KATO's HOME > 東アジア芸術論 > このページ

母語と母国語 one's mother tongue and national language of one's mother country

Last updated 2021-4-23 Since 2019-4-25


石川啄木(1886-1912)の短歌
ふるさとの訛なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく
furusato no namari natsukashi teishaba no hitogomi no naka ni so o kiki ni yuku
AT THE STATION I slip into crowd / Just to hear the accent / Of my faraway home town. ロジャー・パルバース(Roger Pulvers)『英語で読む啄木』(河出書房新社、2015年)より

https://www.youtube.com/watch?v=xNd7d951NGo&list=PL6QLFvIY3e-n7vzDUdft7N0zBFWqNPadb

 英語圏では母語と母国語の区別が曖昧。英語圏では日本の「国語」にあたるぴったりとあたる概念は存在しない。アングロ・サクソン系の社会では、政府が国民の言語に介入して国語改革や文字改革をするのはよくないと考えられる。英国ではOED(Oxford English Dictionary)が、米国ではWebster's Dictionaryが権威ある典拠となっている。英語のスペルがいまだに「旧仮名遣い」であり、また国や地域ごとのスペルの差異が統一されていない理由は、ここにある。
 ドイツやフランス、日本その他の東アジア諸国には「国語」がある。国民の言語に政府が介入するのは当然と考えられている。日本人は政府が決めた「常用漢字」や「新かなづかい」を当たり前のように遵守する。また義務教育の授業課目も「国語」であり、「日本語」ではない。
 英語圏の学校では、「国語」の授業科目名もEnglish、「英語」の授業科目名もEnglish。
 日本の学校では、日本語を母語とする生徒のための「国語」と、日本語を母語としない人むけの「日本語」の授業は、科目名も教員の資格も異なる。
 中華人民共和国も日本と同様、「漢語」(日本の「日本語」に相当)、「普通話」(日本の「共通語」に相当)、「語文」(日本の授業科目名「国語」に相当)は区別する。

西欧日本本土中国本土朝鮮半島
普遍性:古典言語 classical languageラテン語
漢 文
特殊性:日常言語 current language各国語日本語中国語朝鮮語
★加藤徹[ 漢文のすすめ――未来を考えるヒント]
 (文部科学省検定済教科書『新編 国語総合』大修館書店、pp.292-295)

※ラテン語のアニソン「リリウム(Lilium)」は海外のキリスト教圏で絶大な人気←ネットで「Elfen Lied OP lilium」で検索。
https://www.youtube.com/playlist?list=PL6QLFvIY3e-liUM_ryyNIcF3CP8lU9pVI
※中国では漢文のことを「古文」「文言」「古代漢語」と呼ぶ。
【参考】卒賦一律呈成学士  木下順庵
卓犖高標挙彩霞。 英才況又玉無瑕。 登科蚤折三秋桂、 随使遙浮八月槎。 筆下談論通地脈、 胸中妙思吐天葩。 相逢何恨方言異、 四海斯文自一家
――『錦里文集』巻十二「対韓稿」(『詩集 日本漢詩』第十三巻、汲古書院、昭和六十三年十月)
 江戸時代の知識人・木下順庵が、来日した朝鮮通信使と応酬した漢詩。日本語や中国語は「方言」だが、「斯文」すなわち漢文は儒学に裏打ちされた普遍言語であり、二千年前の先祖や二千年後の子孫とも、また、外国人と「対話」するツールであった。
cf.[共通祖先を探せ][先哲叢談 漢文選][基層文化・金万重(김만중)]

★大半の日本人にとって、母国語は日本の共通語だが、母語は故郷の方言である。母語と母国語が衝突した場合は、母語のほうが優先する
参考 [なまり亭]。

子宮の中の胎児は母親の声や歌、言葉を記憶している
参考 [ためしてガッテン スペシャル「特集・赤ちゃんのびっくり新常識」2003年8月13日放送 NHK総合 ]

★母国語と母語のねじれに苦しむ国や地域もある。

★加藤徹「グローバル化と京劇と「クレヨンしんちゃん」の関係」、『明治大学リベラル・アーツ・フォーラム』第20号(明治大学和泉委員会、2017年3月)、pp.7-9 [PDF 723kb]
外部リンク
 [少数言語復興に日本アニメが果たす役割--スペイン・ガリシア自治州の場合 Contribucion de los dibujos animados japoneses a la Normalizacion Liguistica en Galicia]
 [日本人にとっては不思議に思えるけど、色々と複雑な事情があるんだよ]
 [カタルーニャ独立運動の象徴が『クレヨンしんちゃん』!? その意外なつながりとは…]
 [スペインでの独立運動に「クレヨンしんちゃん」が使われる深い理由]
 [なぜカタルーニャ州では、「クレヨンしんちゃん」が独立のアイコンなのか?]
★人工言語 artificial language ←→  自然言語 natural language
 接触言語:ピジン言語 pidgin language → 母語化:クレオール言語 creole language
  cf.ソロモン諸島のピジン語(Pijin Language 「Pidgin languag」ではなくクレオール言語)、台湾の宜蘭クレオール、等々
  世界各国の「国語」も、歴史的にはクレオール言語であったことが多い


KATO's HOME > 東アジア芸術論 > このページ