広島偽造パチンコ・カード(パニーカード)事件判決


広島地裁平成7年(わ)第233号偽造有価証券行使,窃盗被告事件


判        決

<被告人氏名等省略:関係者名等は仮名>

主        文

被告人を懲役1年2月に処する。

この裁判確定の日から3年間右刑の執行を猶予する。

押収してあるパニーカード1枚(平成7年押第42号の1)を没収する。

理        由

(罪となるべき事実)

 被告人は、使用済みで無効となつた日本ゲームカード株式会社発行にかかるパニーカードの、使用した旨の表示箇所等を埋め、券種を表示する箇所に1万円の券種を表示するパンチ孔を開けるなどの方法で、有効度数を1万円として偽造されたカード1枚(平成7年押第42号の1)を入手し、右カードが偽造の有価証券であることを知りながら、これを用いてパチンコ玉を窃取しようと企て、平成7年4月29日午前11時ころから同日午前11時25分ころまでの間、広島市<番地略>所在のパチンコ遊技場「株式会社B高陽店」において、右偽造カードを同店に設置されたパチンコ遊技機708番台及び713番台に取り付けてある各カード専用玉貸機のカード挿入口に挿入し、続いて同玉貸機の貸出ボタンを操作する不正な方法で、同玉貸機内から同店支配人A管理にかかるパチンコ玉約950個(貸出し価格約3800円相当)を取り出し、もって偽造有価証券を行使するとともに、右パチンコ玉を窃取したものである。

(証拠の標目)

<省  略>

(法令の適用)

 被告人の判示所為中、偽造有価証券行使の点は平成7年法律第91号附則2条1項により、同法による改正前の刑法(以下、同法という。)163条1項に、窃盗の点は同法235条にそれぞれ該当するが、右は1個の行為で2個の罪名に触れる場合であるから、同法54条1項前段、10条により1罪として重い偽造有価証券行使罪の刑で処断することとし、その所定刑期の範囲内で被告人を懲役1年2月に処し、情状により同法25条1項を適用してこの裁判確定の日から3年間右刑の執行を猶予し、押収してあるパニーカード1枚(平成7年押第42号の1)は、判示偽造有価証券行使の犯罪行為を組成した物で、何人の所有をも許さないものであるから、同法19条1項1号、2項本文を適用してこれを没収することとする。
 (なお、右偽造有価証券行使罪と窃盗罪の罪数に関する当裁判所の判断を付加して説明するに、関係証拠によると、パニーカードによるパチンコ玉貸出の仕組みは、パチンコ遊技台脇に設置されたカードユニット部にあるカード挿入口にパニーカードを挿入するとカード挿入中ランプが点灯するとともに、遊技台側にある貸出スイッチLEDが点灯して、玉貸しが可能な状態になり、貸出スイッチの押し下げによりパチンコ玉が受け皿に排出される(本件では、右スイッチ1回の押し下げにより500円相当のパチンコ玉が排出される。)構造になっていることが認められる。そうすると、被告人は、偽造の右パニーカードを使って、パチンコ玉を窃取しようとして、同パニーカードを挿入して、続いて貸出スイッチを押し下げて判示パチンコ玉を取り出したものであり、右パニーカードの挿入行為自体がパチンコ玉取り出し行為の開始であり、その後、貸出スイッチを押し下げてパチンコ玉を取り出す一連の行為自体が窃取行為ということができる(右貸出スイッチの押し下げを窃取行為の実行の着手とみることは相当と解されない。)。そうすると偽造の右パニーカードを挿入することによって成立する偽造有価証券行使の行為と右窃取行為とは、構成要件の主要部分が重なり合うものであって、同法54条1項前段の「一個ノ行為」ということができる。)

 よって、主文のとおり判決する。

裁 判 官   片   岡     博

 


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Published on the Web : Mar/18/1998

Error Corrected : Mar/13/2001

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