step05 事例発表(ケーススタディ)の資料作成

この講座の目標は、情報システムの概要を理解してもらうとともに、具体的な情報システムについて調べて発表できるスキルを養うことである。このstepでは、各自が行う情報システムの事例発表(ケーススタディ)の方法について解説する。

情報システムの一般形式

step01のイントロダクションで述べたように、情報システムの定義はあいまいであり、しかも世の中には多種多様なかたちの情報システムが存在する。したがって、その共通部分を取り出して一般形式とするのは、なかなか困難なのであるが、皆さんが事例発表をするにも、調べた情報を整理するために最低限の枠組みは必要だろう。
図5-1に、情報システムの一般形式を図示する。

図5-1: 情報システムの一般形式

図中の各ステップは、システムが扱う情報の流れに沿った工程とも考えられる。それぞれについて、補足説明をする。

情報の収集
まず、主として情報を処理するシステムである以上、必要な情報はシステムの外部から取り入れなくてはならない。情報は世界に遍在しており、そのうちシステムの目的に適うものだけが選択的にシステム内部に取り込まれる。Webの掲示板システムのように、利用者が情報を提供することもあれば、センサーなどの機器によって自動的に取り込まれることもある。高度な製造管理システムのように、純粋に情報だけを処理するシステムでない場合は、原材料や部品などの物質や、製造に必要なエネルギーも取り込むけれど、情報システムという観点からそれらは無視することにする。
情報の蓄積
システムに取り入れた情報は即座に使われるとは限らず、むしろ一定期間にわたって保存・蓄積する場合がほとんどである。そのためのキーテクノロジーデータベースと呼ばれるソフトウェアである。データベース自体もソフトウェアシステムであるから、言い換えれば、多くの情報システムはサブシステムとしてデータベースを内包しているということである。※1
情報の処理
収集した情報や、以前に収集して蓄積されていた情報を元に、コンピューターが処理を行い、利用者に提供する情報やシステムが利用する情報を作り出す。
情報の伝達
処理された情報を、実際にそれを利用する人々へと届ける。たとえば、交通渋滞の情報を運転者に届けるためには、VICSという(サブ)システムが利用されている。工業生産や農業生産に関わるシステム、パーソナル情報システムなどでは、このフェーズはあまり目立たないかもしれない(処理と利用が近いところで行われるので)。
情報の提供・利用
提供・利用と2通りに書き分けたのは、情報だけを処理する純粋な情報処理システムと、モノやエネルギーも扱う情報システムの区別を想定したからである。たとえば、Webの検索システムは、検索結果ページという情報をWebページの形式で利用者に提供する。スマートグリッドという情報システムは、地域毎の電力の需要と供給の情報を元に、最適な配分計画を立て、その情報を利用して地域間で送電を行う。

1 このように、ソフトウェアや情報システムは、いくつものサブシステムの階層からなっていることが多い。あるシステムに内包される複数のサブシステム間には、上位・下位・兄弟などの相互関係が成り立ちうる。

この図に挙げた、情報システムの5つの要素の内、伝達を除いた4つは、個人が知的生産活動を行うときの4フェーズの活動と、それぞれ対応している。たとえば、授業の課題として特定のテーマを決め、インターネットを利用して調査を行い、その結果をプレゼンする場合を考えて見ればわかる。つまり、知的生産活動を行う個人は、インプットとアウトプットを伴うある種の情報システムだと見なせるわけである。次回からの講座で、皆さんには具体的な情報システムを1つ選んで事例発表をしてもらうのだが、そのための手順もこのようになるだろう。
情報システムの3大要素、すなわち

は、黄色い「付せん」で示したように、それぞれの段階で要素技術として利用される。インターネットが2箇所に現れるのは、双方向メディアだからである。

事例発表資料の作り方

各自が行う事例発表のタイムテーブルなどはstep01のイントロダクションで述べた通りである。要約すると、

プレゼンと発表資料は、もちろん皆さんの成績評価に利用するが、むしろ、常に最新の情報システムの資料を集め、毎年この講座を充実させるために貴重な素材となる。興味深いシステムについては、次年度以降の講座において、概説で紹介することになるだろう。
発表資料のテンプレート(PowerPointファイル)を用意したので、ダウンロードして利用してもらいたい。図1で解説した、情報システムの4要素に沿った形で作られている。
多くの人は、Web上で取材して資料をまとめるだろうが、その際、システム全体を描いた図を必ず入れてもらいたい。PowerPointなどを使って自分で描いてもよいが、大抵の場合、そうした図がすでにあるはずだ。画像検索などを活用すること。※2

2 Webサイトに掲載されている図や写真には、通常、著作権や肖像権があるが、皆さんの発表資料はこの講座の外には出さないので、気にしなくてもよい。

ここに挙げたのはテンプレートであり、プレゼンに含めるべき必須の要素を示したに過ぎない。各自、自由に拡充してよいが、発表時間(15分)との兼ね合いを考えること。

プレゼンにあたっての注意

事例発表に役立つ参考サイト集

システムインテグレータ(SI)などの企業にとっては、自社が開発した情報システムを広く紹介することで技術力をアピールでき、さらなる受注につなげる可能性もあるので、守秘義務などに抵触しない範囲で、積極的にシステム事例を紹介している。これらは皆さんの事例発表に対する情報源として役立つ。
ただし、慣れていないと、どこを探したらよいか分からないといった事態にもなる。そこで、ここでは情報システム全般、または各分野ごとのシステム事例を探しやすいウェブサイトを集め、サイト集として掲載する。 このサイト集の作成にあたり、

に多大な協力をいただいたことに感謝します。

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