研究テーマ:単層ラチスシェルの信頼性設計
研究背景
現在,日本では主に,許容応力度設計法が用いられている。許容応力度設計法には,部材の終局強度を精度よく評価できないなどのデメリットがある。そのことを受け,欧米の先進国では,信頼性理論に基づく限界状態設計法が定着しつつある。鋼構造の終局限界状態設計に関しては,「鋼構造限界状態設計指針・同解説」や米国鋼構造協会の荷重耐力設計法(LRFD)があり,部材強度に関してはこれらが適用される。一方で,ラチスシェルの座屈は構造物全体の崩壊にも対応する現象であり,設計で想定する安全性指標の値は部材とは異なると考えられるが,空間構造物を対象に信頼性解析について検討した研究は少ない。さらに,ラチスシェルには様々な全体形状,網目形状等があり,その座屈性状も異なるため,対象構造物が変わると信頼性指標も変わると考えられ,情報の蓄積が必要である。
一方で,信頼性設計にはレベルⅢからレベルⅠまでの三段階の設計水準があり,ラチスシェルをどの水準で設計するべきかについては議論の余地がある。特にレベルⅠに該当するLRFDについては,現在日本においても「部材検定と応答評価(案)」により許容応力度設計の読み替えの手法が検討されていることからもラチスシェル屋根構造における信頼性解析で得られた情報を活用した設計解析事例の蓄積や設計指針の構築が必要である。
研究目的
本研究では,半開角,部材細長比が異なる周辺ピン支持された屋根型円筒ラチスシェルを対象に信頼性解析を行い,座屈荷重の荷重係数と信頼性指標の関係を明らかにした上で,信頼性解析結果の検証とその結果を反映した設計手法およびフローの構築,設計事例の提示を行う。
対象構造物
本研究の対象は,周辺ピン支持された屋根型円筒ラチスシェルです。