明治大学理工学部物理学科 Department of Phisics, Meiji University

特色ある研究

量子光学研究室

光で原子を操作する

立川 真樹 教授
立川 真樹 教授
1989年 理学博士 (東京大学)
1987-1997年 東京大学理学部物理学科助手
1994-1997年 アメリカ合衆国標準技術研究所(NIST)客員研究員
1997年より明治大学理工学部物理学科勤務
立川 真樹 教授
光で空中に静止した氷の結晶(中央の輝点)。きれいな雪に成長すると面白いですね。

量子光学研究室では、光と原子の相互作用、とくに原子が光から受ける力について研究しています。皆さんが太陽光を浴びたとき、まぶしいとか熱いとか感じることはあっても、光に押されている感じはしませんね。ところが、実際には光の進行方向に押されているのです。この力-光の放射圧―は、重力や摩擦力など他の力に比べて格段に弱いため、ふだん我々が実感することはまずありません。しかし、ミクロンサイズの微粒子や原子にとっては無視できない力となり、その運動状態を大きく変化させることができます。例えば、気体の原子をレーザー光の放射圧で押し返すことにより、数mKという極低温にまで冷却し、空中に光のわなを仕掛けて閉じ込めたりすることも可能です。こうして原子をじっくり観測してやると、量子力学が予見する原子の波動性を解明したり、エネルギー準位構造を精密に計測したりできるようになります。また、一旦止めた原子や微粒子を光の圧力で加速して、好きなところに移動させることも可能です。将来、同位体分離や材料設計などに応用できるかもしれません。

Q: なぜ、レーザー光で気体を冷やせるのですか。それって冷凍光線?
A: 普通は光を当てると物は温まるのに、逆に冷やせるなんて不思議ですね。ある工夫により、不規則に飛び回っている原子に、常に反対向きにレーザー光線を当てられるようになります。その結果、原子は光に押し返されて減速しますが、温度は原子の運動の激しさを表す指標ですから、これは原子集団を冷やしたことになるのです。光そのものが冷凍光線というわけではなく、このような仕組み全体が気体原子を冷やす冷凍装置と考えたほうがいいでしょう。

現在の研究内容

(1)光誘導路中の原子のカオス運動の研究
(2)光トラップによる氷結晶の空中浮遊
(3)原子の波動光学のための極低温原子ビームの開発