ドイツの「著作権法一部改正法」

(仮訳)

(1997/08/21改訂版)

翻訳:夏井高人


これは,1997年8月に施行されたドイツのいわゆる「マルチメディア法:情報通信サービスの枠組みとなる諸条件の規律に関する法律Gesetz zur Regelung der Rahmenbedingungen fur Informations- und Kommunikationsdienste」の中の一部分であり,データベース保護に関するEU指令の最初のインプリメント例として話題を呼んでいる「著作権法一部改正法」の全文仮訳です(ドイツの「マルチメディア法」は,ほかに他の法律の一部改正法等の多数の条項を含んでいます。)。
非常に大急ぎで翻訳したので,誤訳もあるかもしれません。ご注意ください。また,適当な日本語が見つからない部分と条文が何を指しているのか明確でない部分については,理解の助けとなるように注記を付けました。この注記の部分の文責は,夏井にあります。

この法律のオリジナル・テキストは,

Gesetz zur Regelung der Rahmenbedingungen fur Informations- und Kommunikationsdienste (Informations- und Kommunikationsdienste-Gesetz - IuKDG)
http://www.iid.de/rahmen/iukdgk.html#a7

で入手することができます。


参考 : EU1996年3月11日指令「データベースの法的保護に関する欧州議会及び理事会の指令」(仮訳)


 

1996年7月19日に法律のArtikel 5以下が最終改正(BGBl. I S. 1014)された1965年9月9日著作権法(BGBl. I S. 1273)は,次のとおりに改正される。

[注記]
この仮訳は,郵政省の翻訳文と全く異なる部分があるが,法律の最終版(公布された法律)に基づくものである。

1. 4条は,次のとおり読み替えて改正される。

「§4 編集著作物及びデータベースの著作物

(1) 著作物,データ,その他の独立の構成要素の編集物(Sammlungen)であって,その構成要素の選択または配列が私的な知的創作であるものは,その個々の構成要素にかかる著作権その他関連する保護的権利の有無とかかわりなく,独立の著作物として扱われる。

(2) 本法においては,データベースの著作物(Datenbankwerkとは,その構成要素を組織的分類法ないし系統的分類法に従って配列した編集著作物(Sammelwerk)であって,電子的手段その他の手段によって個人がアクセス可能なものを意味する。データベースの著作物を創作するため,またはその構成要素にアクセスするために用いられるコンピュータ・プログラムは,データベースの著作物に含まれない。」

2. 23条2項は,次のとおりに改正される。

a) 「美術(Kunste)」の後の「及び」は,コンマで置き換える。

b) 「または,データベースの著作物の改変(Bearbeitung)もしくは再構築(Umgestaltung)」の後に「構築(Baukunst)」を付加する。

3. 53条は,次のとおりに改正される。

a) 4項の次に,次の5項を挿入する。

1項及び22号ないし4号は,電子的な手段によってその個々の構成要素にアクセス可能なデータベースの著作物には適用されない。21項は,工業目的を遂行するための技術的手段ではない利用を条件とするデータベースの著作物にも適用される。」

b) 現在の5項及び6項を6項及び7項とする。

4. 55条の次に,次の55a条を挿入する。

「§55a データベースの著作物の使用

著作者の許諾に基づいて流通に置かれたデータベースの著作物の複製物(Vervielfaltigungsstucks der Datenbank)の保有者,特にその利用が認められた者,著作者もしくは著作者から許諾を得た第三者との間の契約に基づいてデータベースへのアクセスを認められた者によるデータベースの著作物の改変もしくは複製は,その改変もしくは複製がデータベースの構成要素へのアクセスもしくはその通常の利用のために必要である場合には,許容される。1文の契約に従ってデータベースの著作物の一部についてのみアクセス可能であるときは,その部分についての改変または複製のみが許容される。これに反するいかなる契約上の合意も,無効である。」

5. 63条において,1文の後に,次の2文を挿入する。

a) 「データベースの著作物の複製についての53条2項1号及び3項1号の場合と同じく妥当する。」

b)
 現在の2文及び3文を3文及び4文とする。

6. 87条の次に,次のとおりの章を追加する。

「第6章 データベースの作者の保護

§87a 定 義

(1) 本法においては,データベース(Datenbankとは,個々独立した著作物,データその他のマテリアルを組織的分類法ないし系統的分類法に従って配列した収集物(eine Sammlung)であって,電子的手段その他の手段によって個人がアクセス可能であり,かつ,そのマテリアルの収集,検証または提示に大きな投資を要するものを意味する。その内容に量的・質的な実質的変更を加えられたデータベースは,その変更に量的・質的変更について大きな投資を要する場合に限り,新たなデータベースとして扱う。

(2) 本法においては,データベースの作者(Datenbankherstellerとは,前項に規定する大きな投資を行った者をいう。

§87b データベースの作者の権利

(1) データベースの作者は,そのデータベースの全部または量的・質的に大きな部分を,複製し,頒布し,公衆に提示する排他的権利を有する。データベースの大きな部分でない部分を反復的及びシステマティックになされる複製,頒布および公衆への提示は,そのデータベースの通常の利用を妨げ,またはそのデータベースの作者の正当な利益を不当に害するものである場合に限り,データベースの量的・質的に大きな部分の複製,頒布,公衆への提示と同等に評価できる。

(2) 17条2項並びに27条2項及び3項が適用される。

§87c 作者の保護の制限

(1) データベースの量的なもしくは質的な評価における実質的な部分の複製は,次の各号のいずれかに該当するときは,許容される。

1. 私的利用;ただし,電子的な手段を用いてその構成要素に個別にアクセスできるデータベースを除く。

2. 科学目的の利用;ただし,その複製が適切であり,かつその使用が非営利目的である場合に限る。

3. 非営利の教育研究機関及び職業訓練機関における,各クラスに必要な数についての,教育目的の利用。 

2号および3号に該当する場合には,その出所が明示されることを要する。

(2) 行政目的,仲裁目的もしくは司法目的または公安目的である場合は,データベースの量的なもしくは質的な評価における実質的な部分の複製,頒布および公衆への提示が許容される。

§87d 保護期間

データベースの作者の権利は,そのデータベースの公表から15年で終了する。完成の後15年以内に公表されなかったデータベースの作者の権利は,この期間の経過によって終了する。この期間は,69条に基づき計算する。

§87e データベースの使用に関する契約

データベース作成者の許諾に基づいて流通に置かれたデータベースの複製物(Vervielfaltigungsstucks der Datenbank)の保有者,特にその利用が認められた者,データベース作成者(Datenbankherstellers)もしくはデータベース作成者から許諾を得た第三者との間の契約に基づいてデータベースへのアクセスを認められた者の契約であって,データベースの作成者に対し,そのデータベースの質的・量的に重要でない部分の複製(Vervielfaltigung),配布(Verbreitung)もしくは公衆への展示(offentliche Wiedergabe)を禁ずる約定は,それがデータベースの通常の利用と矛盾する行為,または,データベースの著作者の正当な利益を不正に侵害する行為となるときは,無効である。

7. 108条1項7号の次に,次のとおり挿入する。

8. 87bの第2項に違反するデータベース利用」

8. 1193項は,「写真(Lichtbilder)」の後の「及び」をカンマに置き換え,「Tontrager」の後に「87bによって保護されるデータベース」を挿入する。

9. 127条の次に,次の127条aを挿入する。


「§127a データベース作者の保護

(1) 87条bの保護は,本法の適用領域内にあるドイツ国民及びドイツ法人に適用される。120条2項が適用される。

(2) 87bの保護は,ドイツ法または12022号に規定する国家の法に基づいて設立された法人であって,本法の適用領域内にないものであり,かつ,次のいずれかに該当するものに適用される。

1. その法人の主たる事務所または主たる営業場所が12022号に規定する国家の中にあること,もしくは,

2. その法人の登録された住所地がこれらの国家にあり,かつ,その活動がドイツ経済あるいはこれらの国家の経済と実質的な関連性を有すること

(3) その他の外国及び外国法人は,欧州共同体(die Europaische Gemeinschaft)加盟国間の条約もしくは国際協定であって,連邦法務大臣によって連邦法として公布されたものに従って保護を受ける。

10. 137条fの次に,次の137条gを挿入する。

「§137g 指令96/9/EGのインプリメントに伴う経過規定

(1) 23条2文,53条5項,55条a及び63条1項2文は,1998年1月1日以前に作成されたデータベースについても適用される。

(2) 第2編第6章の規定は,1983年1月1日から1997年12月31日までの間に完成されたデータベースについても適用される。その保護期間は,1998年1月1日に開始する。

(3) 55条及び87条は,1998年1月1日よりも前に締結された契約については適用されない。」



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最終更新日:Aug/21/1998

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