ぼくの子育て歳時記(5)育児にも夏休みがほしい!

   西川伸一  * 投書で闘う人々の会『語るシス』第11号(1999年8月)掲載

 今年も暑い夏がやってきた。昨年は、緯度でいえばカムチャツカ半島くらいにあたるイギリスにいたので、暑さ知らず。余計に暑さがこたえるように感じる。娘にとってははじめての日本の夏になる。

 夏の育児の大敵は熱中症とあせも。外出のときには常に帽子をかぶらせ、小型のペットボトルにミネラルウオーターを入れて持ち歩く。寝るときは、少し窓を開け風通しに気をつかう。娘と同じ保育園に通う男の子が、朝起きたら体温が38度5分まで上がっていたというから、ますます用心深くなってしまう。

 それでも娘は、寝苦しいと深夜に起きだし、水をせがむからよくしたものである。こちらの安眠が妨害されるのが玉にきずであるが。

 問題はあせもの方。新陳代謝が活発なため、少しでも放っておくと、あごの下や脇の下が垢だらけになる。しきりに汗をかくから、あせももしょっちゅうできる。夜の入浴に加えて、朝、登園前にもシャワーを浴びさせて清潔に心がけている。

 というのも、あせもが悪化して湿疹に、さらにそれを化膿させてとびひになると、伝染性の皮膚病のため、医師の許可が出るまで登園停止となるからだ。娘はその「前科者」なので要注意である。こんな暑い中、娘の相手を何日も続けたら、ただでさえはかどらない仕事が滞って、お手上げになる。親の勝手な都合だが、なんとか元気に保育園にいってほしい。

 その保育園も「夏期特別保育」という夏休み態勢に入った。保母さんが交代で夏休みをとるので、「お父様、お母様のお休みの取れた時は・・家庭保育をお願い致します」とのこと。確かに、私も妻も夏休みだが、家でやる仕事を抱えている。日中、保母さんに会わないように身をひそめながら、ほぼ通常どおり預けることにした。

 しかしいうまでもなく、日曜日は一日中娘につきあうことになる。家の中で遊ばせていてはとてももたないので、どこかへ連れ出さざるをえない。妻が『東京子育てガイド』という本を買ってきて、それを参考に、子連れで出かけられるスポットを探し出す。チェックポイントは、ベビーカーの貸し出しがあるかどうか。

 先週は「府中市郷土の森」にある大きな池にいった。人工の池には岩場や噴水があって、中に入って水遊びができる。監視員もいる。プールには早い小さな子どもを遊ばせるにはもってこい。池の周囲にはビーチさながらに、パラソルとイスが用意されていて、生ビールまで売っている。至れり尽くせりである。

 夏休みなので、9時半にいったら、もう大勢の家族連れでにぎわっていた。娘に水泳を教えるお父さん。いうことをきかない息子を叱りつけているお母さん。自分も小さい頃はこうやって親の手を煩わせたのかと思うと、親のありがたみが身にしみる。愚かなもので、その立場になってみないとわからないのだ。

 ところで、私がオススメの子連れでいく穴場はギャンブル場。(もちろん『東京子育てガイド』には載っていません。念のため。)私の住まいから、競輪場、競馬場、競艇場すべてに自転車で20分以内でいくことができる。50円で入れて場内は広いし、クルマにひかれる心配もない。すぐに娘はうれしそうに歩き出す。

 客のガラが悪い、教育上よくないなどデメリットもあるが、まだ2歳に満たないので気にすることもなかろう。大切なのは2時間、安全に過ごせることなのだから。

 それにしても、ギャンブル場に集う人々をみているとおもしろい。非日常の気分を味わえて刺激的とでもいおうか。すべてのレースが終了した後、一杯飲み屋でおじさんたちが一様にビールびんを並べて、一人で飲んでいる姿には哀感が漂う。

 さて、来週の日曜日はどこにいこうか。


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