明治大学理工学部物理学科 Department of Phisics, Meiji University

特色ある研究

ミクロ電子物性研究室

ミクロな磁石で物質を探る

菊地 淳 教授
菊地 淳 教授
1995年 博士(理学)
東京理科大学理工学部助手、東京大学物性研究所研究員等を経て、 2005年4月より明治大学理工学部物理学科
菊地 淳 教授
充填スクッテルダイト型化合物
PrFe4P12の結晶構造。緑丸で示したプラセオジム(Pr)原子が立方体の頂点と中心に位置し、それぞれ12個のリン(P)原子(桃色)にカゴ状に囲まれた特徴的な構造をとる。

物質を磁場中に置き、FM~TV周波数(数MHz~数百MHz)程度の電磁波を当てると、物質に含まれる元素の種類に応じてある特定の周波数の電磁波が吸収されます。これが「核磁気共鳴(NMR)」と呼ばれる現象で、原子核がミクロな磁石であり、磁場中でコマのように回転すること(歳差運動)に原因があります。当研究室では原子核の持つこの性質を利用して、物質を構成する原子や電子といったミクロな粒子の状態や運動の様子を調べ、電気を流す流さない、磁石に付く付かないといった物質の「個性」がなぜ現れるかについて研究しています。

Q: 「原子核」と聞くと危険なイメージがありますが・・・。
A: 大丈夫、安全です。原子核の中にはウランやプルトニウムのように放射線を出す不安定なもの(放射性元素)と、放射線を出さない安定なものとがあります。我々の身の回りにある元素の多くは安定で放射線を出しません。NMRで主に利用するのは後者のような安定な元素であり、被曝の危険性はありません。

Q: どのような物質が研究対象になるのですか?
A: NMRが観測可能な元素(たくさんあります)を含む物質であれば、原理的にどのようなものでも対象にできます。例えばNMRの応用技術である医用断層撮影(MRI)では、人体に多量に含まれる水素原子核(1H)の共鳴信号を観測し画像化しています。当研究室では物質の示す磁気的性質に興味を持ち、磁気を帯びた物質(磁性体)についての研究を中心に行っています。

現在の研究内容

(1)鎖状・層状構造を持つ磁性体(低次元磁性体)の磁気的性質
(2)遷移金属酸化物における電子相関効果、金属・絶縁体転移
(3)希土類化合物の磁性と多極子秩序