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研究の目的
■社会的企業の社会的包摂機能強化のための、戦略的社会基盤整備の制度化をめぐる課題を、日英事例の比較によって明確にする
社会的企業(social enterprise)とは社会課題にビジネス手法で取り組む組織の総称であるが、特に社会的排除下にあるグループを対象とする雇用機会創出等の「社会的包摂」機能が期待されている。
日本における社会的企業の社会的包摂機能強化のために、官民協働を通じた戦略的社会基盤整備の制度化をめぐる課題について、英国の事例との比較を通じて明らかにし、単なる英国モデルの日本への適用ではなく、日本的文脈を踏まえた制度化に向けた提案を行うことを目的としている。
研究の概要
■官民協働による戦略的社会基盤整備の制度化に焦点を当て、社会的企業の社会包摂機能強化のための方策を提言する
これまで、社会的企業セクター台頭の社会経済的・政治的背景、社会課題解決におけるその社会的インパクトについて、日英比較という国際比較の方法で研究に取り組んできた。その結果、英国の社会的企業が失業や格差・貧困等、社会的排除が顕在化した地域社会において、一定の社会的包摂機能を果たしていること、そうした機能発揮において政府・中間支援組織・教育研究機関・企業等、官民の多様な主体の協働を通じた包括的・戦略的な社会基盤整備の制度化が極めて重要であるということが明らかになった。
本研究では、社会的企業の活動基盤でもあり市場でもある「地域社会」に焦点を当て、組織間関係や支援環境の分析も含め、ミクロ・マクロ両面からアプローチする。また、その支援組織・政策の効果や限界を、組織論でいう「組織フィールド」の視点から実証的に明らかにしていく。さらに、社会基盤整備の役割を、政府をはじめとする多様な官民主体の協働それ自体が担うものととらえる視点を提起していく。
■研究の基本的枠組み
研究方法としては国際比較の方法をとるが、多様な主体による具体的な連携を通じた社会基盤整備の制度化の実態を分析するため、地域に焦点を当てた定性的なヒアリング調査の方法を用いる。
- 対象地域の設定:選定にあたっては、その地域において社会的包摂分野の社会的企業の一定の集積がみられること。(日本では横浜、神戸、浜松などの政令指定都市を予定)
- 対象地域内の社会的企業の社会的包摂機能の実態
- 対象地域で活動する政府機関による社会的包摂や社会的企業に関する支援施策
- 対象地域内において社会的包摂分野で活動する社会的企業の事業者間連携や他セクターとの協働の実態
- 社会的企業の社会的包摂機能を強化するための全国・広域レベルでの政府・中間支援組織・教育研究機関等による施策と地域の社会的企業へのその波及効果
- 1~5を踏まえた戦略的社会基盤整備の制度化のための提案