研究テーマ:実構造物の3Dスキャンおよびスキャンデータを用いた構造解析による構造特性検証
研究背景
近年,レーザスキャナなどの3次元計測機器の普及により,建築物の3Dスキャンが手軽に行えるようになってきている。建築分野においては,ICTの導入を通じた生産性向上が求められる中で,点群データを活用した測量技術が注目されている。このような流れを受けて, 3Dスキャンの具体的な方法に関する提案がなされている。また,文化的価値のある建築物の記録を残すことを目的に,現在使用されている建築物を解体前にデジタルアーカイブ化して保存する取り組みも行われている。
一方で,既存建築物に対して3Dスキャンを行い,得られたスキャンデータを用いた構造解析が可能となれば,実態に即した構造モデルの作成が実現し,耐震診断や改修設計の効率化・高度化に貢献できるものと考えられる。そのことを受けて,設計図のない建築物の3Dスキャンデータを用いたBIMデータの構築や耐震改修への活用について研究がなされている。
また,レーザスキャナにより取得した点群情報から三次元解析モデルを構築する方法について検討している論文もあり,3Dスキャン技術を構造解析へ応用する可能性を示している。このように,3Dスキャンによって建築物のデジタルアーカイブ化,さらには3Dスキャンデータを利用したBIMデータの構築や耐震改修等への利用が検討されているが,その情報の蓄積は十分とはいえず,更なる具体的な建築物を対象とした実施が望まれる。
研究目的
本研究では,1978年に竣工した日本学園中学校の体育館(設計:池原義郎)を対象として,建築物のデジタルアーカイブ化および得られた3Dスキャンデータを利用した構造解析モデルの構築,さらには構造解析モデルを用いた構造特性の把握を目的とする。 本研究で使用する機器は,Matterport社製のMatterport Pro3およびLeica社製のBLK2GOである。これらの機器によって取得した点群データから,構造部材の節点や寸法を抽出し,数値解析モデルを構築する。
さらに,図面情報に基づいて作成した構造モデルと比較検討を行い,点群データを用いたモデル化の精度を評価する。また,機器間の性能差や計測精度の違いが構造解析の結果に与える影響についても考察を行う。
対象構造物
日本学園体育館(設計:池原義郎,1978年竣工)本体育館の屋根構造はシステムトラスを用いた二層立体トラス構造である
▲ 日本学園体育館の写真
