株式会社の各負担とする。

理        由

一 本訴について

1 原判決事実摘示本訴請求原因(一),(三),(四)の各事実は,当事者間に争いがない。

2 証拠<略>によれば,同(二)の事実が認められ,これに反する証拠はない。

3 控訴人らは,控訴会社が被控訴会社から本件リース物件の引渡しを受けていないし,手作りソフトが未完成である旨主張し,被控訴会社は,仮にそのような事実があったとしても控訴人らがそれを主張することは信義則上許されないと争うところ, 成立に争いのない証拠<略>,原審証人西山秀信,同根岸博,当審証人岡田清志の各証言によれば,控訴会社とコーセンは,コーセンが最終需要者である控訴会社のために,手作りソフト付きの本件コンピューターを納入するに際して,被控訴会社のリース取引を利用することにしたこと,ところで,本件の場合,本来であれば,コーセンが手作りソフトを完成し,それを付けた本件コンピューターを被控訴会社に売却,納入し,次いで,被控訴会社が控訴会社に対して,完成された手作りソフト付きの本件コンピューターをリース,納入すべきところ,コーセンは自己の資金繰りのために,早急に本件売買代金を入手することを意図し,本件リース契約日頃,実際には本件コンピューターは未だコーセンの事務所に置いたままであり,かつ手作りソフトの組込みもほとんどこれからしなければならない状態であったにも拘わらず,被控訴会社との関係では,完成された手作りソフト付きの本件コンピューターがコーセンから控訴会社に既に納入されたように装い,控訴会社もコーセンの右意図を了承して協力することにした結果,控訴会社は被控訴会社に対して,完成された手作りソフト付きの本件コンピューターの引渡しを受けたことを証明する受領証を交付してその引渡しを受けたことを表明したこと,そこで,被控訴会社は当然コーセンに対して本件売買代金の支払いを完了すると同時に控訴会社に対して本件リース契約を締結し,かつ,完成された手作りソフト付きの本件コンピューターが控訴会社に引渡されたものと信じて,その後控訴会社から後記認定のとおりリース料の支払いを受けてきたことが認められる。

 右認定事実によると,控訴会社は,真実は,被控訴会社から本件リース契約に基づいたリース物件の引渡しを受けていなかったか,もしくはその引渡しを受けてコーセンに本件リース物件を預託していたが,手作りソフトは未完成であったかのいずれかであるというべきであるが,控訴会社としては,コーセンと意を通じて,控訴会社が被控訴会社より,完成された手作りソフト付きの本件コンピューターの引渡しを受けた旨表明していた経緯に照らすと,信義則上,控訴人らが被控訴会社に対し,右いずれの事実も主張することは許されないものと解するのが相当である。

4 控訴会社が,本件リース物件のリース料を昭和59年9月以降同61年9月まで毎月14万7000円ずつ合計367万5000円の支払いをしたことは,当事者間に争いがない。

5 官署作成部分は争いがなくその余の部分は弁論の全趣旨によって成立を認める証拠<略>,前記各証言及び尋問の結果によれば,被控訴会社は,昭和61年9月30日頃,コーセンの経営不振を理由に,控訴会社に無断で本件リース物件を引き揚げ,以後被控訴会社の保管下に置き,控訴会社に対し再度の引渡しをしないし,また,控訴会社に対しその引取りを促したり,或いはその処遇について解決策を見出すための積極的交渉等をすることもなく,同年10月28日付内容証明郵便による書面をもって催告期間を置き本件リース契約の解除の意思表示をなし,その後も今日に至るまで右行為に出たことがないこと(契約解除の意思表示をしたことについては,当事者間に争いがない。),なお,控訴会社も同年10月以降の本件リース料については,本件リース物件の引渡しを受けていないことを理由にその支払いを拒絶したことが認められ,右認定に反する証拠はない。

 右事実によれば,被控訴会社の右契約解除の意思表示は,控訴会社が被控訴会社の本件リース物件の一方的引き揚げによって,使用できない状態を作出したのであるから,控訴会社としては同年10月分以降の本件リース料の支払いを拒絶しうるものとしなければならないので,その効力を生じない。

6 控訴会社は,控訴会社が従来から使用しているコンピューター及びエルタックキルト機械の処分を前提条件として,本件リース契約を締結した旨の主張をするが,これに沿う前記高砂の尋問の結果部分は,前記各証言に対比して措信することができないし,他にこれを認めるに足りる証拠はない。

 なお,控訴会社が被控訴会社に対して昭和61年9月11日本件リース契約を解除する旨の意思表示をしたことを肯定するに足りる証拠はない。

7 以上のとおりであるから,被控訴会社の本訴請求は理由がない。

二 反訴について

1 原判決事実摘示反訴請求原因(一)の事実,同(四)の事実中,昭和59年9月分以降同61年9月分までの本件リース料合計367万5000円の支払いをしたことは,当事者間に争いがない。

2 同(二),(三)の各事実が認められないことは,前記一3,6に認定したとおりである。

3 そうすると,控訴会社の右支払いは,契約に基づく義務であって不当に利得されたものといえないから,反訴請求も理由がない。

 もっとも,本訴に関して認定したとおり,被控訴会社が昭和61年9月30日頃本件リース物件を一方的に引き揚げたことにより,控訴会社はそれを使用し得ない状態になった事実があるが,右事実をもって直ちに控訴会社の同月分の本件リース料支払義務が消滅するものでないから,右事実は前記判断を左右するものではない。

三 よって,原判決中本訴請求に関する部分は不当であるから,同部分を取り消すこととし,被控訴人の本訴請求を棄却すべく,原判決中反訴請求に関する部分は相当であって,控訴会社の同部分に対する控訴は理由がないからこれを棄却する。

 

裁 判 長  裁 判 官   高  山   健  三

       裁 判 官   相  良  甲 子 彦

       裁 判 官   渡   邊     雅

 


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Published on the Web : Mar/03/1998

Error Corrected : Sep/25/2001

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