シェル・空間構造研究室

研究テーマ:地盤との連成を考慮した地震応答性状,振動特性

研究背景

一般的な建物の地震時応答においては,地盤の性質やその不均質性によって波動伝播経路や増幅特性が異なり,入力の位相差や振幅差が生じる。それによって同じ地震波でも入力時には異なる地震動となる。実際の地盤においては,局所的に複雑で不均質なものが多く,均質地盤はあまり見られない。特に,建設範囲の広い空間構造物においては,基礎部の地盤が均質である可能性は低く,地表面の空間変動による地震応答性状への影響も大きいことが明らかとなっているため,地盤の不均質性を考慮することは重要である。また,建物が硬い地盤の上に建つ場合,基礎の動きは地盤の動きとあまり変わらない。そのため,地盤の剛性を無限大とみなし,地盤の存在を無視する基礎固定端として,建物の地震応答解析を行っても妥当な応答が得られる。

一方,軟弱な地盤の上に建つ場合,特に建物に比べ地盤の方が相対的に軟らかい場合,建物の動きにつられて直下の地盤が大きく変形する。この変形により,建物は剛体的な横移動や回転を生じる。結果として,建物の基礎の動きは,建物が存在しないときの地盤の動きとは大きく異なったものになる。以上のことから,地盤の性質は構造物の地震応答に影響を与える要因の一つであり,この影響を分析するためには,地盤との連成効果を地震応答解析の際に考慮する必要がある。

さらに,空間構造物は重層構造物とは力学性状や振動特性の点において異なる。これを受けて,空間構造物を対象とした地盤との連成効果に関しては数多くの研究が行われており,地盤条件の違いが空間構造物の地震応答性状に及ぼす影響について考慮した研究は多数存在する。しかし,構造物の下部構造と地盤条件との関係に着目した研究は数少ないため,検討が必要である。

研究目的

本研究では,屋根型円筒ラチスシェルを対象とし,水平方向に分割された地盤モデルの地盤条件および構造物の基礎構造の寸法が,杭基礎に支持された空間構造物の振動特性,地震応答性状に与える影響について解析的検討を行い,得られた解析結果より,地盤のN値や構造物の杭と基礎梁の寸法が地震応答性状に与える影響を分析する。
また,連成を考慮しない場合についても解析を実行することで,地盤と建物の連成解析が必要となる条件を明らかにする。

対象構造物

地盤モデルの写真

▲ 解析モデル

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