特色ある研究
量子固体物性研究室
新物質や新現象を探索し、量子ビームでそのメカニズムを解明
安井 幸夫 教授 | |
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1999年 | 名古屋大学大学院理学研究科修了、博士(理学) |
日本学術振興会特別研究員(PD)、名古屋大学大学院理学研究科助教等を経て、2012年4月より明治大学理工学部勤務 |
通常、磁性と強誘電性は共存しにくいと考えられてきたが、CuO2リボン鎖と呼ばれる銅イオンと酸素イオンが一次元的に連なる化合物において、らせん状にスピンが配列することに付随して強誘電性が誘起されることを発見し、従来の概念を覆した。
未知のセラミック(金属酸化物)を電気炉を使って合成し、低温や高温での電気特性・磁性・誘電性を調べることで、今までに無い異常な物性を示す物質や新しい機能を示す物質を探索しています。面白い物性を示す物質を見つけた時には、中性子線や放射光(量子ビーム)を使って原子の配列(結晶構造)やスピンの配列(磁気構造)を原子レベルで調べ、そのメカニズムを解明します。
Q: セラミックというと茶碗のような陶磁器の仲間でしょうか?
A: 広い意味でセラミックは陶磁器一般を指しますが、ここでは狭い意味で金属酸化物、遷移金属元素を含む化合物を空気中で加熱し酸化させたもの、を指します。セラミックは電気を流さない絶縁体のイメージがありますが、物質によっては電気を流して金属的性質を示すものがあり、他にも磁石にくっつくものや強誘電性を示すものもあり多様な性質を示します。史上最も高い超伝導転移温度を示す物質はセラミックの1つです。
Q: 量子ビームとはどんなものですか?
A: 加速器などで人工的に作り出された中性子線や放射光(エックス線)を指し、強度が高く、エネルギーが揃っていて、高度に制御されビームのように集束された人工の放射線です。原子間隔の距離と同程度の波長の中性子線や放射光を物質に当て、散乱され具合を測定することで、その物質の結晶構造やスピンの配列を知ることができ、原子レベルの情報が直接的に得られる強力な実験手段です。
現在の研究内容
(1)非平行な磁気構造や特異な磁気状態が生み出す異常物性の研究(2)量子スピンが引き起こす新奇な量子物性現象の探索
(3)結晶構造や含有元素の特徴を足がかりにして、物性が未知の金属酸化物を合成し、異常物性や新機能を探す