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清楽譜を読む──『月琴独習自在』を例に


2008-8-29 最新の更新 2010-9-11
 明治中〜後期の標準的な清楽譜の一例として、 佐々木胡月著『月琴独習自在』(明治26年2版、1893)と鈴木孝道著『月琴独習自在』(明治32年13版、1899)の一部を掲載します。
[奥付と口絵]  [楽器の説明]  [韻語・収録曲目・本文]
[九連環]  [漳州曲]


 同一の『月琴独習自在』でも、わずか六年で著作者や専売所、刷り具合などが大きく変化していることがわかる。
明治26年(1883)の2版
奥付(クリックすると拡大)。

明治廿六年三月三日印刷
仝 廿六年三月十一日発行
仝 廿六年七月廿九日版権譲受
仝 廿六年八月七日再版

著作者 佐々木胡月
 大阪市東区安土町四丁目三十八番邸
発行者 石多忠兵衛
 大阪市西区阿波堀通二丁目六番邸
印刷者 山口恒七
 大阪東区備后町心斎橋筋角
専売所 吉岡平助
 大阪南区心斎橋北詰
専売所 中村芳松
 大阪東区安土町四丁目卅八番邸
専売所 積善館
口絵。クリックすると拡大。

月琴と、日本の三味線。若い男女による合奏。

後ろの壁に、楽器が二本(琵琶と、提琴or板胡)掛かっている。

明治32年(1899)の13版
奥付(クリックすると拡大)。

明治廿六年三月三日印刷
仝 廿六年三月七日発行
仝 廿六年七月廿九日版権譲受
 …(中略)…
仝 卅二年二月一日第十二版
仝 卅二年七月十日第十三版

著作者 鈴木孝道
 大阪市南区末吉橋四丁目八十九番邸
発行者 中村芳松
 大阪市南区鹽(=塩)町四丁目百六十七番邸
印刷者 大垣弥太郎
 大阪市南区心斎橋北詰
専売所 中村鍾美堂
 東京市神田区錦町二丁目六番地
仝 鍾美堂出張店

口絵。クリックすると拡大。

月琴と、日本の三味線。若い男女による合奏。
女性の顔に、口ヒゲのような汚れがあるのが惜しい。

後ろの壁に、楽器が二本(琵琶と板胡か?)掛かっている。

↓【参考】15版(1906年=明治39年7月27日出版)の奥付。




2版の楽器の図説。クリックすると拡大。月琴・胡琴・龍笛(清笛)の音の合せかたを解説している。 13版の同図の刷りは、かなり悪い。

【月琴】
(調弦法の解説) 調子合セ方 上ノ糸四音ニ合セ 上ノ方[イ四]ノ音ト ハナシテ引六ト合ス
(笛の音と合せて調弦する方法の解説) 龍笛三六ト合ス可 月琴三六ト合ス
(開放弦の音高の解説) ハナシテ引ヲ上ト云 ハナシテ引ヲ六合ト云
(月琴の調弦はバイオリンやマンドリンと同じ五度調弦。それぞれのフレットの音高の対応を示す)
[イ四][イ合]一の糸・二の糸(低音部)
[イ六]
三の糸・四の糸(高音部)

【胡琴】
胡琴ノ調子 月琴ノ尺ト胡琴ノ尺ト合スベシ
ホソキ糸 ハナシテスルヲ尺ト云 太キ糸 ハナシテスルヲ大合ト云
(細い高音の糸の開放弦を擦る音を「尺」と呼び、太い低音の糸の開放弦を擦る音を「大合」と呼ぶ)

【龍笛】
(笛膜を張ることの説明)
竹紙張リ ヨウシワノヨラサルヨウハルベシ
(笛膜をこの穴に張り、よく皺が寄るように張ること)



13版の「韻語」「目録」「本文」。クリックすると拡大。

日本俗曲月琴独習自在目録
春さめ あさくとも 仝かへうた 大津ゑぶし 海安寺 十日ゑびす 琉球うた  赤の御縁(本編では「亦(また)の御縁」) おきのど中 春のあけぼの ちまたちまた おとし文 金比羅ふねふね 四季  黒かみ 四季今様春の部 四季今様夏の部 仝秋の部 仝冬の部 浅沢 丹後の宮津 仝 うた 梅の春

唐音雅曲月琴独習自在目録
算命曲(ソアン ン キヨ)  九連環(キウ レン クワン)  抹梨花(メ リイ フハア)  四季(スイ キイ)  月花集(エ フハア チユイ)  剪々花(セン セン フハア)  鳳陽調(ホン ヤン チヤウ)  紗窓(サン チヤン)  漳州曲(シヤン チユ キヨ)  哈々調(ハ ハ チヤウ)  久聞(キウウヱン)



13版の「九連環」歌詞と工尺譜。クリックすると拡大。
MP3で歌を聴く


この曲について、詳しくはこちらの頁


13版の「漳州曲」歌詞と工尺譜。クリックすると拡大。
MIDIで旋律を聴く


この曲について、詳しくはこちらの頁

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