明治大学 理工学部 電気電子生命学科 認知脳科学研究室

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研究内容

認知脳科学研究室では、人間の脳が備えている身体性と社会性をキーワードとして、おもに以下の3つテーマを研究しています。

メディア認知とミラーシステム

TVや映画、PC、携帯端末、ゲームなど様々なメディアがわれわれを取り巻いていますが、これらを脳はどのように捉えているのでしょうか?たとえばTVに現れる人物と実際に対面している人物に対して脳は同じように反応するのでしょうか?

認知脳科学研究室では、様々なメディアを見たり聴いたり操作したりしている時の脳活動を計測しています。特にコミュニケーションなどの社会性能力に関係した脳領野の活動に興味があります。人間の脳には、他者を見ているときと自分が行動しているときで同じように活動する領域があることが知られています。自分の行動と他者の行動を鏡合わせにしているような活動をするため、この領域は「ミラー(ニューロン)システム」と呼ばれています。ミラーシステムの反応はいくつかの要因によって変化することが知られているので、この活動量を調べることで脳がメディアに現れる他者をどのように捉えているかについて研究することができます。

また最近では人間の形をしたロボット(ヒューマノイド)の研究が進んでいますが、このようなロボットに対して脳はどのように反応するでしょうか?メディアの場合と同様に、ロボットに対するミラーシステムの反応も調べています。

実験風景

実験風景

主な研究業績

  • Sotaro Shimada, et al. (2016) Coordinated activation of premotor and ventromedial prefrontal cortices during vicarious reward, Social Cognitive and Affective Neuroscience.
  • Tsuchida, Ueno & Shimada (2015) Motor area activity for action-related and nonaction-related sounds in a three-dimensional sound field reproduction system, NeuroReport.
  • 嶋田総太郎 (2014) 共感・他者理解におけるミラーシステムと情動・報酬系の活動変化, 心理学評論.
  • Sotaro Shimada, Kazuma Oki (2012) Modulation of motor area activity during observation of unnatural body movements, Brain & Cognition.
  • Shimada (2010) "Deactivation in the sensorimotor area during observation of a human agent performing a robotic action", Brain & Cognition.

自己身体イメージの構成メカニズム

われわれはもちろん身体を持っていますが、脳の中には身体の「イメージ」があると考えられています。この身体イメージは必ずしも本当の身体と一致しているとは限らず、錯覚や学習、あるいは脳の病変によって変化することがあります。そもそも私たちが生まれてから大人になるまでの間に身体の大きさや部位のバランスが変化するのですから、脳もこのような変化に対応できるようになっていなければなりません。

このような身体イメージの変化を短期間で人工的に起こすものとして「ラバーハンド錯覚」という錯覚があります。ラバーハンドというのはゴムでできた手という意味でマネキンの手を想像してもらえば良いでしょう。被験者からはラバーハンドだけが見える状態にしたうえで被験者の手とラバーハンドをブラシなどで同時に撫でることを数分間続けると、ラバーハンドが自分の手のように感じられるような錯覚が起こります。これはラバーハンドを見ている目からの視覚情報と手からの触覚情報が時間的に一致するために、脳がラバーハンドを自己の身体であると判断したものだと考えられます。ラバーハンド錯覚は撫でるタイミングがずれると起こらないことが分かっています。認知脳科学研究室では、ラバーハンド錯覚において様々な条件を変更したときの影響を調べています。

遅延映像装置

自己身体イメージは、視覚や触覚、聴覚などさまざまな感覚を自分の身体に集約することで成立すると考えられます。そこで、自分の身体運動から起こる感覚フィードバックに時間的あるいは空間的変化を挿入することで身体イメージの感じ方に違いが表れるかを調べることは、身体イメージの構成メカニズムを理解する上で重要です。認知脳科学研究室では種々の感覚フィードバックに変更を加える装置を用いて、行動実験および脳活動計測実験を行っています。

主な研究業績

  • Mohamad Arif Fahmi Ismail, Sotaro Shimada (2016) ‘Robot’Hand Illusion under Delayed Visual Feedback:Relationship between the Senses of Ownership and Agency, PLoS ONE.
  • Shimada, et al. (2014) Relationship between sensitivity to visuotactile temporal discrepancy and the rubber hand illusion, Neuroscience Research.
  • 樋田, 上野& 嶋田(2013) 身体運動に伴う遅延聴覚フィードバックの知覚順応, 認知科学.
  • Shimada, Qi, & Hiraki (2010) "Detection of visual feedback delay in active and passive self-body movements", Experimental Brain Research.
  • Shimada, Fukuda, & Hiraki (2009) “Rubber hand illusion under delayed visual feedback”, PloS ONE

ブレインマシンインタフェース

人間の身体は脳の指令によって動いています。では同じように脳の指令から直接、機械を操作することは可能でしょうか?このような技術のことをブレイン−マシンインタフェース(BMI)またはブレイン−コンピュータインタフェース(BCI)と呼びます。BMIは身体が不自由な方への有望な代替手段として、またエンターテイメントやマーケティングなどの分野への応用可能性を秘めた技術だと考えられています。認知脳科学研究室では、主に脳波計を用いたBMIの技術について研究を進めています。

主な研究業績

  • Takuro Zama, Sotaro Shimada (2015) Simultaneous measurement of electroencephalography and near-infrared spectroscopy during voluntary motor preparation, Scientific Report.

主な研究プロジェクト

  • 科研費 基盤研究(B) 「自己と他者の「一体感」形成の脳メカニズム」(研究代表者)
  • 科研費 挑戦的研究(萌芽) 「脳活動特徴空間の構築によるオンライン授業視聴中の学習状態の可視化」(研究代表者)
  • 科研費 新学術領域研究(研究領域提案型)「脳卒中片麻痺の運動主体感を高めるハイブリッドニューロリハビリテーションの効果検証−運動主体感の変容と運動機能回復との関係を探る−」(連携研究者)
  • 科研費 新学術領域研究(研究領域提案型) 「統合失調症における主観的「現在」の時間幅とその可塑性の検討」(研究代表者)
  • 科研費 若手研究(A) 「社会性認知におけるミラーシステムと報酬系の役割」(研究代表者)
  • 公益財団法人 中山隼雄科学技術文化財団 「脳・自律神経系活動の複数プレイヤ一同時計測による協調型ゲームの「場」の解析」(研究代表者)
  • 戦略的創造研究推進事業CREST  「共生社会に向けた人間調和型情報技術の構築」領域
     「音楽を用いた創造・交流活動を支援する聴空間共有システムの開発」(研究分担者)
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