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中国の四大美女

最新の公開 2010-12-25
[ はじめに] [ 西施] [ 王昭君]  [ 貂蝉] [ 楊貴妃] [ まとめ]
氏名王朝年代出生地組み合わせ相手印象最期作品
西施春秋前5世紀浙江省沈魚呉王夫差(・范蠡)傾国不明(殺害、逐電)荘子、呉越春秋
王昭君前漢前1世紀湖北省落雁元帝婦徳再婚→自殺漢宮秋(雑劇)
貂蝉後漢2世紀末(架空の人物)閉月呂布・董卓傾国不明(斬殺)三国演義
楊貴妃8世紀四川省羞花玄宗皇帝妖艶縊死長恨歌
虞美人秦末前3世紀末江蘇省?(次点→貂蝉)覇王項羽唱和不明(自決)史記
卓文君前漢前2世紀四川省(次点→王昭君)司馬相如文才平穏史記、白頭吟

中国古典の四人の美女──西施(せいし)、王昭君(おうしょうくん)、貂蝉(ちょうせん)、楊貴妃(ようきひ)──にまつわる故事成語や漢詩漢文を選読する。その美貌ゆえに運命に翻弄された彼女たちは、本当に薄幸の美女だったのか。美女伝説の虚と実を探る。漢語には、女性の美貌を言う「沈魚落雁、閉月羞花」という成語がある。「ひそみにならう」の故事で有名な西施の美貌に見とれて、川の魚も泳ぐのを忘れて水底に沈んだ。北の異民族の国に嫁がされた王昭君が琵琶をかなでると、空を飛ぶ雁も感動のあまり地上に落ちてきた。三国志演義の貂蝉が月を拝むと、月は彼女の可憐さに圧倒されて雲に隠れた。唐の玄宗皇帝に寵愛された楊貴妃が花園を散歩すると、花たちは彼女のあでやかさに遠く及ばぬことを恥じ、みな花びらを閉じた。日本語の「花も恥じらう乙女」という言い方もこれが語源である。

【西施】
荘子:顰に倣う(ひそみにならう)=西施捧心
李白:七言絶句「蘇台覧古」
舊苑荒臺楊柳新、旧苑の荒台 楊柳 新たなりキュウエンのコウダイ ヨウリュウあらたなり
菱歌C唱不勝春。菱歌清唱 春に勝へずリョウカセイショウ はるにたえず
只今惟有西江月、只だ今惟だ有り 西江の月ただいまただあり セイコウのつき
曾照呉王宮裏人。曾て照らす呉王宮裏の人かっててらす ゴオウキュウリのひと
蘇軾 七言絶句「飮湖上初晴後雨」
水光瀲灧晴方好、水光 瀲灧として晴れて方に好く、スイコウ レンエンとしてはれてまさによく
山色空濛雨亦奇。山色 空濛として雨も亦た奇なり。サンショク クウモウとして あめもまたキなり
欲把西湖比西子、西湖を把って西子と比せんと欲せば、セイコをもってセイシとヒせんとほっせば
淡粧濃抹總相宜。淡粧 濃抹 総て相ひ宜し。タンショウ ノウマツ すべてあいよろし
松尾芭蕉:奥の細道
象潟や雨に西施がねぶの花きさかたや あめにセイシが ねぶのはな
cf.豆腐西施、西施乳、西施舌、・・・
ミニリンク 
wikipedia「西施」   google画像「西施」   にかほ市観光案内(西施まつり)
【王昭君】
杜甫:七言律詩「詠懷古跡」其三
羣山萬壑赴荊門、群山万壑 荊門に赴く、グンザン バンガク ケイモンにおもむく
生長明妃尚有邨。明妃を生長し 尚ほ村有り。メイヒをセイチョウし なお むらあり
一去紫臺連朔漠、一たび紫台を去りて朔漠に連り、ひとたびシダイをさりてサクバクにつらなり
獨留青冢向黄昏。独り青冢を留めて黄昏に向かふ。ひとりセイチョウをとどめてコウコンにむかう
畫圖省識春風面、画図 省きて識す 春風の面、ガト はぶきてしるす シュンプウのおもて
環珮空歸月夜魂。環珮 空しく帰る月夜の魂。カンパイ むなしくかえる ゲツヤのたましい
千載琵琶作胡語、千載 琵琶 胡語を作し、センザイ ビワ コゴをなし
分明怨恨曲中論。分明に怨恨を曲中に論ず。ブンメイにエンコンをキョクチュウにロンず
cf.井上靖「明妃曲」
ミニリンク 
wikipedia「王昭君」  google画像「王昭君」  youtube「雅楽 王昭君」  動画「昭君怨」  YouTube「昆劇 王昭君」
【貂蝉】
正史『三国志』巻七・魏書・呂布伝
卓常使布守中閣。布與卓侍婢私通、恐事發覺,心不自安。 卓、常に布をして中閣を守らしむ。 布、卓の侍婢と私通し、事の発覚せんことを恐れ、 心、自ら安からず。
ミニリンク 
Googloe「貂蝉」   wikipedia「貂蝉」   貂蝉を集めてみた
【楊貴妃】
李白:七言絶句「清平調」三首→
「唐詩五七絶譜」清傅士然伝
雲想衣裳花想容。
春風拂檻露華濃。
若非群玉山頭見、
会向瑤台月下逢。
くもにはイショウをおもい、はなにはかたちをおもう。
シュンプウ、カンをはらってロカこまやかなり。
もしグンギョクサントウにみるにあらずんば、
かならずヨウダイゲッカにむかってあわん。
一枝濃艷露凝香。
雲雨巫山枉断腸。
借問漢宮誰得似?
可憐飛燕倚新粧!
イッシのノウエン、つゆ、かおりをこらす。
ウンウフザン、むなしくダンチョウ。
シャモンすカンキュウ、たれかにるをえたる?
カレンのヒエン、シンショウによる。
名花傾国両相歓。
常得君王帯笑看。
解釈春風無限恨、
沈香亭北倚闌干。
メイカ、ケイコク、ふたつながらあいよろこぶ。
つねにクンノウのわらいをおびてみるをえたり。
シュンプウムゲンのうらみをカイシャクして、
チンコウテイホク、ランカンによる。

白楽天:「長恨歌」全文120句より節録
漢皇重色思傾國,
御宇多年求不得。
楊家有女初長成,
養在深閨人未識。
天生麗質難自棄,
一朝選在君王側。
回眸一笑百媚生,
六宮粉黛無顏色。
春寒賜浴華C池,
温泉水滑洗凝脂。
侍兒扶起嬌無力,
始是新承恩澤時。
雲鬢花顏金歩搖,
芙蓉帳暖度春宵。
春宵苦短日高起,
從此君王不早朝。
承歡侍宴無閑暇,
春從春遊夜專夜。
後宮佳麗三千人,
三千寵愛在一身。
(中略)
漢皇 色を重んじて傾国を思ふ
御宇(ぎょ・う)多年求むれども得ず
楊家に女(むすめ)有り 初めて長成す
養はれて深閨(しんけい)に在り、人 未だ識らず
天生の麗質は自(おのづか)ら棄て難く
一朝 選ばれて君王の側(かたはら)に在り
眸(ひとみ)を回(めぐ)らして一笑すれば百媚生じ
六宮(りくきゅう)の粉黛(ふんたい)顏色無し
春寒うして浴を賜ふ 華清の池
温泉 水 滑らかに凝脂(ぎょうし)を洗ふ
侍児 扶け起こすに嬌として力無し
始めて是れ新たに恩沢を承くるの時
雲鬢(うんぴん)花顔(かがん)金歩搖(きんほよう)
芙蓉の帳(とばり)暖かにして春宵(しゅんしょう)を度る
春宵 短きを苦しみて日 高くして起く
此れ従り君王 早朝せず
歓を承け宴に侍して間暇無く
春は春遊に従ひ 夜は夜を専らにす。
後宮の佳麗 三千人
三千の寵愛一身に在り
(中略)
翠華搖搖行復止,
西出都門百餘里。
六軍不發無奈何,
宛轉蛾眉馬前死。
花鈿委地無人收,
翠翹金雀玉掻頭。
君王掩面救不得,
回看血涙相和流。
(中略)
翠華(すいか)搖搖(ようよう)として行きて復(ま)た止まる
西のかた都門を出づること百余里
六軍(りくぐん)発明せず 奈何(いかん)ともする無し
宛転(えんてん)たる蛾眉(がび)馬前に死す
花鈿(かでん)地に委(ゆだ)ねられ人の収むる無く
翠翹(すいぎょう)金雀(きんじゃく)玉掻頭(ぎょくそうととう)
君王 面を掩(おお)ひて救ひ得ず
回(かえ)り看(み)れば血涙(けつるい)相ひ和して流る
(中略)
七月七日長生殿、
夜半無人私語時。
在天願作比翼鳥,
在地願爲連理枝。
天長地久有時盡,
此恨綿綿無絶期。
七月七日 長生殿
夜半 人無く 私語の時
「天に在りては 願はくは比翼の鳥と作(な)り,
地に在りては 願はくは連理の枝と 爲(な)らん
天 長く地久しく時有りて尽きんも
此の恨みは綿綿として尽くる期(とき)無からん。
cf. ミニリンク  wikipedia「楊貴妃」  google「楊貴妃」  YouTube「玉三郎 楊貴妃」  YouTube「貴妃酔酒」
まとめ 四大美人の共通点:
独断的採点表
知性婦徳意志力技能
西施
王昭君★★★★★★★★★★ 琵琶
貂蝉★★★★★
楊貴妃★★★ 霓裳羽衣の曲
虞美人★★★★★★★★ 剣舞
卓文君★★★★★★★★★ 漢詩

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