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Bricolage ブリコラージュ

Last updated 2021年5月31日 Since 2021年5月28日

ブリコラージュ(bricolage)は、芸術的なものを理解する上で重要な概念の一つ。
本来は文化人類学の用語だが、現在ではさまざまなジャンルで当初とは違う意味用法でも使われる
「コラージュ(collage)」の意味用法との違いに注意すること。

○コトバンクの[「ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「ブリコラージュ」の解説 ]より引用。(引用開始)
ブリコラージュ bricolage
人類学用語。本来,片手間に行う雑多な手仕事を意味する言葉で,「器用仕事」などと訳されることもある。フランスの人類学者 C.レビ=ストロースが,著書『野性の思考』 (1962) のなかでいわゆる「未開」社会の思考様式の特徴を示すために用いた。彼によれば,「未開」社会の思考では,身近な具体的対象が状況に応じてさまざまな意味をもつ記号として用いられる。これを,ありあわせの物でやりくりするブリコラージュにたとえた。(以下略、引用終了)

以下、クロード・レヴィ=ストロース『野生の思考』(大橋保夫訳、みすず書房、1976)より引用。
 ブリコルールは多種多様の仕事をやることができる。しかしながらエンジニアとはちがって、 仕事の一つ一つについてその計画に即して考案された購入された材料や器具がなければ手を下せぬというようなことはない。 彼の使う資材の世界は閉じている。そして「もちあわせ」、すなわちそのときそのとき限られた道具と材料の集合で何とかするというのがゲームの規則である。 しかも、もちあわせの道具や材料は雑多でまとまりがない。なぜなら、「もちあわせ」の内容構成は、目下の計画にも、またいかなる特定の計画にも無関係で、 偶然の結果できたものだからである。 すなわち、いろいろな機会にストックが更新され増加し、また前のものを作ったり壊したりしたときの残りもので維持されているのである。 したがってブリコルールの使うものの集合は、ある一つの計画によって定義されるものではない。 (定義しうるとすれば、エンジニアの場合のように、少なくとも理論的には、計画の種類と同数の資材集合の存在が前提となるはずである。) ブリコルールの用いる資材集合は、単に資材性[潜在的有用性]のみによって定義される。 ブリコルール自身の言い方を借りて言い換えるならば、「まだなにかの役にたつ」という原則によって集められ保存された要素でできている

★参考 [美術手帳 Art Wiki ART WIKI ブリコラージュ Bricolage]

★現代のゲームや芸術のブリコラージュでも「神話的思考」「呪術的思考」の活用は普通に見られる。
以下、 https://ci.nii.ac.jp/naid/110009559505
の論文紹介より引用。(引用開始)
『サクラ大戦』のブリコラージュ : テレビゲームにおける神話的思考
Le bricolage de Sakura Taisen : La pensee mythique dans le jeu video
川ア 瑞穂 Kawasaki Mizuho 国立音楽大学音楽研究科
抄録
「構造主義の父」とされるフランスの文化人類学者クロード・レヴィ=ストロース(1908-2009)は、神話研究の領域で殊に優れた業績を遺したが、主著『野生の思考』(1962年)は、構造人類学の重要な出発点となっている。『野生の思考』の第1章「具体の科学」は、芸術について研究する上でも非常に示唆的である。特にそこで提示される「器用仕事(ブリコラージュ)」としての「野生の思考」は、現代においてもなお、多くの芸術作品に見出すことができるように思われる。 本稿ではその一例として、1996年に発売されて大ブームとなったテレビゲーム『サクラ大戦』の分析を行った。特に楽曲分析を中心にして、『サクラ大戦』にブリコラージュ的手法が用いられていることを示し、現在のような「非真正な社会」においてもなお、芸術の分野には神話的思考の残滓が存在することを明らかにした。 (途中省略 引用者)
収録刊行物
音楽研究 : 大学院研究年報 25, 109-120, 2013-03 国立音楽大学
(引用終了)

○ブリコラージュという概念が生まれた背景
 19世紀の欧米人あいだで常識だった「文明人 >野蛮人=vという思い込みに対する反省が、20世紀に起きる。
 「文明」の対義語は、「野蛮」ではなく「野生」。野生の思考は、文明の思考と同等の価値がある。
 もし本当に文明の対義語が野蛮なら、最高の文明を誇るはずの欧米でなぜ2回も野蛮の極みである世界大戦が起きてしまったのか?
 1962年、フランスの人類学者・クロード・レヴィ=ストロース(Claude Lévi-Strauss)がLa Pensée sauvage(『野生の思考』、The Savage Mind)を発表すると、 人類学以外の学問分野や、芸術界にも大きな影響を与えた。
 ブリコラージュは、野生の思考の一部。

 文明:人工、都会的、農業的、culture(文化>耕す)、ゼミ(seminar 語源はラテン語のseminar(sēmen (“seed”) +‎ -ārium (“place for”)「種をまくためのところ」)
 野生:自然、原野的、狩猟・採取生活的

参考 明治大学 野生の科学研究所 http://sauvage.jp/  ツイッター https://twitter.com/science_sauvage

○ブリコルール bricoleur
 ブリコラージュを駆使する職人や技術者、クリエイター、アニメやゲームのキャラクターなどを指す。
 日本のアニメやアニソンには、ブリコラージュ的な名作が多い。
例 平沢進(ひらさわすすむ)は、宮沢賢治(みやざわ けんじ、1896年- 1933年)の影響を受けている。代表作「パレード」など。
 [ANISON (anime-songs) アニソン]


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