合成有機化学研究室

合成有機化学研究室では

有機化学を利用して
  1. 生物活性化合物の全合成と医薬品や農薬品開発への応用
  2. 希少な天然資源の人工合成や新規機能性材料の開発
  3. 新規有機合成反応の開発
を行っています。

これまでに合成した化合物は在庫があればすぐに提供可能です。在庫がない場合やこれまでに合成されていない関連化合物は合成しますので,お気軽にご連絡ください。これまでに,国内外の大学や病院,企業と共同研究を進めてきました。これからも積極的に共同研究を実施していますので、共同研究をご希望の方は「narihito[aaa]meiji.ac.jp」までご連絡ください([aaa]を@に変えてください)。よろしくお願いいたします。

1. 生物活性化合物の全合成と医薬品や農薬品開発への応用

植物や動物,微生物などが産生する天然有機化合物は、生命現象に密接に関わっており、いまなお重要な課題を与え続けています。また、様々な生物活性(抗がん活性,抗菌活性,抗炎症活性,抗アレルギー活性など)を示すため、医薬品や農薬品、香料の開発に利用されています。生命現象の解明や医農薬品の開発に天然有機化合物を利用する場合は、大量に・安価に・持続性のある供給が求められます。私たちは,興味深い化学構造や生物活性を持つ分子を合成化学的手法による供給を目指して、研究を進めています。

1-1. 強力な抗炎症作用を示すレゾルビン類の合成と抗炎症薬の開発

炎症性疾患は肺炎やぜんそく,アトピー性皮膚炎など、非常に多くの病気が知られています。私たちは極めて強力な抗炎作用を示す脂質代謝産物の化学合成を行っています。純度が高く,大量供給可能な合成法です。ここに示した化合物以外にも,様々な脂質代謝物を合成しています。合成した化合物は生物学的研究や創薬研究へ展開しています。これまでに合成した脂質代謝産物を下記に示します。研究業績も参考にしていただければと思います(http://www.isc.meiji.ac.jp/~narihito/j/publications.html)。

化合物の提供をご希望の場合や,関連化合物の合成に関する相談がありましたら,遠慮なくご連絡いただければと思います。

1-2. 植物関連化合物の合成と生物学的研究への応用

植物は害虫に葉や茎を食べられると,その葉や植物が枯れてしまいます。また,天敵が近づくと植物から毒や悪臭を放つこともあります。これら,植物のありふれた現象はよく知られているものの,なぜそのような現象が起こるのかは未だに明らかになっていません。私たちはこのような現象を引き起こす化合物を世界で初めて人工的に合成し,その発現メカニズムについて明らかにしました。現在,この成果を応用して害虫に強い植物の開発や成長の早い植物の開発を展開しています。

その他,様々な植物関連化合物や農薬関連化合物の合成を行っています。共同研究や化合物の提供をご希望の場合は,遠慮なくご連絡いただければと思います。

1-3. 生物活性化合物の全合成

興味深い化学構造や生物活性をもつ天然有機化合物の合成(全合成)を進めています。特に複雑な化学構造をもつ化合物は、我々が独自に有機反応を開発して全合成を目指しています。

2. 希少な天然資源の人工合成や新規機能性材料の開発

天然にはとても貴重の材料がたくさんあります。例えば,漢方や化粧品,香料の原料などの天然素材は,有限の成分です。私たちはこれらを簡単に入手できる原料から有機化学を利用して作ることで,安く,大量に,そして安定供給できる方法を研究しています。また,天然に存在していない新しい機能を持つ人工材料の開発も行っています。

2-1. 未利用資源を利用した機能性材料の開発

サーキュラーエコノミーの実現に向けて,大量に廃棄されるゴミの有効利用があげられる。我々は,これまで捨てられてきた食糧の非可食部に注目し,非可食部に含まれる化合物を利用して,新規機能性材料の開発を行っている。開発した材料は、化学的・物理的性質を明らかにして、製品化を目指した研究を進めている。

2-2. 重金属や放射性元素の選択的捕捉剤の開発

有害物質を廃棄する場合には、安全にかつ環境に配慮した廃棄が必須である。我々は精密有機合成を利用して、重金属や放射性元素を選択的に補足する物質の開発を目指している。

3. 新規有機合成反応の開発

医薬品や農薬品,天然材料の多くは3次元の立体構造を持っています。これらを人工的に作るためには,設計図通りに精密・正確に作らなくてはいけません。もし設計図通りに作れないと,効果がなくなったり,毒になる可能性があるため,その方法の開発が世界中で行われています。私たちは,設計図の分子を誰でも簡単に作ることができる,新しい方法を独自の切り口で研究しています。

3-1. エノールホスフェートの簡便合成法の開発,位置選択的脱ヨウ素化反応の開発,およびこれらの反応を使ったモノテルペン型生物活性化合物の簡便合成

モノテルペン骨格の新しい合成法として,エノールホスフェートを活用した合成法を開発しました。またこの反応を利用して,様々なモノテルペンを持つ生物活性化合物の合成を達成しました。

3-2. 基質の立体化学を活用した位置および立体選択的なSN2反応やSN2'反応を開発と抗炎症薬の合成

プロパルギルアルコール誘導体を基質とした求核置換反応には,2つの反応点が存在するため,その制御が重要である。我々は用いる試薬の種類や当量によりその反応性を制御することに成功しました。そして,その反応を利用して抗炎症薬の簡便合成を達成しました。

3-3. 生体模倣型有機反応の開発

我々は生物における代謝を参考にして,新しい有機反応の開発を目指している。最近では,(1)グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素により進行する生体酸化模倣反応を開発した。また,(2)補酵素NADHを模倣した新しい有機分子の創製や有機反応への利用を目指して研究を進めている

3-4. 光学活性ラクトンの合成法開発とその応用

光学活性ラクトンは天然有機化合物に良く見られる構造です。我々は計算化学に基づく反応予測を利用して、光学活性ラクトンの新しい合成法の開発を行っています。開発した反応を利用して、天然物合成や医薬品・農薬品の創製、香料合成へ展開しています。