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道具における左と右
http://home.hiroshima-u.ac.jp/cato/hidari-migi.html
総合科目「自然界における左と右」 加藤徹 2006年6月26日10:30−12:00 総109
キーワード: 人体 脳 左利き 楽器 兵器
人体の左右非相称性
拙著『貝と羊の中国人』
新潮新書 最新刊
定価756円(本体720円)
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顔の左右非相称性
簡単な実験:自分の顔写真の真ん中に鏡を当てて見る。
顔の右半分だけでつくった顔、左半分だけでつくった顔は、どちらも不自然で不気味な感じになる。
実は、ヒトの顔は、左右で微妙に違う。
ヒトの顔が、老化にともない左右で微妙に変わる要因はさまざま:
心臓からの微妙な距離の違いの、長年の蓄積:顔の右半分のほうが早く老ける。
歯のかみ合わせの、左右のアンバランス;個人差が大きい。
脳の左右両半球の機能の違い:左脳は論理的思考、右脳は情緒的思考を担当。
人間の顔の右半分には左脳的な冷たい表情が表れ、左半分には右脳的な暖かい表情が表れる、という説。
映画俳優のオーディション
映画監督はいろいろな表情を撮りたがるので、左右相称の顔は敬遠される。
【参考サイト】 http://www.hc.t.u-tokyo.ac.jp/jface/
内臓の位置
五行
木
火
土
金
水
五色
青
赤
黄
白
黒
五方
東
南
中央
西
北
五時
春
夏
土用
秋
冬
五臓
肝
心
脾
肺
腎
五事
貌
視
思
言
聴
五常
仁
礼
信
義
智
五虫
鱗
羽
贏
毛
介
五味
酸
苦
甘
辛
鹹
五声
角
徴
宮
商
羽
ヒトの臓器の位置は、通常、心臓は左、肝臓は右、胃は左であるが、これは胎児の段階で決まる。
まれに臓器の位置が左右逆になる「内臓逆位」の人や、心臓が通常と左右逆の位置にある「右胸心」(dextrocardia)の人もいて、心奇形、多脾症候群、無脾症候群、横隔膜ヘルニアなどを伴う場合がある。
【参考】「内臓占い」:生け贄を解剖して内臓の様子や位置を見て運勢を占う。
「陰陽五行思想」(右の図表)では、内臓を五行に配当。
内臓の配列順が発想のもとか?
脳の左右両半球の機能の違い
左脳=ロゴス(論理)脳 右脳=パトス(感情)脳
左脳は右半身を、右脳は左半身を司る。「利き手」も脳で決まる。
ヒトの道具や言語の発展が、左脳を刺激し、右利きの比率が高まったという説。
「利き目」と「利き耳」
利き目:メガネを作るとき必ず検査する。
利き耳:利き耳が「左」の人は、判断力・記憶力・集中力が「右」の人よりやや劣る。
なぜなら、言語野は左脳にしかない。言語が左耳から入ると、まず右脳の聴覚野に入ってから左脳の言語野へゆくぶん、100分の1秒ほど遅れる。
【参考図書】講談社ブルーバックス『
右利き・左利きの科学
』
利き手
いわゆる右利きと左利き
スポーツでは左利きかが重宝される。
左手を「不浄の手」とする宗教や文化もある。
例:横綱・朝青龍の「左手手刀事件」で、内館牧子・横綱審議委員が批判。
さまざまな俗説「天才には左利きが多い」「左利きの人は早死にする」ほか
【参考サイト】http://www5a.biglobe.ne.jp/~outfocus/age%20list/age-list.htm
サルやチンパンジーでは、右利きの比率は50%=利き手はない。
200〜250万年前の原人類では、右利きは59% < 石器からの推定
5000年前までにはヒトの9割が右利きに < 洞窟絵画、土器、編み方から推定
左利きは男性に多い事実から、男性ホルモンが影響しているという説。
【参考サイト】 http://www2.athome.co.jp/academy/physics/phy02.html
〇左利きの有名人
[日本篇] 朝青龍(箸・塩まき・手刀が左)、荒俣宏(作家)、石原慎太郎(東京都知事・作家)、市川團十郎(十二代目)、伊藤芳朗(弁護士。箸が左)、上田正樹(ミュージシャン)、王貞治(左投左打、ペンは右)、織田裕二(CMの歯磨きも左、ペンは右)、小野田寛郎(ルバング島からの帰還)、桂ざこば(落語家)、桂米助(ヨネスケ。落語家・タレント)、旭道山(力士。料理=包丁などが左)、栗原小巻(女優。料理が左)、小池栄子(タレント)、小宮悦子(キャスター)、崔洋一(映画監督)、坂本龍一(ミュージシャン)、サンプラザ中野(ミュージシャン、爆風スランプ)、杉田かおる(女優)、瀬名秀明(作家。「パラサイト・イヴ」など)、滝本晃司(ミュージシャン、たま)、竹中直人(俳優)、伊達公子(プロテニス。ペンが左、ラケットは右)、筑紫哲也(キャスター)、東条英機(軍人)、羽賀研二(タレント)、はなわ(芸人。楽器は右、ペンは左)、引田天功(二代目、プリンセス天功。料理=包丁が左。両利き)、ふかわりょう(芸人。食事が左、ペンは右)、舞の海(力士)、松方弘樹(俳優)、松崎しげる(歌手。ギターは右利き用を左弾き)、松平定知(NHKアナウンサー)、森本レオ(俳優)、養老孟司(解剖学。元々左利きだったのに子供のころ矯正させられ、ペンや食事は右)・・・・・・等々。上記のほか、野球界では松井、イチローのように主力打者は概ね左打者で。
[外国篇] アレキサンダー大王、アンディ・フグ(K-1選手)、ウィリアム王子(父親のチャールズ皇太子も左利き)、オサマ・ビン・ラディン(イスラム教徒には珍しい)、キアヌ・リーブス、ジャンヌ・ダルク、ジュリア・ロバーツ、ジュリアス・シーザー、ジョージ・ブッシュ、チャーリー・チャップリン、トーマス・エジソン、トム・クルーズ、ビル・クリントン、ポール・サイモン(サイモン&ガーファンクル)、ポール・マッカートニー(ビートルズ)、マラドーナ、マリリン・モンロー、マルチナ・ナブラチロワ(テニス)、ミケランジェロ、モーガン・フリーマン(黒人俳優)、・ユリ・ゲラー(超能力者)、リンゴ・スター(ビートルズ)、レオナルド・ダビンチ(日記を左右逆の文字で書いた)、ロナルド・レーガン(俳優、大統領)・・・・・・等々。
【参考サイト】 http://homepage1.nifty.com/hidex/left/left1.html
http://www5a.biglobe.ne.jp/~outfocus/reft-right.htm
道具における左と右
日常生活道具で「左利きの人用」の道具の例:
はさみ・ラシャバサミ、扇子、トランプ、たまごレードル、うどんレードル、パンきり包丁、ピーラー、デジカメ・・・・・・
【参考サイト】http://www.geocities.co.jp/PowderRoom-Rose/7160/goods.html
楽器の左右非相称性
鍵盤楽器(ピアノ、オルガン、アコーディオン、ほか)
右手=高音部、左手=低音部 < 高音部のほうが指を細かく動かしやすいため
弦楽器(バイオリン、二胡、ギター、三味線、など)
(*弦を張る順番を逆にすれば、左右逆の手でも弾けるものが多い)
右手=弦を鳴らす 左手=弦を抑える < 右手のほうが力を入れやすいため
縦笛(リコーダー、尺八、ほか)
右手=低音部、左手=高音部 (*左右の手の入れ替えは容易)
横笛(フルート、龍笛、ほか)
右手=低音部、左手=高音部 < 吹き口から遠いほうが低音部になるため
構造上、左右のどちらの手でも使いやすさの差があまりない楽器
太鼓やカスタネットなど一部の打楽器、テルミンなど特殊な電子楽器、ほか
武器の左右非相称性
弓道・馬術では、左手は弓手(ゆんで)といい右手は馬手(めて)という。
弓を射る場合:左手で弓の本体を持ち、右手で弦を引く。
矢のつがえかたは、日本と西洋で左右逆。和弓では矢は弓本体の右側に、洋弓では矢は弓本体の左側に接するようにつがえる。
「流鏑馬(やぶさめ)」 馬の進行方向にむかって左手に的を置く。
弓は左半身方向への攻撃に有利。ただし弓の達人は、左右両射ができた。
剣道では左手は「矯正」。ただし、二刀流の宮本武蔵は左利きだった可能性も。
兵器の左右非相称性
銃 近代以降は歩兵の基幹兵器となる。
前装銃の点火装置は、銃身右後方側面につけた(マッチロック=火縄式、ホイール・ロック=歯輪式、スナップハンス=燧発式、フリントロック=火打ち石式、ほか)
ボルトアクション式=槓桿式軍用小銃は、は、槓桿を右手で握り遊底を動かして装弾する。
例:ドイツのモーゼルKar98K、日本の三八式歩兵銃、ほか。
ベルト給弾式の機関銃は、右側面から給弾。
戦車 火力・防御力の全周性が望ましいが、「左ハンドル」「右ハンドル」などの制約も。
全周旋回式砲塔をもつ最初の戦車はフランスの「ルノーFT17軽戦車」
小型の砲塔は、車体中心線から片側にオフセットして配置
イギリスの六トン戦車、ドイツのI号戦車、日本の九七式中戦車、ほか
砲塔に小口径砲しか搭載できなかったころは、大口径砲は車体前面の片側に装備
フランスとのルノーB1重戦車、アメリカのM3リー/グラント中戦車、ほか
戦闘機・爆撃機 3次元的戦闘を行うため、火力・運動力の全周性が必要。
レシプロ機の左右非相称要素 プロペラのカウンタートルク、など
ターボジェットエンジンのローターや、ターボプロップのプロペラなどの回転方向については、英国とロシアをのぞく国では(エンジン後方から見て)時計回りを採用。
古典的戦争における左と右
『旧約聖書』「士師記」第二十章十五節・十六節
「その時邑々(まちまち)より出(いで)たるベニヤミンの子孫(ひとびと)を数ふるに剣(つるぎ)をぬくところの人二萬六千あり
外(ほか)にまたギベアの居民(ひと)ありて之(これ)をかぞふるに精兵七百人ありき
この諸(すべて)の民の中(うち)に左手利(ひだりぎき)の精兵七百人あり
皆能(よ)く投石器(いしなげ)をもて石を投(なぐ)るに毫末(けすじ)もたがふことなし」
*左利きの兵隊の比率は約3パーセント < 700÷(26000+700)=0.0262・・・
『孫子』行軍篇第九
「平陸には易(い)に処(お)りて而(しか)して高きを右背(うはい)にし、死を前にして生を後(うしろ)にせよ」
「丘陵隄防(きゅうりょうていぼう)(=堤防)には必ず其(そ)の陽(みなみ)の処(お)りて而(しか)して之(これ)を右背(ゆうはい)にす」
*弓戦では敵を左側で迎え撃つほうが有利になる。
『老子』第三十一章
「君子(くんし)、居(お)れば則(すなわ)ち左を貴(たっと)ぶ。兵を用うれば則ち右を貴ぶ。兵は不祥(ふしょう)の器(うつわ)にして、君子の器に非(あら)ず」
『(正史)三国志』魏書六・董二袁劉伝第六
「卓、才武有りて、旅力(りょりょく)(=膂力)比するもの少し。双(ふたつ)ながら両鞬(りょうけん)を帯び、左右に馳射(ちしゃ)す」(董卓(とうたく)は武芸の才能があり、腕力もずばぬけていた。二つの弓袋(ゆぶくろ)を体の左右に身につけ、疾駆する馬上から矢を左右どちらにも射ることができた)
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