特色ある研究
原子・光科学研究室
極低温の巨視的量子現象を探る
金本 理奈 教授 | |
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2004年 | 東京工業大学大学院理工学研究科修了 博士(理学) |
2004-2006年 | 大阪市立大学 博士研究員 |
2006-2008年 | アリゾナ大学 博士研究員 |
2008-2012年 | お茶の水女子大学 特任助教 |
2012年より明治大学理工学部物理学科勤務 |
放射圧を受けて振動する光共振器のミラーと同様に低温原子の集団運動も機械振動子のようにふるまう
原子・光科学研究室では、絶対零度近くまで冷却された物質で見られる量子現象を解明する理論研究をおこなっています。ここで「物質」とは、ボース統計やフェルミ統計に従う中性原子からなる気体や、光を増幅する共振器のミラーなどに相当します。レーザー光によってこれらの物質を冷却し、極度に低い温度にすることにより、巨視的な量子現象を観測するために好都合な環境を創りだすことが実験で可能です。更に光は冷却だけでなく、物質の特定のモードを励起させたり、ポテンシャルを作ったりと、自在に実験パラメータを制御することができます。結果、様々な理論模型を実験で実証することが夢ではなくなり「実験でこういう技術があるなら、こういうことを考える(計算する)ことに意味があるのでは?」という課題が出てきたり、「こういう思考実験をすると面白い現象が理論的に予測されるけれど、実験で確認できるはず」などと、理論と実験の相補的な発展が可能となってきます。
Q: 極低温とはどれくらいの温度ですか?冷やすと何が面白いのですか?
A: 原子やミラーなどの物質にうまくレーザー光を照射すると、物質の運動は光による有効的な摩擦力を受けて遅くなり、大体10のマイナス3乗ケルビンまで冷えます。更に原子の場合、カップに入れた熱い飲み物が冷えていくのと同じ原理を用いることで、最終的に10のマイナス9乗ケルビンくらいまで冷却されます。このような温度になると、原子の波としての性質が顕著に現れて原子気体のボース・アインシュタイン凝縮が生成され、様々な物性現象を観測できます。
現在の研究内容
(1)原子の量子オプトメカニクス(2)相互作用する光と原子の自己無撞着なダイナミクス
(3)極低温原子気体における多体相関
(4)コヒーレント状態を用いた量子化法